各党公約から「精神福祉政策」を探してみる
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第118回

10月 12日 2017年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

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コミュニケーション基礎研究会代表。就労移行支援事業所シャロームネットワーク統括。ケアメディア推進プロジェクト代表。精神科系ポータルサイト「サイキュレ」編集委員。一般社団法人日本不動産仲裁機構上席研究員、法定外見晴台学園大学客員教授。毎日新聞記者、ドイツ留学後、共同通信社記者、外信部、ソウル特派員など。退社後、経営コンサルタント、外務省の公益法人理事兼事務局長など経て現職。

◆薄い福祉政策

第48回衆議院選挙が公示された。安倍晋三首相の突然の臨時国会冒頭解散を受けて、希望の党が出来上がり、民進党が壊滅して、希望の党に排除された元民進党のグループが立憲民主党を結成するなど、ここ数日間の変化は近年まれにみる急展開だった。政党という枠組みを決めることは、政権選択を示すことになるという認識から、受け皿づくりは必至かもしれない。

しかし看板が出来ても、公約を細部まで詰め切ることはできなかっただろうから、ただでさえ薄い福祉分野の公約の中でも、マイノリティーに関することや、精神疾患、メンタルヘルス関連については、今回も絶望的に盛り込まれていないのが現状だ。またもや精神福祉の観点からの住みよい社会、市民と共有するべき明るい未来を描ける「選挙」というチャンスを失ったことの失望は大きい。

前のめりの経済政策は取り残されている人を生産するだけ、との指摘があるが、それは精神福祉の分野も対象の一つだろう。長年、取り残されたままの課題は何も解決していない。

◆2つの20

例えば「2020」と言えば、次回の東京五輪を示すのが一般的な反応かもしれないが、この数字は二つの20を意味する。全世界の「精神病院」の病床のうち20パーセントは日本にあり、さらに日本全体の病床のうち20パーセントが精神科病院の病床である。この数字は異様だ。人口比率、疾患者の割合から考えても、おかしい、というのが多くの関係者の声であるが、「社会問題化しない」のが、難題だ。

昨年の神奈川県相模原市の障がい者施設での入所者殺傷事件を受けて精神保健福祉法の改正が一時期、取りざたされたが、これも精神疾患を社会でどのように考えていくかで、選挙の争点化になりうる話である。しかし、そうはならない。

政権与党、自民党の選挙公約には、社会保障を子どもの教育に重点を置くことを強調するだけで、障害福祉までは及ばない。連立与党の公明党も大きな柱である「人を育む政治の実現へ」の中で、細目に「障がい者のライフステージに応じた教育・支援の充実」とあるから、少々救われるが、目立った扱いではない。

◆新党のスタンス

希望の党は「ダイバーシティ社会の実現」が柱の一つで、「すべての人が輝ける社会をめざします。特に、女性、シニアの力をさらに生かします」と訴えているが、政策の柱そのものが小池百合子代表の東京都知事選の公約と変わらず、「ダイバーシティ」が一般名詞として浸透し、理解されているかも疑問だ。

そして、「特に」と前置きして、女性と高齢者を持ち上げるのは、「特に」から外れた障がい者の気持ちを考えると、切なくなる。

立憲民主党は、柱の一つである「個人の権利を尊重し、ともに支え合う社会を実現します」とした中に「障がい者差別解消法の運用強化」「自殺に追い込まれることない社会を実現します」と具体的な取り組みを示しているのは評価できるし、分かりやすく、取り組みやすい性格の課題であろう。

マイノリティーへの視線は、日本型「リベラル」が真正かどうかの試金石のようなものだと個人的に思っている。私が切り口にしたい「障がい者」は登場しても、残念ながら公約で「精神疾患」の世界に踏み込んでいるものはない。

これからの選挙戦、街頭演説に立つ候補者に是非、問いかけてみてほしいと思う。精神疾患者についての政策をどう考えていらっしゃるのか、と。このままではやはり精神福祉が見えないまま、選挙が終わっていくばかりだ。

※『ジャーナリスティックなやさしい未来』過去の関連記事は以下の通り
第115回 相模原事件を考え、学び、語らうことを続けたい
http://www.newsyataimura.com/?p=6821

精神科ポータルサイト「サイキュレ」コラム
http://psycure.jp/column/8/

■ケアメディア推進プロジェクト
http://www.caremedia.link

■引地達也のブログ
http://plaza.rakuten.co.jp/kesennumasen/

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