п»ї 大阪からパキスタン・ビジネスミッションを派遣『浪速からの国際化』第5回 | ニュース屋台村

大阪からパキスタン・ビジネスミッションを派遣
『浪速からの国際化』第5回

12月 19日 2014年 経済

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北見 創(きたみ・そう)

ジェトロ大阪本部に勤務。関西企業の海外進出をサポートしている。横浜生まれで、ヘンな関西弁を得意とする。『アジア主要国のビジネス環境比較』『アジア新興国のビジネス環境比較』(ともにジェトロ)などに執筆。

ジェトロ大阪本部は11月22~27日、パキスタン・ビジネスミッションを派遣した。機械・工具関連企業、日用品・衛生用品メーカー、金融機関など8社から8人が参加した。今年6月にイスラム過激派の武装集団がカラチ空港近郊の空港治安部隊の訓練施設を襲撃して以降、日本におけるパキスタンのイメージは悪化していたが、今回はジェトロ・カラチ事務所が警察当局と連携した安全対策を十分に行い、無事に日程を終えた。ミッションでは日系企業の工場見学や現地企業との商談会を実施。商談会では、最も多い企業で25件の商談があり、日本企業の来訪という数少ない機会に、多くのパキスタン企業が駆けつけた。

◆日系メーカーは現調率向上に期待

今回のミッションではカラチとラホールの2都市を訪れ、同地で操業している日系企業6社の工場を見学した。パキスタンに進出している日系製造業は自動車関連が多い。同国の自動車市場においては日本ブランドが強く、年間販売台数約14万台のうち98%のシェアを占めている。さらに1000人あたりの自動車普及台数は12台と、ベトナム、インドと同水準で、これから伸びる市場だ。

今回のミッションでは、カラチとラホールの2都市を訪れ、同地で操業している日系企業6社の工場を見学した。パキスタンに進出している日系製造業は自動車関連が多い。同国の自動車市場においては日本ブランドが強く、年間販売台数約14万台のうち98%のシェアを占めている。さらに1000人あたりの自動車普及台数は12台と、ベトナム、インドと同水準で、これから伸びる市場だ。

パキスタンでの操業は大企業であっても困難が伴う。悪化する治安の問題、突然の輸入制度の転換によって販売が打撃を受けたり、理不尽な徴税を要求されたりするなどの政策面での問題や、電力不足を始めとするインフラの問題と、ハードルは山積みだ。半面、日系企業(62社)や外資系企業の進出がまだ限定的なことから競争相手が少なく、努力した分だけ結果のでる“先行者利益型”市場でもある。

自動車メーカー各社における現地調達率は40~50%程度となっている。セットメーカーの間では、自動車部品の輸入関税が高いため、少しでも現地調達率を高めたいというニーズがある。一方、同国における自動車販売台数はまだ少ないため、現地に生産工場を設けている日系の自動車部品サプライヤーは少ない。よって、日本企業が技術協力をしている現地サプライヤーから調達しているケースが多く、今後、日本の持つ高精度の技術が移転されることが期待されている。

ミッション団員の中には、自社製品がパキスタンの自動車メーカー工場、サプライヤー工場で使用されている企業もあり、今回のミッションを通じて現場を見ることができ、今後の販売戦略の参考になったようだ。

◆“やらまいか”精神でフロンティアへ

見学した工場の中で、団員が大きく関心を寄せたのが、静岡県浜松市の繊維メーカーA社の取り組みだ。

A社はホームテキスタイルを生産し、日本の大手小売に納入している。親会社の従業員数は約30人の中小企業だ。1990年代に中国に生産機能を移したが、リーマン・ショック以降、賃金上昇を避けるようにベトナムへと移転した。ベトナムでは2年間取り組んだが、部材調達が思うように出来ず撤退。すでにインド、バングラデシュでは競合が多いと判断し、カラチでの生産工場設立を決定した。

パキスタンで繊維製品を生産するメリットは、太番手の綿糸を調達できること、労賃の安いワーカーを安定的に雇用できることだ。世界第4位の綿花生産国であるパキスタンの特性を生かし、A社は初めて原糸から布への「織り」工程を始め、コストを低減している。

また、ジェトロが2013年10~11月に実施したアンケート調査によれば、カラチのワーカーの月額賃金の平均は154ドルと、青島(中国)の1/2の水準、ホーチミン(ベトナム)と同水準である。その結果、商品の原価は日本への着荷ベースで中国に比べて15%低減した。

A社の工場では日本語を話せる3人のパキスタン人幹部と、80人ほどの女性ワーカーが働いているが、離職率は低い。パキスタン企業の工場では賃金が毎月支払われないケースもあり、ワーカーからみれば賃金をきちんと支払ってくれ、安定的に働ける日本企業の工場勤務は魅力的だ。

A社のパキスタン法人の日本人社長は「今は大手小売が直接、中国で生産・調達をする時代であり、中小企業はもっと先に行く必要がある。浜松の“やらまいか”精神(注※)にのっとり、パキスタンという原石を磨いていきたい」と話す。

(注※)浜松市など静岡県西部の方言で、「やってみよう」「やろうじゃないか」という意味。進取の精神。

◆日本の機械、工具、化粧品に高い関心

ミッションの後半では、カラチとラホールの2カ所で商談会を実施した。商談会は共催者であるカラチ商工会議所(KCCI)、ラホール商工会議所(LCCI)内の会議室で行われた。日本側6社に対してカラチでは27件の商談が、ラホールでは45件の商談があった。

パキスタン企業は日本企業の製品・サービスに対して大いに関心を示し、日本企業に対してカタログ、価格の提供を積極的に求めた。特に日本の各種機械、工具、化粧品を買いたいという企業が多かった。一部の団員はミッション後に現地企業を訪問するなど、商談が進展する見込みだ。

パキスタン企業への輸出販売においては代金回収などのハードルがあるが、中小企業であっても決して取り組めない市場ではない。まずはジェトロなどが実施する安全性の高いミッションに参加し、買い手の感触を感じてみるのがいいだろう。

日本企業のプレゼンを熱心に聞くパキスタン企業幹部ら=ラホール市のラホール商工会議所

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