п»ї 会社の規模に関係なく必須な「就業規則」 『実録!トラブルシューティング』第39回 | ニュース屋台村

会社の規模に関係なく必須な「就業規則」
『実録!トラブルシューティング』第39回

12月 06日 2016年 経済

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東洋ビジネスサービス

1977年よりタイを拠点として、日本の政府機関の後方支援に携わる。現在は民間企業への支援も展開、日本とタイの懸け橋として両国の発展に貢献することを使命としている。

◆1人でも雇ったら作成を

今回は、何となく忘れてしまいがちな会社の就業規則に関するトラブルについてご紹介します。ある日、数年来の知り合いで、開業6年、従業員数25人の会社を経営するA氏から、何気なく「就業規則って、そろそろ用意しなきゃいけないのかな?」とのご質問を受けました。詳しく聞いてみると、現状では就業規則としてA4判で1枚の文書があるだけとのことです。

就業規則については、従業員が10人以上になってから15日以内に、タイ語で作成し、就業規則の公布から7日以内に労働局に届け出をし、内容のチェックを受ける必要があると決められております(※注1)。そして、従業員がいつでも閲覧できるように、社内の食堂などに保管する必要があります。なお現時点で、パソコンで確認をする電子データでの閲覧は周知方法として認められておりません。

10人未満の会社には、そのような規定はありませんが、就業規則を定めていなかったばかりにほんの小さな労使問題が解決し難い大問題へと悪化する可能性も十分あります。まずは従業員を1人雇った時点から就業規則を作成することをお勧めいたします。

就業規則を運用するうえで大変残念な事例となりますが、従業員に警告書を出す際には、警告の対象となる行為がどの項目に違反するかを明記する必要があります。タイの労働者は労働者保護法によって、日本の労働基準法とは比較にならないほど、その権利が守られています。解雇補償金を払えば解雇できるというわけではなく、正当な理由がない限りはいくら法定解雇補償金を払っても解雇は不可能となります。

労働者保護法では、就業規則以外にも、従業員名簿(個人情報、役職、賃金など)、賃金台帳(労働日・時間など)を作成するようにと定められております。そして、就業規則には下記の項目が必須と定められています。A4判1枚で収まる内容ではないことはお分かり頂けると思います。
①労働日、通常の勤務時間、休憩時間
②休日、休日取得の方法など
③時間外労働手当、休日労働手当
④基本給、各種手当の支給方法
⑤休暇日、休暇日取得の方法など
⑥規律、罰則
⑦苦情申立、申立先と方法
⑧解雇、解雇補償金、特別補償金

また、就業規則と同様に大切なのが、「福利厚生委員会」といわれる従業員の福利厚生、環境衛生向上のための組織です。福利厚生委員会は諸問題の提案や解決、審議などを行い、会社における労使協調、問題の解決の窓口になります。

◆福利厚生を後回しにしてはいけない

法律では従業員が50人以上になった時点で福利厚生委員会を設置するようにと定められておりますが、従業員が1人でも、呼び方はともかくとして、できれば月に1回程度、定期的にマネジメントを確認し従業員が話し合いをする場を設けることをご提案いたします。規則や委員会も大事ですが、まずはマネジメントの点検と従業員が出来るだけ多くコミュニケーションを取ることで、わだかまりや疑心暗鬼の気持ちなどが大きくなる前に何らかの解決策が見つかるものと思います。

日々、業務に忙しいなか、福利厚生は後回しになってしまいがちですが、従業員あっての会社です。無用な労働裁判などを避けるためにも、社内のメンテナンスにもちょっとひと手間を掛けることをお勧めいたします。

(※注1)本稿執筆時点。ただし、2017年4月4日付で公布・施行されたタイ国家平和秩序維持評議会(NCPO)布告No.21/2560により、労働局への届け出は不要になりました。

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