п»ї 法律や担当官で違う株主比率『実録!トラブルシューティング』第12回 | ニュース屋台村

法律や担当官で違う株主比率
『実録!トラブルシューティング』第12回

5月 29日 2015年 経済

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1977年よりタイを拠点として、日本の政府機関の後方支援に携わる。現在は民間企業への支援も展開、日本とタイの懸け橋として両国の発展に貢献することを使命としている。

今回は、土地購入にまつわるトラブルをご紹介します。タイでは「土地法」によって外国人の土地の所有が禁じられています。例外となるのは、工業団地で事業許可を受けた上での土地の購入、BOI(タイ投資委員会)から投資奨励を受けた場合となり、タイに進出する日本の企業にとって第一の関門となっています。

結果として、タイ資本での会社を設立しなければならない場合には、取引関係のあるタイ企業との合弁会社を設立するか、タイに投資目的の法人を持つ日系銀行の出資を受けるしか選択肢がないのが現状となっています。タイ側が過半数を持つ形での合弁の危険性については別の機会に改めてご紹介することとして、今回は日系銀行の投資のケースをご紹介します。

◆法律と担当官で定義まちまち

そもそも、タイの「外国人事業法」で定義する外国法人とは、外国籍の者または外国法人が資本株式の50%以上を保有する法人となっています。一方で、土地法上では、①外国人が49%超の資本株式を保有し、または、②外国人が株主の半数以上を占めているタイ現地法人は、外国人に含まれるとされています。

土地法での定義、外国人事業法での定義が違っていることに加えて、担当官による裁量により判断に違いがあるとなれば混乱は必至です。過半数とは50.01%からなのか、51%からなのか、これまでにも度々混乱がありました。

今回は桁違いのご相談です。土地の購入に際して、工業団地・土地局と調整を進めていたA社さんからの憤慨のメールには、なんと「タイ人の株主比率が60%でないと土地の購入は認められない」と土地局から指摘を受けた、と書かれていました。

「出資法人の株主構成をたどって株主リストをさかのぼっていった際に、日系の出資会社が何度も現れて循環してしまい、個人名までたどりつけない。これだけ法人名がつづいているので タイ株比率を増やして下さい」との指摘です。「そんなバカげた話はありえない。直接土地局と話して事の次第を確かめたい」という気持ちはわかります。もちろん弊社のタイ人スタッフと土地局の担当官とタイ語で直接話を聞きたいという気持ちもあります。

しかし、弊社のアドバイスは違います。相手はこれから工場を開設し、日々の業務を進めていくことになる工業団地を管轄する土地局です。ここで摩擦を起こして操業に支障をきたすようでは元も子もありません。幸いなことにA社さんには既存のタイ法人が株主となっています。タイ法人の増資をして出資比率を上げて土地局の指示通りにタイ人の株主比率を60%以上にすることで対応するようにアドバイスをしました。

◆進出予定地区の事前調査も不可欠

その他、土地局の担当官の裁量でお困りになった日系企業の事例として、「タイ側株主はタイ人個人でなくてはならない」「取締役にタイ人がいなければならない」「会社のサイン権者にタイ人が最低1名いなければならない」などがありますので、土地を購入される前の調査が大切です。

背景には、地区によって、外国企業を歓迎する土地局とそうでない土地局とがあるという話も聞いています。タイに進出する際には、進出を予定している地区の事情まで十分な下調べをお勧め致します。

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