п»ї 楽天の挑戦―無料ファッション通販誌創刊の意味『経営コンサルタントの視点』第16回 | ニュース屋台村

楽天の挑戦―無料ファッション通販誌創刊の意味
『経営コンサルタントの視点』第16回

4月 24日 2015年 経済

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中野靖識(なかの・やすし)

株式会社船井総合研究所上席コンサルタント。メーカーから小売業まで幅広いコンサルティングフィールドを持つ。一般消費者向けの商材を扱う企業の現場レベルでの具体的な販売手法の提案を得意とする。

日本国内の4月は様々な企業で新入社員の受け入れが始まるタイミングですが、3月決算が多いこともあって、法人としての新たな取り組みが発表される時期でもあります。

ご存知の方も多いと思いますが、4月13日付の楽天株式会社のプレスリリースに「楽天株式会社(東京都品川区、代表取締役会長兼社長:三木谷 浩史、以下「楽天」)と株式会社幻冬舎(東京都渋谷区、代表取締役社長:見城 徹、以下「幻冬舎」)は4月14日、幻冬舎発行の女性誌『GINGER』の監修や電子雑誌事業を展開する株式会社ブランジスタ(幅広いジャンルの電子雑誌を発行する電子雑誌出版のリーディングカンパニー)の制作協力のもと、スマートフォン(以下、スマホ)向けの無料ファッション誌(iPhone?、Android?で閲覧可能)『GINGER mirror(ジンジャーミラー)』を創刊します。」と掲載されていました。彼らは、「EC事業者と出版社が連携してオンライン雑誌を発行する、国内初の取り組み」と説明しています。

世界初のiPad向け有償電子新聞「ザ・デイリー」が2年足らずで廃刊になってしまったことは記憶に新しいですが、「ジンジャーミラー」が20代後半から30代の女性をターゲットとした無料ファッション通販誌と考えると、雑誌と言うよりは消費者に対して新しい調達手段を提案しているイメージが強いのではないでしょうか。

これは、2014年10月1日に老舗大手出版社のKADOKAWAとIT企業のドワンゴが経営統合を行い、新しくKADOKAWA・DWANGOが誕生した時に比べるとインパクトが小さい印象がありますが、大きな転換点になるものと思われます。

日本国内の電子書籍を除いた13年の出版販売額(出版科学研究所調べ)は、ピークだった1996年の2兆6563億円から1兆6823億円まで減少しており、いまだダウントレンドから脱出できていません。

雑誌、新聞といった印刷媒体情報全般がオンラインフィールド拡大の影響でその役割を奪われ、主要取り扱いチャネルであった書店までが厳しい状況に置かれているのを見ると、ITによって様々な業界の構造的変化速度を速めていることを実感します。

◆日本の流通ビジネス構造が新たな段階に入る可能性も

経済産業省が昨年8月に発表した「電子商取引に関する市場調査」によると、2013年の日本のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場の規模は前年比17.4%増の11兆1660億円とありましたが、仮にこのまま年成長率15%レベルで推移すると、18年には20兆円以上の巨大市場になる可能性があります。

業界としての構造改革が遅かったと言われる百貨店業界の13年の市場規模は6兆2171億円ですが、10年前の03年には8兆1117億円の市場規模を持っていたことを考えると、利用者である消費者にとって望ましい調達手段とはどのようなものかを考えていくことが勝ち残るためには必要なことのように思われます。

利用者である顧客は「いつでもどこでも発注でき、自分にとって最も都合のよい受け取り場所、方法で入手できる」ことを望んでいると考え、それにどのように適合していくことができるかが将来の最適を作り上げて行くものと思われます。

今回の楽天の挑戦が、日本国内のオムニチャネル(実際に存在する店舗での商品販売と、インターネット上のバーチャル店舗での販売を連携させた、新しい購買スタイル)を加速させる起爆剤になり、日本国内の流通ビジネス構造が新たなフェーズに入る可能性が高まっています。

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