п»ї 支援する側も差別化を求められる時代『浪速からの国際化』第1回 | ニュース屋台村

支援する側も差別化を求められる時代
『浪速からの国際化』第1回

8月 15日 2014年 経済

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北見 創(きたみ・そう)

ジェトロ大阪本部に勤務。関西企業の海外進出をサポートしている。横浜生まれで、ヘンな関西弁を得意とする。『アジア主要国のビジネス環境比較』『アジア新興国のビジネス環境比較』(ともにジェトロ)などに執筆。

◆高まる関西企業の海外熱

関西企業の海外事業に対する関心は、日に日に高まっている。企業からジェトロ大阪へ寄せられる貿易投資相談の件数は、2013年度は4802件と、前年度に比べて11%増加した。相談に来るのはほぼ中小企業だ。「全く経験はないが、輸出ビジネスをしたい」といった相談も多くなっている。

ジェトロ大阪がまとめた調査「関西企業の海外事業展開に関する傾向」の結果をみると、アンケートに回答した関西企業の77%が「輸出を拡大する」または「輸出に新たに取り組みたい」としている。理由は「海外需要の増加」「国内需要の減少」の2つだ。また、回答企業の規模を中小に絞ると、29%は「海外に拠点はないが、今後新たに進出したい」という。

ただし、対象は「ジェトロのサービスを利用した企業」で、海外慣れしている企業が多く、ややバイアスがかかっている。それでは、一般的な中小企業の実態としてはどうなのだろうか。

◆ASEAN情報があふれる大阪

海外に移転した取引先や商社からの情報流入が多くなっており、大阪府内でいえば「ASEAN(東南アジア諸国連合)での商売なんて聞いたことがない」という企業は少ないと思われる。また、ジェトロなど政府系機関、地銀・信金、商工会議所、経済団体、業界団体が、ASEANを中心とした海外セミナーを連日開催している。

結果、最近では「タイは仏教国で首都はバンコクです」といった類の、一般情報の提供では見向きもされなくなってきた。「タイ食品輸出セミナー」と産業を絞ったり、バイヤーを呼んで商談会を実施したり、進出を手取り足取り個別支援したりするなど、いかに深いサポートを出来るか、「海外ビジネス支援団体」は差別化を求められる時代になってきた。

このように、意欲さえあれば企業が海外事業を始めるハードルは以前に比べて下がっており、ASEANも身近な存在になっている。すでに海外拠点をもっている企業や、海外在住ウン十年の方からすれば、「さっさと現地に来ればよろしい」という印象もあるかもしれない。しかし、実際問題、どうしようか迷っている中小企業もまだまだ多い。

◆最初の一歩がハードルに

先日も海外進出に関心のある中小企業に訪問してきた。たとえば兵庫県尼崎市のA社(従業員数100人)は長年、大手メーカーから受注して様々な機械設備を製造・納入してきた。注文にあわせて色々な機械を作ってきたので技術力は高いが、営業部門がない。国内では新規顧客からの受注は難しく、下請けから脱却できない。ASEANでは系列外の注文も多いとは聞いており、技術力の高ささえ知ってもらえれば売れる自信はある。しかし、「失敗した仲間を多くみとるからなあ」と幹部は煮え切らない。

大阪府八尾(やお)市で溶接加工をしているB社(従業員数30人)のお得意先は、現状は国内で100%調達している。今のところ、海外での納入を求められてはいない。ただ、お得意先のグループ会社はタイでの調達を増やしており、お得意先自体の海外調達も、いつ始まってもおかしくない。社長は「今のままではジリ貧だとはわかってはいるが……」と苦々しく話す。

2社とも十分に商機のある事業にみえる。しかし、「海外事業に取り組む」という決断は非常に勇気がいる。長年、国内で会社を引っ張ってきた社長や幹部は迷っている。

もちろん、海外事業に取り組むには入念な事前調査やリスク分析が重要だ。時間も労力もかかる。想像もつかない問題も発生するだろう。ただ、それを避けて「海外事業に取り組まないリスク」も大きい。いま関西の海外支援機関に求められているのは、「まずは現地調査から始めましょう」「他社に出来ているのですから、御社にも出来ますよ」と、最初の一歩を応援することかもしれない。

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