п»ї 後を絶たない相続トラブル『経営コンサルタントの視点』第17回 | ニュース屋台村

後を絶たない相続トラブル
『経営コンサルタントの視点』第17回

6月 19日 2015年 経済

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中野靖識(なかの・やすし)

株式会社船井総合研究所上席コンサルタント。メーカーから小売業まで幅広いコンサルティングフィールドを持つ。一般消費者向けの商材を扱う企業の現場レベルでの具体的な販売手法の提案を得意とする。

日経平均株価が2万円を超え、15年ぶりの高値水準となっている中で、6月12日の東京外国為替市場の円相場は、正午現在1ドル=123円46?48銭と、引き続き円安基調のまま推移しています。

円安は輸出企業にとってはプラス要因になるため、大手を中心に業績が改善し、その利益が関連する中小企業にも波及し、結果的に家計が潤うという話もありますが、資源関連や原材料調達を海外に依存している企業や家計にとっては負担増加になるため、マイナスの影響も大きいと言われています。

厚生労働省の国民生活基礎調査によると、生活が苦しいと感じる人の割合が上昇していますので、個人消費が改善するにはもう少し時間がかかりそうです。

生活にゆとりがないと感じる日とが増加していく中で、足しになるのであれば財産が欲しいと感じる人も多いのでしょう。司法統計年報によると、相続に関するトラブルは、「遺産1000万円強5000万円以下」が最も多くなっています。

また、総件数が年々増加していることも、相続が発生するまで無関心であったことを示しているように感じます。生前の話し合いや、全員の理解が得られる状態での遺言など、後からこじれる元を断つのは被相続人(財産を残して亡くなった人)なのです。「我が家は財産が少ないから大丈夫」という考え方そのものが間違っていると考えるべきでしょう。

◆感覚のズレが問題を引き起こす元凶

事業承継においても、被相続人である現経営者が動かないケースが目立ちます。自分が死んでからのことになりますので、後は子供たちで好きにすれば良いとお考えの方も多いと思いますが、相続人である次期経営者は心中穏やかではありません。相続人が1人であれば良いでしょうが、多くの場合複数の相続人がいらっしゃいます。

後継者を指名していたとしても遺留分の問題が発生することがありますし、明確に後継者を指名していなければ、混乱を招きます。自社株式についてはある程度処理をされている方もいらっしゃいますが、不動産などの固定資産については、現経営者が地代、家賃をもらっていたりするため、処理が遅くなりがちです。

資金の借り入れをする場合には担保が必要になりますが、次期経営者が融資を受けようとした時に、資産の裏づけがないと交渉が難しくなります。現経営者の多くは、がんばって資産形成をしてきた自負がありますので次期経営者にもそれを要求するものですが、当時とは比べ物にならないほど、事業規模が大きくなっていることをお忘れです。担保になる資産背景があってこそ、個人で賄いきれない規模の資金調達交渉を有利に進めるができると考えましょう。

このように現経営者(被相続人)と次期経営者(相続人)の感覚のズレが、後々の問題を引き起こす元凶になっているものです。「少ないから大丈夫」ではなく、元気なうちに次期経営者を含む相続人の理解を得て納得してもらうことが、現経営者の務めと考えましょう。

経営幹部の方々がこのような問題に口出しをするのは勇気が要りますが、会社を適切に残していためには誰かが首に鈴をつけなければなりません。強い意志を持って対処していくことをお勧めします。

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