南スーダンでの「働き」を誰が伝えるのか
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第78回

5月 13日 2016年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

コミュニケーション基礎研究会代表。就労移行支援事業所シャローム所沢施設長。ケアメディア推進プロジェクト代表。毎日新聞記者、ドイツ留学後、共同通信社記者、外信部、ソウル特派員など。退社後、経営コンサルタント、外務省の公益法人理事兼事務局長など。東日本大震災直後から「小さな避難所と集落をまわるボランティア」を展開。

◆不安の中の希望

これで何度目の希望となるのだろうかと思いながら、アフリカ東部・南スーダンからの移行政権樹立のニュースを受け止めている。大統領派と副大統領派の争いから全面的な内戦状態の中、地元の日刊紙スーダン・タイムズや国連ニュースによると、南スーダンのキール大統領が4月末に政権側とされる大統領派と反政府勢力とされる副大統領派の双方が参加する移行政権の閣僚メンバーを任命した。各国の報道も、混迷を極める情勢から収束に向けた前進、と評価しているものの、建国以来、この私の個人的な期待は裏切られているだけに不安が先走ってしまう。

2011年7月に分離独立した南スーダンのベンジャミン情報相(現外相)に日本でお会いしたのが同年11月。民間ボランティアとしてスポーツ指導の支援を行うことを約束し12年3月に現地を訪れた後、南スーダンでは小さな内紛が起こり、この支援は中断し、内戦は拡大の一途をたどった。日本外務省も首都ジュバへの渡航自粛を求め、それ以外の地域への渡航は禁止している中だが、陸上自衛隊350人が国連平和維持活動(PKO)として参加し、インフラ整備要員として灼熱の中、作業を進めている。

◆少ない日本メディアの現地報道

不思議なのは、その危険な状況下での任務は日本のメディアではほとんど取り上げられないまま遂行されていること。いつ争いに巻き込まれてもおかしくない(実際には起きている)のに、検証や監視するメディアがいない状態である。もちろんメディアが自衛隊の広報機関になれ、という話ではない。世界情勢から「なぜ自衛隊が危険をおかしてそこにいるのか」の疑問に答えるための情報の提供が少ないのである。

だから私は現地からの外国の通信社電などに頼るしかない。内戦は昨年8月に和平協定が締結されたが、散発的な衝突は続いていた。現地の報道によると、反政府勢力トップのマシャール氏が4月26日にジュバに戻り、副大統領職に復帰したことが、今回の期待の根拠で、和平合意には権力の分配が明記され、マシャール派からも全閣僚の3分の1となる10人がメンバーとなったという。

この閣僚の任期は2年でその後は選挙が予定されているが、出身部族を背景にした争いは根が深い。私がジュバで滞在していた12年3月は、つかの間の平和な時期でコンテナハウスでしかないジュバ最高級のホテルで、新聞の売り子が運んできた地元紙シチズンの社説には、耳慣れない部族の名前を10以上列記した上で、今こそ和解と融合を、と呼びかけていた。

◆危険認識し議論せよ

アフリカの部族間の争いはわれわれの社会とは遠い現実で想像するのが難しい。しかしながら、その理解が難しい地域に、自衛隊がいる現実を考えてみたい。彼らは、13年12月からの累計で政府軍と反政府勢力との戦闘で数万人が死亡し、230万人以上が家を追われている地域にいるのである。

私のような民間ボランティアが行けない地域で彼らが働いていることは孤軍奮闘のような気がしてならない。ここでも「ケア」の視点で描きたい。PKOの意味合いも、自衛隊がそこで働いているという事実も、ケアの視点で検証し、それが受け手にとって、社会混乱への支援のあり方を考えるよい機会になるはずである。

万が一自衛隊員が争いに巻き込まれたら、誰がどのような検証ができるのだろうか。常日頃できないことは非常時にはできない。メディアは明らかに好機を逃している。

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