やっぱり都知事選でも「語れない」、障がい者政策
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第84回

7月 22日 2016年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

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 コミュニケーション基礎研究会代表。就労移行支援事業所シャロームネットワーク統括。ケアメディア推進プロジェクト代表。毎日新聞記者、ドイツ留学後、共同通信社記者、外信部、ソウル特派員など。退社後、経営コンサルタント、外務省の公益法人理事兼事務局長など。東日本大震災直後から「小さな避難所と集落をまわるボランティア」を展開。

◆失望はしないが

東京都知事選の投開票日が7月31日に迫る中で、各候補者の口から、またそれぞれの情報発信から伝わってこない問題がある。それが障がい者政策である。今回の候補者はほとんどが障がい者問題の専門家ではないのだから、障がい者政策を期待していたわけではない。そもそも、候補者は現状が分かっていないはずで、現状が分かっていないことは候補者の問題ではなく、社会の問題である。

だから失望もないのだが、これを繰り返して、自治体が対策をとらないままでいるのではよくないとも思う。待機児童の問題は、保育園に落ちた子どもの関係者が「日本死ね」とブログに記し、ソーシャルメディアで拡散し、国会で取り上げられ、メディアも報道したことで、待機児童問題は当事者の問題から、広く世間が共有するべき問題となった。

しかし障がい者問題は「メジャー」にならない。障がい者が社会を生きるのは、それ自体が壮絶な戦いであり、顕在化した問題なのに、である。それをいいことに、選挙でも対策を掲げることをしない、という悲しい循環が繰り返されている。

◆理由付けが必要な社会

その要因は複層的ではあるが、単純に言えば、待機児童など「子ども」の問題は、子どもが「未来の社会資本」という考え方に転換できるし、子育て世代はネットワーク化しやすい。「子育てママ」という枠組みで、地域の中で相互依存型のコミュニティーを形成するので、その思いや声が大きくなりやすい。

また高齢者問題は、介護保険制度導入により国策として、高齢者福祉は重点項目である上、高齢者介護関連のビジネスの面でも産業として巨大化しており、経済政策もリンクし、予算の優先順位が高くなる。

この二つに比べ、障がい者福祉はどうだろう。精神、知的、身体それぞれの障がいに違いにあるにせよ、それを「社会資本」と呼べるか、それを「産業化」できているか。この問いの設定自体に問題があるにせよ、今政策が求めているこの問いには、答えはどちらも否であろう。

つまり、何らかの理由付けで、それぞれの領域が社会の居場所を確保し、政策立案と予算化が実行される構造である。ノーマライゼーションという言葉でさえ、理由付けが必要なのかもしれない。

◆3候補の福祉策

都知事選の候補者すべての主張を紹介できないことをお詫びしつつ、大きな組織やネットワークを持つ小池百合子、増田寛也、鳥越俊太郎の各候補のホームページで政策を確認したところ、やはりまともに障がい者政策を訴える文言はなかった。

増田候補は「『子育て』や『介護福祉』の充実に率先して取り組み、都民が、あたたかさにあふれ、不安がなく、安心して生活できる環境・社会の実現を目指します」とし、あたかも福祉の中に障がい者がいないかの視点で、都議会自民党がバックアップする与党候補としては寂しい。

小池候補は「女性も、男性も、子どもも、シニアも、障がい者もいきいき生活できる、活躍できる都市・東京」との見出しで、障がい者を前に出してはいるが、具体的には「高齢者・障がい者の働く場所を創出。ソーシャルファームの推進」とあり、これでは産業政策の枠組みで語る旧知の話である。ただ「ソーシャルファーム」とは何だろう。気になる。

鳥越候補は、増田候補と同様、「子育て・介護に優先的に予算を配分します」として、福祉から障がい者を除外した印象があるが、こちらは社会の多様化を目指す、との謳(うた)い文句の具体策として「男女平等、DV対策、LGBT施策、障害者差別禁止などの人権施策を推進します」と示しカバーしている。しかし、これは自治体が目指すガイドラインであり、政策ではないだろう。

◆ふさわしい「顔」

障がい者に関する政策は、具体的な政策提言も必要だが、社会において、私たちがどのように共生社会をつくっていくか、その基本的な議論をするのが優先である。そのために、現状をどう認識するかの知見や受け止め方、感受性が問われる。

「首都の顔」などというキャッチなコピーに惑わされずに、当事者の声に耳を傾けたり、一隅を照らすような眼差しを持ったりしている候補は、おのずと凛(りん)とした佇(たたず)まいがあり、それが「顔」としてふさわしい、と考えるだが、いかがだろうか。

※関連記事は以下です。
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