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アジア観の変化
『アジアの目線』第1回

12月 06日 2013年 経済

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池部 亮(いけべ・りょう)

福井県立大学地域経済研究所アジア部門准教授。1992年日本貿易振興機構(ジェトロ)入会。ハノイ、中国・広州などの駐在を経て2012年4月から現職。進出日系企業の動向や中国リスクなどに詳しい。近著に『東アジアの国際分業と「華越経済圏」』(新評論、2013年)。

福井に来て約1年半が経った。振り返れば「日本企業にとってのアジア観」に様々な変更が加わった1年半であった。例えば、民政移管したミャンマーへの関心が急速に高まり、連日の新聞紙面でミャンマーの文字を見ない日がないといった盛り上がりが今も続いている。

「これからだけどまだまだの国」と当たり前のことを確認するだけの日本企業の現地視察が相次いでいる。それでもバスに乗り遅れるなと前のめりのメディア論調を見ていると、1990年代中頃のベトナムブームを思い出す。

また、中国についてはリスク関連の報道が続いている。反日リスクは昨秋の大規模な反日デモによって日本人の間に「やっぱり中国は……」という確信を根付かせた。

報道によれば、その後も日本製品不買の風潮が続いている。しかし、日本製品不買は明らかに自動車に特化した話であろう。家の中で使う家電や化粧品、デジカメなどとは異なり、自動車は隠すことができないかさ張る日本ブランドだからである。

国内経済に目を向ければ、「アベノミクス」による円安が進行し、景気の浮揚が大企業中心にみられるようになった。国内に留まる中小企業においては「いよいよアジア進出しかない」という強迫観念がやや緩和された状況にある。具体的な計画があるわけではないけれど、まずは全体を知りたいのでアジアのことを教えてほしいという相談は最近少し減った気がする。

◆中国以外のセカンドベストはどこか?

さて、中国については「中国以外で」という前提の相談が増えた。国内市場の大きさや生産コスト、輸送費などの面でいまだ圧倒的な優位性をもつ中国を最初から除外した議論である。

つまり、セカンドベストはどこですか? ということなのだが、これがなかなか難しい。自動車関係の加工業であればタイやインドネシアという「決め打ち」だから、裏づけ資料集めの相談になる。自動車ではないとなると、カンボジア、ミャンマー、ベトナム、フィリピンを候補に挙げる企業が多い。

どの国にするにしても、短所に目をつむり、長所を過大評価して納得するしかない。皆、中国の短所については雄弁でも、セカンドベストの国々の短所については多くを知らないから寡黙である。これもまたリスクだろうと感じる瞬間である。

カンボジアの首都プノンペンの郊外にも開発の波が押し寄せ始めている=筆者写す

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