п»ї コンビニ業界の動向から学ぶビジネスチャンス『経営コンサルタントの視点』第21回 | ニュース屋台村

コンビニ業界の動向から学ぶビジネスチャンス
『経営コンサルタントの視点』第21回

9月 16日 2016年 経済

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中野靖識(なかの・やすし)

株式会社船井総合研究所上席コンサルタント。メーカーから小売業まで幅広いコンサルティングフィールドを持つ。一般消費者向けの商材を扱う企業の現場レベルでの具体的な販売手法の提案を得意とする。

日本国内は精度の良いデータが数多く存在しますので、データを軸として外部環境変化を読み解いていくと、さまざまな仮説が生み出せます。

◆毎月成長を続けているコンビニ業界

平成28年7月の商業動態統計速報を見ると、商業販売額は36兆8300億円、前年同月比▲5.8%の減少で、卸売業は24兆8280億円、同▲8.2%の減少、小売業は12兆30億円、同▲0.2%の減少となりました。

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小売業販売額・前年同月比増減率の推移を見ると、緩やかなダウントレンドになっていますが、実はコンビニエンスストアは毎月成長を続けています。

6月度商業統計確報では、コンビニエンスストアの6月の商品販売額及びサービス売上高は、9436億円、前年同月比3.8%の増加になっていますが、時系列データとして提示されている「販売額・前年同月比増減率の推移」を見ると、ほぼ前年をクリアしつづけていることがわかります。

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◆加速するドミナントエリア争奪戦

コンビニエンスストア業界最新の話題は、業界第3位のファミリーマートと、第4位のサークルKサンクスを傘下に持つユニーグループ・ホールディングス(GHD)が、2016年9月1日に経営統合し、持ち株会社「ユニー・ファミリーマートホールディングス(HD)」が発足したことでしょう。

同社のコンビニエンスストアの店舗数は、単純合算で1万8123店となり、セブン‐イレブン・ジャパンに次ぐ第2位になったそうです。

これに伴い、ローソン・ポプラを含めた大手のドミナントエリア(小売業がチェーン展開をする場合に、集中して多店舗展開を行う対象となる地域)争奪戦がさらに加速していくものと思われます。

ドミナント(dominant)とは、「支配的な」「優勢な」「優位に立つ」という意味を持つ言葉で、地域を特定し、その特定地域内に集中した店舗展開を行うことで経営効率を高める一方で、地域内でのシェアを拡大し、他小売業の優位に立つことを狙う戦略をドミナント戦略と言います。

ドミナント戦略のメリットには以下のようなものがあげられます。

・店舗網が集中していることによるコスト効率(物流費、販促費等)メリット

・集中出店による認知度、知名度向上メリット

・エリア特性を読み取り、地元顧客の細かい要求に対する対応力向上メリット

・競合の出店意欲を減退させ、エリア支配力が高まるメリット

日本国内小売全体市場が低迷・縮小していく中、ある程度淘汰(とうた)が進んだ業界の上位者同士の戦いは、傘下にいる納品ベンダーのみならず設備事業者などの関連事業者までを巻き込んでさらに拡大していくことになります。

◆高齢化による商圏構造変化

全体に低調な小売業界の中で、数少ない成長業界であるコンビニエンスストアですら経営統合を進めていく背景には、高齢化による商圏構造変化の影響があると考えられます。

以下のグラフは「2016年版中小企業白書」に掲載されているものですが、65歳以上の高齢者比率が増加し、生産人口が減少していく流れが鮮明になっています。

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出所:中小企業庁 2016年版中小企業白書より

加えて、国民全体の高齢が進み、消費が成熟している現在、多くの商品が「どこで買っても同じ」という状況になりつつあります。

アマゾンを筆頭としたweb通販市場の拡大も、利用者が商品に対する一定の信頼性を持っている現在だからこそ、勢いがついていると言えるでしょう。

同じ物だから買い物をする人が自分自身にとってより利便性の高いルートで調達しようとすることに対応するものがオムニチャネル化といわれているものです。

当然、自宅からの距離は利便性に大きな影響を及ぼします。

高齢者が車の運転に不安を持つようになると、免許の返上などを通じて交通弱者になっていきます。そうなると、活動量も減少していきますので、移動距離が少なくなり、遠くの店舗にわざわざ出かけていくことが少なくなっていくでしょう。

移動距離縮小に伴い、足元800mが基本商圏のコンビニエンスストア、手元ですぐに購入できるweb通販が拡大していく可能性があります。

さらに行政機能、荷物の受け取りサービスなどの付加が、利便性を拡大していくことを考えると、コンビニエンスストアの役割が拡大していく可能性は大きいものと考えられます。

また、近くて便利に加えて、どの店舗ブランドを選ぶのかがポイントになりますので、各社が個性を主張するだけではなく、露出による認知をさらに獲得するためにエリアドミナント形成を急ぐのは当然のことでしょう。

優れた強者同士の戦いから学ぶことは非常に大きいものと思われます。

今後もコンビニエンスストア業界の動向には注目していきたいと思います。

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