п»ї 在京地下鉄・私鉄の「ベビーカー車両」の反応は? 『ジャーナリスティックなやさしい未来』第107回  | ニュース屋台村

在京地下鉄・私鉄の「ベビーカー車両」の反応は?
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第107回 

4月 26日 2017年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

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コミュニケーション基礎研究会代表。就労移行支援事業所シャロームネットワーク統括。ケアメディア推進プロジェクト代表。精神科系ポータルサイト「サイキュレ」編集委員。一般社団法人日本不動産仲裁機構上席研究員、法定外見晴台学園大学客員教授。毎日新聞記者、ドイツ留学後、共同通信社記者、外信部、ソウル特派員など。退社後、経営コンサルタント、外務省の公益法人理事兼事務局長など経て現職。

◆回答は「無理」

本稿第105回「あすぷろ、という社会運動は『広がり』を目指す」の記事で、私が所属している社会活動の団体「あすぷろ実行委員会」が3月、首都圏の主な地下鉄や私鉄各社にベビーカー車両の導入の要望書「昼間時間帯の車両編成すべてにおいて、1両のベビーカー優先車両の導入」を提出したことをお伝えした。

この要望に対しての各社の返答は概ね「無理」との「ゼロ回答」ではあったが、その各社の対応が様々で面白い。反応しなかった社も含めて、その現在の文化状況を考えながら、結果を報告したい。

要望書の提出先であったJR東日本、京王、小田急、東急、西武、東武、京成、京急、相鉄、東京メトロ、横浜市営地下鉄のうち、回答があったのは、小田急、東急、京急、相鉄、東京メトロの5社。ほかのJR東日本、京王、西武、東武、京成、横浜市地下鉄は提出から1か月を過ぎた4月26日現在、回答はなかった。

◆フリースペースで対応

回答では、相鉄が「列車の先頭および最後部車両にフリースペース(車いす、ベビーカーをご利用のお客様スペース)を設けております。現状におきましては、混雑緩和への対応や、車両スペースが限られていることなどから、様々なニーズに対応する優先車両の導入は困難であるかと考えております」とし、現状維持との考えで、京急は「ご要望は、今後の課題としてお預かりさせていただき、周辺同業他社の状況および社会情勢を鑑みつつ、検討させていただきたく存じます」と、他社を見ながら、という回答は正直でもある。

東京メトロは「広くお客様に対してベビーカー利用への理解・配慮が得られるよう、車両のフリースペース設置箇所付近へ、ベビーカー等を優先的にご利用いただける場所であることを周知するベビーカーマークステッカーを貼付しております」「『メトロのトリセツ』などの利用案内冊子を通して、ベビーカーを折りたたまずにご利用いただけること等の周知に努めております」と説明している。

◆女性車両も運用難しい

「できない」との見解のうち、小田急は女性専用車両導入には定時運転への影響を考慮し車両数や時間を限定していることを前提として「更にお客様を限定した車両を導入することは、非常に難しい」としているのが本音らしく、女性専用車両さえ、運用が難しいという現実を示しているようだ。

東急は「特定の車両をベビーカー優先車両とするのではなく、どの車両に乗車されてもベビーカーをとめやすいように車両すべてにフリースペースの設置を進めております」「ホームのスペース、各駅での乗降時分が限られることから、ベビーカーについては1つの車両に集中してではなく、分散してご利用いただきたいと考えております」と回答し、こちらは「全車両のフリースペース」で多様なニーズを受け止めたいという考えなのだろう。

◆マインド形成目指す

この要望書は、車両導入を求めるものではあるが、私自身、それは「絶対」とは思っていない。目的は、赤ちゃんを育てる親がベビーカーでも気軽に外出し移動できる環境とマインドを形成したいということである。

ベビーカーを車両に乗せることで、白い目で見られる状態を否として、子育てする母を温かく見守れる世の中のための、きっかけづくりである。この思いの本質を各社はどこまで理解しただろうか。回答という業務の中で、その思いを汲(く)めるだけの余裕が各社ともないのが少し悲しいが、回答を見ながら、わかったことは、利用者のマジョリティー形成の重要さである。だから、その一歩は車両導入ではなく、きっかけとしての企画づくりかもしれない。

導入しやすい地方の路面電車などで、ある時間だけベビーカーのお母さんを運ぶ取り組みなどでもよい。そんな企画を練りながら、この先も行動を続けていきたい。

※『ジャーナリスティックなやさしい未来』過去の関連記事は以下の通り
第105回 あすぷろ、という社会運動は「広がり」を目指す
https://www.newsyataimura.com/?p=6466

■精神科ポータルサイト「サイキュレ」コラム
http://psycure.jp/column/8/
■ケアメディア推進プロジェクト
http://www.caremedia.link
■引地達也のブログ
http://plaza.rakuten.co.jp/kesennumasen/

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