アメリカの北朝鮮対策に次の一手はあるか?
『あれ、オレいまナニジンだっけ?』第14回

8月 01日 2017年 社会

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呉 亮錫(ご・りょうせき)

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作家、翻訳家。米ボストン大学国際関係学部を卒業後、雑誌編集者を経て独立。「第8回 真の近現代史観懸賞論文」(アパ日本再興財団主催)にて佳作受賞。著書に『「親日の在日」として』(LUFTメディアコミュニケーション)がある。在日韓国人三世(2016年12月に日本国籍取得)。横浜市出身。好きなものは、ミスチルと寅さんとベイスターズ。

核ミサイル開発を続ける北朝鮮に対して、アメリカ政府内では外交による解決が不調に終わった場合に備えて、軍事作戦の検討が進んでいる。アメリカ中央情報局(CIA)のポンペイオ長官は、7月26日付の米ウェブメディアのインタビューで、必要があれば、秘密工作やアメリカ軍の支援といった選択肢を、大統領に提示する準備を進めていると明らかにした。

ポンペイオ長官は7月20日にコロラド州で行われた会合で、トランプ大統領と会う際には、ほぼ毎回、北朝鮮について質問されると明かし、大統領自身がこの問題について高い関心を持っていることを示唆している。

北朝鮮の核ミサイル開発は、想定以上のスピードで進んでいるようだ。米国防情報局(DIA)はこのほど、北朝鮮が核弾頭を搭載した大陸間弾道弾(ICBM)を、来年にも実戦配備するという分析をまとめている。これまでは、3年から5年ほどかかると見られていたことを思えば、一般に考えられていたよりも、北朝鮮の脅威は間近に迫っていると言える。

中国頼みの対策も、案の定、失敗に終わろうとしている。これまでトランプ大統領は、中国の協力を取り付けることによって、北朝鮮問題を同国に解決してもらおうとしてきた。しかし、中朝貿易は第1四半期に約40%増加しており、中国の協力姿勢には疑問符がついている。トランプ氏自身も、ツイッターで不満を表明した。

中国にとってみれば、米軍が駐留する韓国との間に位置する北朝鮮は、米軍と直接対峙(たいじ)しなくて済むための防波堤としての機能がある。そもそも、中国が簡単に北朝鮮を見放すとは考えづらく、トランプ政権の見通しは甘かったと言わざるを得ない。

では、中国を通しての解決が不調に終わりつつあるいま、アメリカは実際に北朝鮮への攻撃に踏み切るのだろうか。トランプ大統領は以前にツイッターで、「中国が協力を決断しなければ、我々は自力で問題を解決する」と述べており、単独での行動を行うと示唆している。

しかし、攻撃には高いリスクが伴う。秘密工作によって金正恩朝鮮労働党委員長を取り除こうとしても、スパイの潜入が困難な北朝鮮では、金氏の正確な居場所を突き止めるための現地情報を得ることは難しい。また、核施設やミサイル基地を狙って攻撃を仕掛けたとしても、拠点の一部は生き残る可能性がある。北朝鮮の反撃によってソウルは文字通りの「火の海」になり、日本の本土にも攻撃が及ぶかもしれない。こうした危険性を承知で、実際に攻撃に踏み切れるかどうかは、極めて高度な判断になる。軍事的な手段は、「最後の一手」であることは間違いない。

もし万策尽きる前に、現段階でもう一つアメリカにできることがあるとするなら、それは、中国に対して、「北朝鮮問題を解決しないなら、韓国や日本の核保有を支援する用意がある」とでも明確に発言して牽制(けんせい)し、改めて、圧力をかけることかもしれない。アメリカにとっては、それほどまでに北朝鮮問題を真剣にとらえていると中国に示すことになるし、中国にとっては「日本の核武装」という悪夢を招いてまで、北朝鮮を守ることが利益かどうかを考えさせられることになる。

もっとも、こうした提案を実際に行うことは、アメリカの戦後の外交政策の大きな転換を意味するため、極めて勇気が要る決断になる。アメリカが掲げてきた「核不拡散」政策の転換を意味するだけでなく、日米同盟の性質も変えることになる。日米同盟は、アメリカが日本を防衛するかたわら、日本が独自に防衛力を持たないようにする歯止めともなってきたからだ。

しかし、北朝鮮の核ミサイルがアメリカ本土を射程に収めることが秒読みになっている以上、アメリカが従来の外交政策の転換さえも考えなければ、北朝鮮問題を解決できるメドが立たないほど、問題が切迫していることは事実だろう。トランプ大統領自身も、こうした点を認識している節がある。

トランプ大統領は北朝鮮による7月4日のミサイル発射の際に、「北朝鮮はこのようなことに懸命になって何か良いことがあるのだろうか。日本も韓国もこれ以上、我慢できるとは思わない」とツイッターに書き込んでいる。「日本も韓国もこれ以上、我慢できない」となったら、当然のことながら、両国の視野に入ってくるのは核保有という選択肢である。そもそもトランプ氏は大統領選の最中に、北朝鮮の核ミサイル問題を解決できなければ、日本や韓国が核保有を行う可能性があると発言している。

中国頼みの対策に失望感が漂うなかで、トランプ大統領はここから、どのような選択肢を選び、北朝鮮問題を解決しようとするのだろうか。日本の未来のみならず、現代の日本人の生命の安全に直結する大問題である。だからこそ、私たちはまず、ここ数カ月の間、加計学園の問題ばかりを追いかけた国会やワイドショーの姿勢が果たして公平だったのかどうかを、振り返るところから始めないといけないのかもしれない。

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