中間層を狙う「ローソン108」
『トラーリのいまどきタイランド』第4回

1月 24日 2014年 文化

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トラーリ

寅年、北海道生まれ。1998年よりタイ在住。音楽やライブエンターテインメント事業にたずさわる。

バンコク都内にある「ローソン108」の大型店舗に先週、初めて足を踏み入れた。高架鉄道BTSのチットロム駅に直結するマーキュリーヴィレ1階に昨年9月にオープンした店舗だ。

ローソン108は、日本のローソンが「タイの消費材王」と称されるサハグループと提携し、昨年3月末にタイに出店を果たした。初めの3店舗はサハグループが運営する小型店舗「108」をリニューアルオープンし、その後、半月に1店舗のペースでバンコク都内のオフィルビルなどに出店、現在バンコク都内で28店舗に至っている。

タイでは既に、セブンイレブンやファミリーマートなどのコンビニエンスストアが全土に展開しており、その店舗数は1万店を超えている。競合の多いコンビニ市場に後発で参入したローソン108は、トップシェアを奪うには道のりが険しいことを承知の上で、日本を意識した品揃えやサービスを武器に差別化を図る戦略で追い上げてきた。その差別化とは具体的にどのようなものであろうか。

◆日本を意識した多彩な演出

ローソン108の店舗に入ると、女性店員から「いらっしゃいませ、サワディーカ」という声がかかる。日本料理店の多いバンコクにいる自分にとって、このあいさつは決して新鮮とは言えないが、日本を意識した演出である=写真①

ローソン108店舗=1月18日、いずれも筆者撮影

小ぎれいに陳列された商品棚を眺めていて、初めに驚いたのはスイーツの品揃えである。抹茶のロールケーキ、生チョコレート、どらやき、大福、バナナロールなどは日本のローソンで販売されるお菓子と見た目はほとんど変わらない。これらはローソン108が日本のレシピで指導して現地生産している商品だという。なかでも抹茶ロールケーキと生チョコレート=写真②=が人気だと店員が教えてくれた。興味本位で購入して試食したところ、まろやかで甘さひかえめなテイスト。これが45バーツ(1バーツは約3.2円)であれば、ロイズの生チョコレート(容量は約4倍、値段は495バーツと約10倍)が売れなくなるではないか、と思わせるほど出来が良いと感じた。

ローソンブランドの生チョコレート

次に注目したのは、店舗内に設けられた食事用のスペース。1人用のカウンターの奥には2~4人用のテーブルが設置されている。土曜のお昼前であったが、20代と見える女性が1人でおにぎりとうどんを食べながら外の景色を眺めていた。その奥にはスイーツを食べながらタブレット端末で動画を見ているOLらしい女性の姿があった=写真③

イートイン。屋台より格段に快適なスペース

イートインタイプのコンビニはタイでは初めてである。女性の食べているおにぎりが気になったのでレジ方向へ行くと、おにぎりコーナーがあった。タイ人の客にも中身がすぐに分かるように、具が表に出ている天むすタイプである=写真④

おにぎり。種類が豊富だ

◆純日本製のキャラクターグッズも

おでんは日本と変わらないが、興味を引かれたのはおかず販売コーナーである=写真⑤

日本食とタイ食のおかずがフードコートのカウンターのようにバットに入って並んでおり、「これ」と指さすと、白いご飯の上におかずをのせてくれる。タイ料理定番のガパオ炒めなどがあり、価格は平均49バーツ。屋台の2倍、百貨店のフードコートより若干高めであるが、ビジネス街のランチには重宝されることは間違いない。日本米が使われている点は、タイ料理にはタイ米のほうが合うので、ここまで日本色を出さなくてもいいのに、というのが私の本音だが、私のローカルアシスタントに言わせると、合格点のようだ。

おかず販売コーナー。レンジ用の弁当とは違い、温かいものをすぐ食べられるので便利

そして、最後に驚いたのが、リラックマコーナー=写真⑥。ローソン108では中間・富裕層の多いロケーションの2店舗に限定して、数カ月前にリラックマグッズのコーナーをつくったそうだ。

リラックマのぬいぐるみは650~1000バーツ。文房具も500バーツ以上と高額商品が並ぶが、向かい側にある私立学校の生徒たちの購買力が高く、予想以上に反響が良いと店員が教えてくれた。デジカメやスマートフォンの画像の印刷マシーンもあり、店内には中間・富裕層のターゲットを獲得するための工夫が散りばめられていた。

日本のコンテンツ輸入支援を行う立場としては、リラックマのようにアジアで人気がある、数少ない純日本製のキャラクターグッズが日系の小売店で扱われることにうれしさを感じる。過去に日本のコンテンツが他分野の日系企業と組んでタイ国内に販売チャンネルを広げる、または付加価値を高めるといった横の連携を目にした試しがないため、このチームワークを喜ばしく感じた。

リラックマ販売コーナー

◆経済格差と生活様式の変化にどう対応していくか

サハグループの会長はローソン108第1号店の記念式典で、「タイに今までにない新しいタイプのコンビニにしたい」と述べていたと聞くが、実際に店舗をじっくり観察すると、確かに差別化を図るための創意工夫、商品開発の努力を実感できた。

今、バンコク都では中間層が急増しており、2015年には都民の7割に達すると予測されている。所得アップに伴い、当然ながら個々のライフスタイルが大きく変わってきている。ローソン108には、この時代の流れに沿ったコンビニ事業を展開し、いつか勝利の旗を掲げてほしいと願う。

ただ、彼らのターゲットに合う客層を取り込めるロケーションが、そこまで多く存在するかについては疑問だ。今後は地方へ展開するはずであるが、バンコク都と地方の「経済格差」や「ライフスタイルの違い」を読み違えずに展開しなければならない。その点は、提携先サハグループのマーケティング部門の力量が問われるのではなかろうか。

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