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サービスの向上
『アジアの目線』第2回

12月 27日 2013年 経済

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池部 亮(いけべ・りょう)

福井県立大学地域経済研究所アジア部門准教授。1992年日本貿易振興機構(ジェトロ)入会。ハノイ、中国・広州などの駐在を経て2012年4月から現職。進出日系企業の動向や中国リスクなどに詳しい。近著に『東アジアの国際分業と「華越経済圏」』(新評論、2013年)。

11月に中国・広東省とベトナム・ハノイを約8カ月ぶりに訪ねた。開発途上にあった以前の広州はほこりっぽさと槌音が常に生活を取り囲んでいたが、最近はすっかり落ち着きを取り戻したようだ。

都市住民は少しばかり成熟したようにさえ見え、地下鉄やオフィスビルのエレベーターなど、なんとなく整然とした都会人のたたずまいをみせていた。レストランの服務員も愛想が良くなったし、注文と配膳のスピードも上がった。サービス業の質が全体的に向上したように感じた。国内消費の不振が背景だろうか、完全な売り手市場だった状況が変わりつつあるのかもしれない。

広東省は中国のなかで比較すれば笑顔の多い地域である。意味なく笑うことが多くないこの国にあって、できなかったり、分からなかったりするときに思わず笑ってごまかす「アジア・スマイル」がみられる北限の都市でもある。そんな広州の一端を再認識して、ハノイへ飛んだ。

◆「売ってやる」から「買っていただく」に

ハノイでは市中のブティックホテルに投宿した。ベトナム人はよく笑う。それは中国との比較においてであるが、タクシーやホテル従業員、食堂の客や路上の天びん棒おばさんまで、話しかければみな意味なく笑顔になる。

私の身体も笑顔につられ弛緩(しかん)し、ゆるーい市民社会の空気が心身に浸潤していく。到着した夜、ホテルの部屋に入ってしばらくすると内線電話が鳴り、受話器を上げると若い女性の声がした。「あ、またか」といかがわしいマッサージの押し売りだろうと推察した。

しかし、相手は「私は受付のものです。あなたの部屋はアップグレードされています」と言う。一瞬意味が分からなかったが、「ありがとう。それだけ?」と聞くと「はい」と言って電話は切れた。

サービスという概念がほとんど理解されていなかった20年前のハノイ。飲食店やホテルではカネに直結しないサービスは皆無であった。もちろん、人懐っこさと外国人珍しさに過剰な「おもてなし」を受けることは多かったが、客商売のサービスというのとは異なる。

その後、ベトナムは競争原理が客への配慮を生み出し、「売ってやる」から「買っていただく」に変化してきた。チェックイン時に言い忘れたとはいえ、改めて電話で伝えてくるあたりがベトナム人らしい。子の成長を見守る親の心境でほくそ笑みながら床に就いた。

ハノイの路地裏は昔の雰囲気のままだ=筆者撮影

【近著紹介】(「ニュース屋台村」編集部)

池部亮さんの『東アジアの国際分業と「華越経済圏」』(新評論、2940円)が12月10日発売されました。「分業するアジア」の中で、いま最も注目すべき経済地域の構造を「華越経済圏」という新しい地域呼称を使って詳細に分析した初めての専門書。本書は、研究界・ビジネス界待望の1冊であり、著者の20年来に及ぶアジアでの経験の集大成でもあります。中国華南経済圏とベトナム(越南)間の生産ネットワークの深化により、これら地域が一体化した経済圏となることを展望し、東アジアで活躍する日本企業関係者の事業戦略立案の必携書です。

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