п»ї ペナンの英国国教会の聖堂で考える『マレーシア紀行』第2回 | ニュース屋台村

ペナンの英国国教会の聖堂で考える
『マレーシア紀行』第2回

2月 07日 2014年 国際

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マレーの猫

エネルギー関連業界で30年以上働いてきたぱっとしないオヤジ。専門は経理、財務。実務経験は長く、会計、税務に関しては専門家と自負。2012年からマレーシアのクアラルンプールに単身赴任。趣味は映画鑑賞、ジャズ、ボサノバ鑑賞、読書。最近は浅田次郎の大ファン、SF小説も

マレーシアでの駐在期間が比較的短く、この国のことをあまり知らない私があれこれ書くのは気が引けるが、旅行記第2弾を書くことをお許しいただければと思う。

今回私が紹介させていただく場所は、マレーシア国内では比較的観光地としても有名なペナン(Penan)島。現在も世界中から多くの観光客が訪れている島である。日本人でもマレーシア観光に来られた方は、ご存じの方が多いのではないかと思うが、同島は南北約24キロ、東西12キロのインド洋に浮かぶ大きな島で、人口は約70万人である。

人口の過半数を華人が占めており、マレーシア国内でも華人比率が最も高い地区である。私自身も行ってみて、確かにそのように感じた。島の歴史は古く、イギリスがマレーシアに最初に入植した土地であり、1766年イギリス東インド会社の総督フランシス・ライトが東南アジア進出の拠点にこの島を選んだことから始まる。その後、イギリス東インド会社に譲渡されて「プリンス・オブ・ウェールズ島」と名付けられ、ライトが居住する地区はジョージタウンと名付けられた。その後、東西貿易の中継地である自由港として、ある時期まで発展してきた。

ユネスコにより2008年、マレー半島のマラッカとともに、同島内のジョージタウンが世界遺産に登録された。

◆内装を白で統一、聖公会には珍しい装飾と色彩のない教会

今回私が書くことは皆さんには全く興味がないことかもしれないが、私自身は大いに驚いた。

ジョージタウンに「セント・ジョージ教会(St.George’s Church)」という白亜の英国国教会があり、私が宿泊したホテルからも比較的近かったので訪問してみた。

英国国教会は本国のイギリスでもともとはカトリック教会であった。その後、16世紀のイングランド王ヘンリー8世からエリザベス1世の時代にかけてローマ教皇庁から離れて独立した教会となり、キリスト教の教派名としては聖公会となって現在に至っている。カトリックかプロテスタントかと分ける場合はプロテスタントに分類されるが、教義上の問題ではなく政治的な問題で分離独立したため、典礼的にはカトリックと共通点が多いのは事実である。

日本では東京・港区芝公園の高台、東京タワーの間近に建つ「聖アンデレ教会」が有名であるが、立教大学グループ、築地にある聖路加国際病院などは全て米国聖公会が日本で造った施設である。なお、聖公会は各国ごとに日本聖公会、米国聖公会、英国聖公会となって独立しており、イギリスのカンタベリー大主教の影響は他国の聖公会には及ばないかたちになっている。また、日本の聖公会はイギリスの影響を直接受けたものではなく、英国聖公会を母体とする米国聖公会が日本で布教をした結果であることもあまり知られていないかもしれない。

セント・ジョージ教会の聖堂に入って驚いたのは、内装が白色で統一されており、またステンドグラスもなければ何もなく、まるでプロテスタントの教会内部を白色で塗装したような色彩と装飾になっていることであった。

聖公会の聖堂には東京の聖アンデレ教会、クアラルンプールのセント・メアリー教会、カンタベリー教会などで見られるステンドグラスと色彩などの装飾があり、それはカトリック教会にかなり近い内容になっている。私はこの教会の色彩や装飾についてあまりに不思議に感じたので、教会で受付をしていた信徒に聞いたところ、確かに第二次世界大戦が始まるまではステンドグラスもあったし色彩もあり、いわゆる聖公会の聖堂様式だったそうである。

その後、戦争で爆撃を受け、半壊以上の被害を受けたものの戦後の再建でもある程度聖公会の仕様を保って再建されたとのことであった。ただ、世界遺産に登録されたあと、再度修復される過程で現在のような仕様になったとのことであった。観光の途中で時間もなく詳しいことは聞けなかったが、とにかく聖公会の教会でこれほど装飾と色彩のない教会は世界でもここだけだと感じたし、それは間違いないことだと思った。

戦争の影響で壊されたことは本当に残念であるが、不思議なのは世界遺産に登録された後になぜ現在のような装飾にしてしまったのかということである。戦後の再建時はまだマレーシアは独立しておらず、英国の植民地だったので英国聖公会または英国の資金負担で再建することができた。だが、世界遺産に登録されたのはつい最近であり、すでにマレーシア聖公会となっているので資金負担の問題があったのか、または英国の影響を排除した様式で修復しようと考えたのか?

これには何かきっと深い理由や経緯があるのであろうが、いつかそれを調べてみたいと思いつつ、帰路についたのであった。

【写真説明】
セント・ジョージ教会の聖堂。内部が全て白で統一されており、装飾品が全くない=ペナン島で、筆者撮影

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