п»ї 善意が裏目に出た通関のトラブル『実録!トラブルシューティング』第18回 | ニュース屋台村

善意が裏目に出た通関のトラブル
『実録!トラブルシューティング』第18回

9月 11日 2015年 経済

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東洋ビジネスサービス

1977年よりタイを拠点として、日本の政府機関の後方支援に携わる。現在は民間企業への支援も展開、日本とタイの懸け橋として両国の発展に貢献することを使命としている。

今回は、弊社の顧客であるH社と税関当局とのトラブルについて紹介します。多国間をまたいだ取引から発生した税関での修正申告、罰金とその対応についてです。

実際の商品の動きである物流と、商流(商的流通)が異なっていたことがそもそものトラブルの始まりです。タイの顧客から商品を受注したH社はタイ以外のA国に発注し、商品は生産者のいるB国からタイへ直送されました。これに対して商流は、B国から日本を含め数か国を経由してA国からタイへという流れになっていました。

商品の輸入時点で税関での輸入に対する税金の申告は、複数ある請求書の中で、生産者のあるB国からのインボイス(送り状)に基づいて計算されました。こちらのインボイスは最終的に支払った金額と支払い先が異なるため、このインボイスを基に計算・申告した関税と付加価値税(VAT)は結果として過少申告となっています。

H社からのご相談は、既に支払い済みの関税とVATに対する修正申告の方法、発生する罰金の支払いについてでした。H社は修正申告に向けて通関業者とも協議をしながら、業者を通じて税関へ手続きの方法を問い合わせました。

ここで、事態は意外な展開を見せます。税関サイドから提示されたのはなんと以下の二つの選択肢だったそうです。

①関税とVATの差額と、その差額の3倍の罰金を支払う(領収書あり) 

②関税とVATの差額(領収書あり)と、①の30%(領収書なし)を担当官に支払う

本来自主申告をした場合は罰金が発生しないのですが、この時点で判明したことは、この提案の背景として、そもそもの輸入申告時の添付書類に取り返しのつかない不備があったようです。

実際の支払い金額と輸入申告時に添付したインボイスの金額が違っていることよりも、実際の商流とは違う原産地証明書を使用して特恵関税を利用した事実があったようです。この場合は自主申告をしても悪意があるとみなされ、3倍の罰金を課せられます。

税関としては、H社の商流では原産地証明書を使用できないことを認識しながらも、通関業者に無理やり特恵関税を適用した形で輸入できるように頼まれたため、すべての書類で整合性を取り、その場を収めたということでした。

通関業者としては輸入者であるH社にとってメリットがあるように気を利かせたつもりですが、これではコンプライアンス違反になります。通関業者と税関の誤算は、コンプライアンスを最優先するH社から自主申告して正しい関税とVATを支払いたいという問い合わせが来てしまったことです。

◆通関手続きには細心の注意を

タイ側関係者全員の善意がまったく裏目に出てしまい、このような事態となりました。税関側の提案はアンダーマネーの要求というよりは、関係者内で内々に収めたい気持ちの表れなのかもしれません。H社にとっては難しい選択です。

今回のようなケースはまれですが、一般的な税関トラブルの場合には、エージェントを介して関税の差額と罰金の合計額の20~30%程度の手数料を要求されるようです。

皆様には間違っても近寄ってほしくない世界がありますので、とにかくこのような事態になる前に、すべての申告は故意であろうがなかろうが、間違いのないように細心の注意が必要です。

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