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タイ語が読めない邦人社長のサインはどうする?
『実録!トラブルシューティング』第57回

8月 06日 2018年 経済

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東洋ビジネスサービス

1977年よりタイを拠点として、日本の政府機関の後方支援に携わる。現在は民間企業への支援も展開、日本とタイの懸け橋として両国の発展に貢献することを使命としている。

タイで仕事をしている日本人でも、タイ語でビジネスをするのは簡単ではありません。一般的にはサイン権を持つタイ現地法人の社長(MD)として駐在していても、タイ語を片言で話すことができるようになってもタイ文字までは読めない人が多いようです。そうなると、社内に通訳を雇うことでコミュニケーションを成立させるわけですが、議事録や公的書類、人事書類、経費関係書類などの重要書類へのサインは、限られた時間の中で自らの判断で行わなければならないことがあります。

◆確認せずにサインするとこうなる事例

一部の企業では、サイン権者が従業員にサインをせかされ、記載内容を十分に確認しないままサインをしてしまうことがあり、それを特に問題視していないことがあるようです。以下、いくつかの事例をご紹介します。

経費の横領

A社のサイン権者Bは、業務多忙の中、タイ人従業員Cから廃棄物処理費用の現金支払いにかかる伝票へのサインを直ちにするよう求められました。Bは、タイ語で記載された内容を十分に確認しないまま、架空の伝票とは知らずにサインをして支払いの指示をしました。別の従業員の指摘により、Cが架空伝票に基づいて支払われた現金を横領し、会社に損害を発生させていたことが判明しました。

就業規則

D社のサイン権者Eは、就業規則の策定にあたり、コンサルタント会社の指導の下、日本語版とタイ語版を作成しました。Eは、人事担当の従業員Fから、策定した就業規則へのサインを求められ、日本語版のみを確認し、日本語版・タイ語版両方にサインをしました。Fは、Eの承認を得ず、タイ語版の就業規則を従業員に有利なように修正した上で、Eのサインを求め、監督官庁に提出していたのです。

D社の従業員は、Fが勝手に修正した就業規則に基づき業務を行っていましたが、従業員と経営者の就業規則違反に関する認識相違でトラブルに発展しました。コンサルタント会社に改めて日本語版とタイ語版を確認させたところ、この事実が判明しました。

賃金

G社のサイン権者Hは、人事担当の従業員Iより、タイ語で記載された人事に関する資料にサインをするのを失念していたとして、改めてサインを求められ、内容を確認しないままサインをしました。資料には、すべてタイ語でIの昇格の旨と、タイ数字で昇格に伴う賃上げ額が記載されていました。Iは、長期にわたり不当な昇格に基づいて本来受け取るべき金額より多い給与を受け取っていました。経理担当の従業員Jが、給与支給時に、Iの給与支給額が自身の額より多く、昇給ペースが速いことに疑問を持ち、資料を確認したところ、この事実が判明しました。

◆サインはその都度確認してから行う

このように、思いもよらないトラブルが多くなっています。以下、対応策として気をつけるべき点をいくつかご紹介します。

タイ語では、金額もタイ文字で記載されているケースがあることから、アラビア数字のみならず、タイ語で記載された項目についても、十分に確認が必要です。議事録などその場でサインをしなければならないこともありますが、内容を理解せずにサインをしてしまうと、裁判に発展したり、会社に損害を与えたりする可能性があることから、信頼のおける通訳などにその都度確認してサインを行うことが必要です。

また、サインをする場合、通常と異なるフォーマットや見慣れない資料の場合には、より注意深く確認を行ってください。

一般的に、タイ文字の習得は難易度が高く、時間を要します。タイ語の資料(特に省庁への提出資料)の確認は、面倒ですが、信頼のおける通訳やコンサルタントに逐一確認することが重要です。

サイン権者は、タイでビジネスを行う上でタイ語は必須であり、サイン行為にはリスクが内包していることを認識し、「タイ語が分からない⇒読まない」ではなく「タイ語が分からない⇒分かるまで確認する」という基本動作を徹底する必要があります。

もしも、前述の例のようにタイ語版の就業規則などの内容確認など従業員とのトラブルが発生した場合には、お気軽に弊社までご相談ください。

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