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「観光不毛の地」愛知県の観光振興策について
『バンカーの目のつけどころ 気のつけどころ』第128回

9月 28日 2018年 経済

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小澤 仁(おざわ・ひとし)

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バンコック銀行執行副頭取。1977年東海銀行入行。2003年より現職。米国在住10年。バンコク在住20年。趣味:クラシック歌唱、サックス・フルート演奏。

みそカツやみそ煮込みうどんに代表される味の濃い料理、名古屋弁の独特な言い回しとイントネーション。名古屋はその昔からタモリをはじめとして、他の地方の人たちからたびたび揶揄(やゆ)されてきた。しかし前の職場が名古屋に本店を置く東海銀行(現三菱UFJ銀行)であった私にとって、名古屋は出生地である東京に次ぐ「第2の故郷」である。国際関連の仕事が長かったため名古屋勤務の経験はそれほど長くはないが、それでも多くのお客様にかわいがっていただいたため、名古屋人の人情に深く触れてきた。学生時代の友人からは「お前の日本語にはなまりがある」などといわれるほど、名古屋文化に慣れ親しんだ。

トヨタ自動車などの自動車産業に牽引(けんいん)され、名古屋駅周辺はいまや東京をもしのぐほどの活況を呈している。しかし、こと観光となると全く力が入っていない。内向的とされる名古屋人気質によるところもあるかもしれない。残念ながら観光後進県である。名古屋には東京における「はとバス」のような観光バスすらない。また、私の回りのタイ人に聞いても、観光で名古屋に行ったことがある人はほとんどいない。今回はこんな「観光不毛の地」である名古屋ならびに愛知県の観光振興策について考えてみたい(注:本文中のグラフ・図版は、その該当するところを一度クリックすると「image」画面が出ますので、さらにそれをもう一度クリックすると、大きく鮮明なものをみることができます)。

1.愛知県の特徴と観光振興の必要性

愛知県は、日本の中心部に位置し、古くから交通の要衝として栄え、豊かな自然にも恵まれている。人口は全国第4位となる748万4千人(平成27年国勢調査)を有し、消費活動の一つの目安となる商業年間商品販売額は東京都、大阪府に次いで全国第3位の規模を誇る。

平成26年工業統計調査(確報)によると、製造品出荷額等は43兆8313億円(従業員4人以上の事業所)と全国の約14.4%を占めており、第2位の神奈川県(17兆7211億円)を大きく引き離し、38年連続日本一の「ものづくり県」となっている。愛知県は、日本の製造業を牽引する非常に重要な役割を担っているといえる。
一方、愛知県は、中部国際空港や名古屋港、東海道新幹線、更には発達した高速道路網など観光客を誘致する際に必要条件となるインフラ整備は整っていながら、観光については大きく出遅れている。

愛知県の外国人観光客の訪問状況(図1)を確認すると、訪問率全国第7位、延べ宿泊者数全国第8位と比較的上位に位置する。一方で、旅行消費単価は全国第13位であり、訪問率、延べ宿泊者数と比べ低位な状況である。ここから考察できるのは、ドラゴンルート、ゴールデンルートの中にあり外国人観光客は訪問しているものの、愛知県は滞在場所ではなく、「素通り県」に甘んじているということである。外国人観光客に愛知県に滞在(宿泊)してもらう仕組みをつくり出すことが、観光振興を図る上で必要である。

2. タイ人観光客の特徴

2013年7月のビザ免除措置開始により、近年訪日客数増加が著しいタイ人。2012年に26万人であった訪日客数は2017年には4倍弱となる99万人を記録。また、タイ人は国(地域)別の訪日客数が中国、韓国、台湾、香港、米国に次いで6番目で、外国人観光客を取り込むうえで非常に重要な顧客である。今回はタイ人観光客を例にとり、愛知県の観光振興を考えてみたい。

<観光庁調査から見るタイ人観光客の主な特徴4つ>

「観る(体験)」、「食べる」、「買う」の3要素を重要視

今回日本でしたこと(目的)の上位に「日本食を食べること」(選択回答率97.8%)、「ショッピング」(選択回答率86.7%)、「自然・景勝地観光」(選択回答率73.7%)、「繁華街の街歩き」(選択回答率72.8%)が入る。上記4項目のみ、観光目的の過半数を占めている。この特徴は、タイ人観光客を誘致する際に最も重要なポイントである。

▽リピーターが6割以上

初めて訪日した割合が全体の35.8%を占める一方、来訪回数が2回目以上と答えた人の割合は64.2%に上る。リピーターは、有名観光地以外の観光地に目を向けていると考えられる。

▽旅行日程は5泊6日

平均宿泊数は6.0日。滞在日数は52.6%が4~6日と回答しており、1回での旅行日程は平均5泊6日と考えられる。

▽個人旅行が6割以上

旅行手配方法は、個別での申し込みが64.6%を占めている。団体ツアーに参加は24.8%である。自由度が高く、自分で調べた観光地を巡りたい意向が強いと考えられる。

3.愛知県滞在型の観光プランの提言

愛知県の観光振興を図る施策として、愛知県に滞在(宿泊)することに特化した観光プランが必要である。愛知県滞在型の観光が盛んになれば、宿泊から大きな収入が見込まれ、外国人旅行消費単価上昇に寄与する考えられる。

愛知県にはタイ人が好みそうな魅力ある観光資源は数多くある。観光客の多くは、一つの観光地に長くとどまらずに可能な限り多くの観光地を巡りたいと考える。そこで、愛知県に滞在(宿泊)しながら、旅行者の好みに応じて観光地を選択し得る、日帰り観光が可能なプランを作成してみた。

▽名古屋市内観光(愛知県)

①観る・体験-観光スポット

・名古屋城……徳川家康が天下統一の最後の布石として築いた城。天守閣に輝く2体のシャチホコがシンボル。三大名城の一つ。

・熱田神宮……古来、伊勢の神宮に次ぐ尊いお宮として崇敬を集める由緒あるお宮。三種の神器の一つ、草薙剣(くさなぎのつるぎ)をまつる。緑豊かで四季を間近に感じられる憩いのスポット。

・徳川美術館……尾張徳川家の歴史に触れることができる。徳川家康の遺品を中心として大名道具を見ることができる。収蔵数は1万件以上にのぼる私立美術館。

②食べる-ご当地グルメ

・ひつまぶし……うなぎの蒲焼を細かく刻んでご飯の上に敷き詰めたもの。4等分し、1膳目はそのまま、2膳目は薬味を加えて、3膳目はだしを注いでいただく。3通りの味わいが可能。

・手羽先……香辛料が効いたスパイシーなタイプと、タレで味付けた甘辛なタイプあり。

・みそ煮込みうどん……豆みそ仕立てのみそ煮込みうどん。独特の麺のコシを楽しめ、みそとかつおベースの和風だしから作るスープは絶品。

・みそかつ……天然の豆みそのうま味が特徴。濃厚なうまみとみその香ばしさが魅力。

・モーニング……ドリンク(コーヒー)を1杯を注文すると、トーストやゆで卵がついてくる。

③買う-土産品

・ブランド品……タイ人観光客の観光ルートには欠かせない。

・ゆかり名古屋黄金缶……1枚に約7匹のえびを使うせんべい。えびの風味たっぷり。

・ういろう

▽ラグーナテンボス、三河地方周辺観光(愛知県)

所要時間(名古屋駅起点):トヨタ博物館まで45分程度。トヨタ自動車工場見学まで1時間程度。ラグーナテンボスまで55分程度。

①観る・体験-観光スポット

・トヨタ博物館……世界の車約140台を展示。自動車生誕から現代に至るまでの日米欧の自動車の進展や互いの関係を学べる。

・トヨタ自動車工場見学……トヨタ生産方式による高品質なクルマづくりを組立工場で見学。トヨタ会館と組み合わせての見学も可能。元町工場・堤工場・高岡工場の三つ。

・ラグーナテンボス……多彩なアトラクションや、夏季にはプールも楽しめるテーマパーク。フラワーラグーンには花の上を空中散歩、花畑を水面に映して観賞もできる。タラソテラピー体験も可能。タラソテラピーとは、海水や海藻など海の恵みを活用し、人間の自己治癒力を高める海洋療法。

②食べる-ご当地グルメ

・海鮮丼……その日に入った旬の鮮魚をいただく。刺身にしたり、焼いたりしても食べられる。

・西尾の抹茶……深い緑、上品な香り、おだやかなうまみとコクが特徴。西尾市の抹茶生産量は全国有数を誇る。

③買う-土産品

・抹茶フォンダンショコラ……西尾名物の抹茶とホワイトチョコレートを組み合わせた洋菓子。

・八丁みそカステラ……岡崎特産の八丁みその風味をカステラの中に取り入れた洋菓子。

▽知多半島観光(愛知県)

所要時間(名古屋駅起点):日間賀島まで1時間20分程度。南知多ビーチランドまで1時間程度。

①観る・体験-観光スポット

・日間賀島(ひまかじま)……外周5.5kmの離島。漁業体験、タコのつかみ取り(7~9月限定)が体験ができる。移動は河和港や師崎港より高速船を使用。師崎港では朝市も体験できる。

・南知多ビーチランド……海の生き物と触れ合える水族館と、おもちゃの遊園地が一つになったテーマパーク。イルカショーは大迫力。

②食べる-ご当地グルメ

・エビ、タコの踊り食い……日間賀島のタコは弾力があり、うまみが強いのが特徴。

・魚介BBQ……三河湾や伊勢湾から届くとれたての魚介を水平線を眺めながらバーベキューで堪能できる。

・ジャンボえびフライ

③買う-土産品

・えびせんいろいろ……エビ、イカ、タコをたっぷり使用したせんべい。えびせんべいの里では工場見学、せんべい作り体験もできる。

▽ナガシマリゾート観光(三重県)

所要時間(名古屋駅起点):ナガシマリゾートまで40分程度。

①観る・体験-観光スポット

・ナガシマスパーランド……絶叫マシンの数は19。大人から子供まで楽しめる遊園地。ギネスに世界最長と認められたアトラクション「STEEL DRAGON」を有する。

・なばなの里……園内に四季折々の花が咲き、美しく整えられた花畑やガーデンの風景が魅力。10月下旬~5月初旬はイルミネーションを開催

・湯あみの島……趣のある天然温泉。自然石と豊かな緑に彩られた広い庭園内に多彩な風呂が点在。

②食べる-ご当地グルメ

・ブラックカレー……三重県産・松阪牛を使用した真っ黒なルーのカレー。

③買う

・ブランド品……アウトレットモールにて。タイ人観光客の観光ルートには欠かせない。

三井アウトレットパークジャズドリーム長島では、グッチ、アルマーニ、ボッテガ・ヴェネタ、ブルガリ、コーチ、バリー、サルヴァトーレフェラガモ、ドルチェアンドガッバーナなどの高級ブランドが手に入る。

▽高山市街周辺観光(岐阜県)

所要時間(名古屋駅起点):高山市街まで2時間20分程度。白川郷まで2時間50分程度。

① 観る・体験-観光スポット

・高山市街……江戸時代の面影を残す古い町並みが魅力。市内には歴史的建造物が残るほか、伝統文化が息づいている。

・白川郷……世界遺産に登録されている「合掌造り集落」がある。独特の景観をなす集落が魅力的であり、家屋内の見学も可能。

②食べる-ご当地グルメ

・高山ラーメン

・朴葉みそ……自家製のみそにネギなどの薬味、椎茸などの山菜・茸をからめたものを朴の葉に載せて焼いて食べる。高山地方の郷土料理。

・飛騨牛……食べ方は、焼肉、しゃぶしゃぶ、すき焼きなど。

③買う

・栃の実せんべい……国内で採取された栃の実を生地に練り込んだ、少し固めのおせんべい。

・さるぼぼグッズ……飛騨高山など岐阜県飛騨地方で昔から作られている人形。お守り。

・飛騨牛とキクラゲのしぐれ……飛騨牛の豊かなうまみとキクラゲの食感が特徴。

▽伊勢神宮周辺観光(三重県)

所要時間(名古屋駅起点):伊勢神宮まで1時間20分程度。

①観る・体験-観光スポット

・伊勢神宮……日本屈指のパワースポット。「お伊勢さん」と親しみをもって呼ばれる。外宮、内宮と参拝できる。

・おかげ横丁……江戸時代の町並みを再現した趣ある雰囲気。食べ歩き、グルメや食料品、工芸品など様々なお店が並んでいる。

② 食べる-ご当地グルメ

・伊勢うどん……三重県伊勢市のご当地うどん。たまりじょうゆにかつお節やいりこ、昆布などのだしを加えた黒く濃厚なつゆ(タレ)を、軟らかく煮た極太の麺に絡めて食べる。

・赤福……和菓子商品。餅菓子であり、あんころ餅の一種。夏には「赤福氷」、冬には「ぜんざい」を楽しめる。

・てこね寿し……海の幸豊かな伊勢志摩地方の郷土料理。カツオやマグロなどの刺身をしょうゆなどで作ったタレに漬け込み、酢飯と合わせたおすし。

③ 買う-土産品

・おかげ犬……江戸時代、お伊勢参りに行けない人が犬にその思いを託したとされるもの。おかげ横丁では「おかげ犬」をモチーフにした置物、ストラップ、サブレなどが購入できる。

・さめのたれ……サメを塩干やみりん干しにした「さめのたれ」。伊勢神宮のお供えものに使用されるなど、伊勢地方では古くから親しまれている郷土食。

▽東三河、浜名湖周辺観光 (愛知県、静岡県)

所要時間(名古屋駅起点):豊川稲荷まで1時間10分程度。うなぎパイファクトリーまで1時間15分程度。浜名湖まで1時間30分程度。

① 観る・体験-観光スポット

・豊川稲荷……日本三大稲荷の一つ。商売繁盛の神。境内には稲荷神の使いであるキツネの像がいたるところにある。1千体以上のキツネの石像がある霊狐塚は圧巻。

・うなぎパイファクトリー……うなぎパイ製造工場の見学。カフェサロンも併設されている憩いの場。

・浜名湖周遊……ドライブ、レンタサイクルも可能。かんざんじロープウェーを使用し眼下に広がる浜名湖の景色を楽しめる。

② 食べる-ご当地グルメ

・豊川いなり寿司……キツネの好物である油揚げの中に飯を詰めてすしにしたもの。豊川市は、いなりずし発祥の地の一つ。

・浜松餃子……ゆでたモヤシがつけ合わせとして皿に(餃子の上の場合も)添えられているのが特徴。

・豊橋カレーうどん……丼の底の方にとろろご飯をよそい、その上からカレーうどんを盛り付け。福神漬け(薬味など)を使用し、味の変化を楽しむことができる。

③ 買う-土産品

・うなぎパイ……静岡県浜松市の銘菓(めいか)。うなぎエキスなどの調味料をブレンドしたお菓子。

・うずらプリン……うずらの卵で作ったプリン。

▽伊賀市周辺観光(三重県)

所要時間(名古屋駅起点):赤目四十八滝まで1時間45分程度。伊賀上野城・伊賀流忍者博物館まで1時間45分程度。

① 観る・体験-観光スポット

・赤目四十八滝……日本の滝100選。森林浴の森100選。滝をつなぐ約4kmの回遊路で大自然を満喫。マイナスイオンにて心を癒やす。

・伊賀上野城……藤堂高虎により築城。現在は内堀と石垣、天守閣が残る。

・伊賀流忍者博物館……忍者体験は手裏剣打ち、また忍者ショーを観賞できる。

②食べる-ご当地グルメ

・伊賀牛……三重県特産の和牛。忍者も食べていたという言い伝えあり。黒毛和種であることと、雌の未経産牛であることが条件。

・滝見弁当……地元伊賀米の山菜ちらしずし。

③買う-土産品

・伊賀くみひも……伝統工芸品のくみひも。美しく染められた絹糸が織りなす風合が魅力。

・忍者グッズ……玩具、忍具、忍者衣装と、珍しいもを豊富に取りそろえる。

図2:観光地域マップ

4.愛知県滞在型観光促進のための課題と対策

本章では、前章で取り上げた愛知県滞在型観光プランをタイ人観光客に促進するにあたって、現状における課題と対策を考察していきたい。

(1)滞在場所の分散化を図る

愛知県内で観光拠点の筆頭候補とされる名古屋市はホテル・旅館の不足が顕著といえる。名古屋市内ホテル・旅館の2015年、年間定員稼働率は72.9%であり全国平均39.7%を大幅に上回っている。今後も、リニア中央新幹線(東京-名古屋間、2027年)の開業を控え、人の移動、交流が活発になることが予想されるため、更に不足すると考えられる。外国から観光客を受け入れるためにも、名古屋市内に更に多くのホテル・旅館を建設する事が急務である。また、名古屋市内にホテル・旅館を増設する一方で、名古屋市以外の宿泊地を充実させる事が必要である。候補としては、名古屋駅まで公共交通機関を利用して約30分圏内の桑名市や四日市市などである。また、温泉街を有する蒲郡市も候補に挙がる。これらの地区は、観光客を受け入れる要素が整っている。名古屋市に偏っている現状を打破するため、他の宿泊場所の分散化を図り、観光客を取り込みたい。

(2)商業施設の営業時間の延長を促す

タイ人観光客の観光する目的に欠かせないのが、「ショッピング」である。日中は、各観光地を巡り、宿泊施設に戻ってきてから買い物に出かけることができれば、タイ人観光客を誘致する上で、優位性を持てるといえる。調査したところ、名古屋市内(名古屋駅地区、栄地区)商業施設の営業時間は午後8時に閉店するところが多い状況である。愛知県のその他の地域では、更に閉店時間は早くなる。これでは、観光後のショッピングを楽しむことができない。そのため、商業施設の営業時間の延長を積極的に促したい。既存施設が営業時間を延長し、外国人観光客により売り上げが伸びれば、双方にとってメリットが高いといえる。
また、タイ人観光客を取り囲む上で重要な三要素のうちの一つ、「食べる」に特化できると考える。愛知県は、手羽先、みそカツ、みそ煮込みうどんなどを代表とする「なごやめし」が既に存在する。既存の食文化を生かし、情報発信を強化することにより、「食のまち愛知県」というブランドを構築することが必要である。商業施設の営業時間の延長を促し、観光客を呼び込む。その場で、実際になごやめしを食してもらい、SNS上で情報発信をしてもらう。タイ人にとって、SNSの情報は非常に重要である。商業施設の営業時間の延長を促すことで、「食のまち愛知県」の確立にもつながる。

(3)観光アプリの導入

タイ人観光客は、各観光地を巡る中で、情報収集についてはインターネット利用を主としている。観光客取り込みには情報発信が不可欠である。ここで提案したいのは、愛知県滞在型観光に特化した情報を発信する観光アプリの導入である。言語は、タイ語、英語、中国語、韓国語などを含めた多言語対応のものが必要である。観光の好みや、食べたいものを入力すると、その日1日の観光モデルコースを表示するといった機能があると外国人観光客にとって便利である。外国人向け観光アプリでは、昭文社が提供する「Dig JAPAN」や、タイ人向け北海道観光情報に特化した「Trippino HOKKAIDO」などがある。アプリ開発には地域金融機関も協力できる。地域金融機関は、地域に根ざした取引先に関する多くの情報を有している。観光に携わっている企業の情報、アプリ開発を行う企業の情報も当然に把握している。銀行の持っている顧客ネットワークを生かし、情報提供を行いながらアプリ開発を行える。開発にかかる費用面の支援についても地域金融機関として取り組むことができる。

5.おわりに

今回のモデルプランは、愛知県の地方創生を考えた上で、今までの素通り県から脱却し、愛知県に滞在してもらうことに焦点を当てた一案である。重要なのは、「観る(体験)」、「食べる」、「買う」の3要素を踏まえたプランを提案し、愛知県に滞在して各観光地を巡るという外国人観光客の囲い込みを促すことである。そのためには地域全体で協力して、いくつものプラン作成をすることが必要である。このレポートが、愛知県における地方創生の一助につながれば幸いである。

※『バンカーの目のつけどころ 気のつけどころ』過去の関連記事は以下の通り
第123回 神奈川県の地方創生を考える (2018年7月13日)
https://www.newsyataimura.com/?p=7523#more-7523

第122回 スマート農業を通じた北海道の地方創生(2018年6月29日)
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第117回東京近郊県の周遊型観光コースを提言(2018年4月20日)
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第116回東北地方の外国人向け観光について考える(2018年4月6日)
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第109回「観光立国―日本」は貧しさの証明?(2017年12月15日)
https://www.newsyataimura.com/?p=7089#more-7089

第106回四国地方の観光プランを作ってみた!(2017年11月2日)
https://www.newsyataimura.com/?p=6961#more-6961

第105回 大都市・大阪の地方創生(2017年10月20日)
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第100回 宮城県の地方創生と地域金融機関に期待されること(2017年8月10日)
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第94回 抜本的な産業育成の必要性―埼玉県の地方創生(2017年5月19日)
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第93回 北陸地方の観光振興策を考える(2017年5月2日)
https://www.newsyataimura.com/?p=6571#more-6571

第87回 奈良県の地方創生について―小澤塾塾生の提言(その6)(2017年2月10日)
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第84回 「賢者」に学ぶ日本の観光(2016年12月16日)
https://www.newsyataimura.com/?p=6203#more-6203

第75回 産学連携による広島県の地方創生(2016年8月16日)
https://www.newsyataimura.com/?p=5758#more-5758

第69回 北海道の地方創生を考える
https://www.newsyataimura.com/?p=5492#more-5492

第67回 神奈川の産業集積と地方創生(2016年4月15日)
https://www.newsyataimura.com/?p=5364

第65回 大分県の地域再生―「小澤塾」塾生の提言(その3)(2016年3月18日)
https://www.newsyataimura.com/?p=5244

第61回 山形の地域創生―「小澤塾」塾生の提言(その2)〈2016年1月22日〉
https://www.newsyataimura.com/?p=5077

第58回 愛知県の産業構造と地方創生(2015年11月27日)
https://www.newsyataimura.com/?p=4921

第56回 成田国際空港の貨物空港化への提言(2015年10月30日)
https://www.newsyataimura.com/?p=4807

第54回 タイ人観光客を山梨県に誘致しよう―「小澤塾」塾生の提言(2015年9月11日)
https://www.newsyataimura.com/?p=4706

第47回 地方創生のキーパーソンは誰か?(2015年6月5日)
https://www.newsyataimura.com/?p=4457

第44回 おいしい日本食をタイ全土に広めたい(2015年4月24日)
https://www.newsyataimura.com/?p=4340

第28回 老人よ!大志をいだけ―地域再生への提言(その2)(2014年9月5日)
https://www.newsyataimura.com/?p=2994

第27回 一つの道をひたすら突き進む―地域再生への提言(その1)(2014年8月22日)
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