「デジタルフォレンジック」をご存じですか?
『企業法務弁護士による最先端法律事情』第1回

12月 11日 2015年 社会

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北川祥一(きたがわ・しょういち)

北川綜合法律事務所代表弁護士。弁護士登録後、中国関連国際法務分野においてトップローファームといえる大手法律事務所(当時名称:曾我・瓜生・糸賀法律事務所)に勤務し、大企業クライアントを中心とした多くの国際企業法務案件を取り扱う。その後独立し現事務所を開業。前事務所勤務時代における中国留学経験も生かし、法令・契約書の中国語原文でのレビューも行うなど、国際企業法務の観点から中国、台湾、マレーシアなどのアジア国際ビジネスを総合的にサポートしている。

今回から「ニュース屋台村」に寄稿させて頂きます、弁護士の北川と申します。私は、国内企業法務はもちろんのこと、中国、台湾、マレーシアなどのアジア方面の国際案件も取り扱っております。

「屋台村」では、ときに国際法務の話も交えつつ、今回の第1回のテーマでもある「デジタルフォレンジック」のような、最先端の法律関連事情について執筆できればと思っております。どうぞよろしくお願い致します。

◆デジタル時代に欠かない画期的な手法・技術

最近、私の法律事務所で力を入れて取り組んでいる分野があります。それが「デジタルフォレンジック」という手法・技術を利用した紛争解決・予防になります。

「デジタルフォレンジック」、皆さんご存知でしょうか? 「デジタルフォレンジック」とは、法律上の紛争や訴訟問題発生の際における、デジタルデータの分析・調査・解析、消去されたデジタルデータの復元などを行う調査手法・技術のことを言います。

ごく簡単に一部を説明しますと、例えば、「証拠としてあったら良かったなあ」と思われるような、既に消去してしまったパソコンなどの電子機器内にあるデータを復元するといった技術となります(実際は、復元だけでなく、データの解析・調査などもあります)。

このデジタルフォレンジックは、パソコンなどの電子機器がいかなる形にせよ使用されていないビジネスはもはや存在しない、と言っても過言ではない現代の紛争の解決(ときには紛争の予防場面)で、画期的な手法・技術になり得ると言えるところでしょう。

法務の現場での影響という観点に少し引きつけて説明します。実際の法務の現場において、紛争やトラブルの相談は弁護士に行うものですが、そのような法律相談の現場では、(例外はありますが)基本的には、ある程度案件の筋、請求可能性などの見通しを立てる必要があります。

ここで、デジタルフォレンジックに詳しい弁護士と、そうでない弁護士の相談の回答結果には、以下のように差が生まれ得ます。

【とある法律相談】
相談企業様: ~~~という紛争があり、○○の請求をしたいのですが。
弁護士  :その当時の取り決めを立証する一連のメール及びその他のデータはまだ残っていますか?
相談企業様:その一連のメール及びその他のデータは既に消去してしまっていて、残念ながら残っていません。
▽デジタルフォレンジックに精通していない弁護士の回答=それでは、立証が難しいから請求も難しいでしょう、という見通し
▽デジタルフォレンジックに精通している弁護士の回答=対象データの存在するパソコン、スマートフォンなど電子機器の状態をさらに詳しく聞いた上で、データ復元による立証の可能性の模索。ひいては、デジタルフォレンジックの結果により請求の見通しが立つ可能が出てくる

 

ちなみに、「消去してしまった」の程度としても、単に数日前に消去してしまったという軽度のレベルから、OSも入れ替え、複数社員がその都度アカウントを変えて使用してしまっているといった重度のレベルまでいろいろですが、OSが入れ替わり、複数社員がその都度アカウントを変えて使用していた場合でもメールを復元したという事例もあります。

以上のように、問題や状況及び技術面をごく簡略化した説明ではありますが、デジタルフォレンジックという手法・技術の有無で、法律相談段階での見通しにさえも大きな影響があることがお分かり頂けるかと思います。

次回以降、より具体的にデジタルフォレンジックがどのような紛争場面で、どのように紛争解決に役立つのかという点などを説明したいと思います。

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