価格なき財産(前編)
『知的財産:この財産価値不明な代物』第4回

4月 22日 2016年 経済

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森下賢樹(もりした・さかき)

プライムワークス国際特許事務所代表弁理士。パナソニック勤務の後、シンクタンクで情報科学の世界的な学者の発明を産業化。弁理士業の傍ら、100%植物由来の樹脂ベンチャー、ラストメッセージ配信のITベンチャーなどを並行して推進。「地球と人にやさしさを」が仕事のテーマ。

第2回の「タイタニック・ジャパン」では、日本企業が国内で大量の特許を作り込んでいる間、日本の国力が漸落した話をしました。しかも、その大量の特許の利用率(利用件数/所有件数)は52%にとどまっています(2015年6月、特許庁「特許行政年次報告書2015年版」による)。つまり半分は休眠特許です。知財関係者の中には、本当は7割が休眠だという人もいます。実は私もそう思います。この状況下、知財立国日本の復興策は何でしょうか。

◆理想論

天下り式に言ってしまうと、有望な技術を探す企業に休眠特許を利用させ、技術の移転を図る。そして各社が得意とする技術をより先鋭化し、それらの組み合わせから革新的な製品群を創り出す。特許を核としたオープンイノベーションということです。ただし、ここまでなら経済産業省も言っていますよ。これを推進する私案は後述します。

◆世界に冠たる

日本企業の競争力が落ちた原因のひとつに「オープンイノベーションへの乗り遅れ」があると言われます。1980年代、製造業で日本に負けた米国企業は社内に技術者が残っていません。そこへインターネットの時代が到来。開発は社外の優秀な会社に分業されるスタイルが進みました。社内に人がいない以上、自由に社外の一番優れたところを採用できました。

一方、日本はいまだ終身雇用制度が残っており、開発に必要な技術者はすべて社内にいます。開発は社内でやるほかありません。私自身、産学共同ベンチャーで革新的な画像処理技術を開発していたことがありますが、その技術を大企業にもって行くと、十中八九「うちの技術ではないので……」と断られます。

その結果、いわば、なりふり構わずの米国があっという間に革新的な製品群を出し、日本は見る間に置いてけぼりにされました。世界に冠たる日本型経営、すなわち終身雇用制と、必要なものはすべて自社開発する哲学がインターネットの到来で過去の遺物になったのです。

◆財産って何?

国は「オープンイノベーションを進めましょう」と言いますが、

──そんなご無体な……。

えっ、知的財産が無体財産だから?(ギャグが高度すぎて面白くない……)

でも、まさにここに問題の本質があります。特許は「無体」なのです。

オープンイノベーションのためには、特許を商品のように流通させなければなりません。そのためには取引の場が必要で、大前提として各特許の価格が決まっていなければなりません。だって、価格が決まっていないものなんて、売買できないじゃないですか。特許の取引がオープンな場で成立する例は希有で、一般にわかりやすいものはオークションぐらいかもしれません。特許に価格がないから、もはや絵画や壺のような骨董品なのです。

しかし、取引のためにオークションなんてしていたら、流通などできるはずもありません。いま日本には生きている特許が100万件以上あるのです(もちろん、国は開放特許情報データベースを作るなど、取り組んでいますが……)。

知的財産は「財産」です。みなさん、価格がわからない財産に意味はあると思われますか?

知的財産の流通を語るためには、その価格付けについて考えなければなりません。これは大きな問題で、私の屋台のタイトル『知的財産:この財産価値不明な代物』も、この問題から発しているのです。(次回へ続く)

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