作業の標準化とその遵守活動―迎流企業診断と評価(5・完)
『ものづくり一徹本舗』第30回

12月 19日 2017年 経済

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迎洋一郎(むかえ・よういちろう)

1941年生まれ、60年豊田合成入社。95年豊田合成タイランド社長。2000年一栄工業社長。現在中国、タイで工場コンサルタントを務める。自称「ものづくり研究家」。

私の独自の「企業診断評価シート」に基づく診断項目は、今回の「標準化と遵守活動」が最後になります。本稿第27回で申し上げたように、私はあえて「4S」としましたが、実は「5S」と少し間をとって最後の「S」つまり躾(しつけ=教育訓練)について、私なりの考えで「標準化と遵守活動」に置き換えました。

◆欠かせない全社員共通の認識理解

「4S」から「5S」になったのは今から40数年前のことです。当時の豊田合成(株)のトップ・加藤宗平社長から「PM賞へ全社を挙げて挑戦する」という命令が下されました。PMとは「Productive Maintenance=生産保全」のことで、PM賞は現在の公益社団法人日本プラントメンテナンス(PM)協会の前身の団体が、当初は主に設備管理部門を中心に成果を上げた企業を表彰する制度として発足させました。

私は当時、豊田合成で新設された配練課の初代課長でした。日本PM協会の高橋義一先生や長田貴先生にご指導いただきながら、職場のキャッチフレーズとして「悪い物を受け取らない・造らない・流さない 3悪追放作戦」と掲げ、設備保全活動に精力を傾注したものです。全社を挙げた成果が認められ、賞に値するとの判断をいただいたのですが、当時の加藤社長はそのレベルに満足せず、PM協会に対して「PM特別賞」を提案し、新たなチャレンジの方針を下されました。その賞が現在のTPM賞で、「Total Productive Maintenance=全員参加の生産保全」で優れた功績のあった企業に贈られています。

当時のキャッチフレーズは「儲かるPM推進」でした。その手段として加藤社長から、従来の「4S」に躾の「S」を加えて「5S」活動を推進せよとのお達しがあったのです。私はその躾こそ、「標準化と遵守活動」に相通じる行動であると考えて取り組んできました。

その後、「トヨタ生産方式」の生みの親である大野耐一氏がトヨタ自動車工業の副社長から豊田合成の会長に転出され、私は大野会長から直接薫陶(くんとう)を受ける機会に恵まれました。また、根本正夫社長(当時)の下で、品質管理の優れた企業に日本科学技術連盟から贈られるデミング賞に挑戦するなど、さまざまな角度から会社の体質向上のトップポリシーの下、数千人の全従業員が一丸となって与えられた立場で目標に向かって突き進んでいきました。そのためには共通の認識理解が欠かせません。機能ごとに業務の標準化とその遵守活動が不可欠ですが、私は製造工場を担当してきた経緯から、製造に当たっての標準化の一部と遵守活動について述べたいと思います。

◆標準書を整備し常に見直す

教育訓練は、標準書なくして教育はできない、教育なくして遵守はできません。特に製造工程におけるオペレーターの仕事のやり方の標準化はその核心部であると認識することが重要です。その標準は加工工程ごとに、①作業手順を書く②手順ごとの作業時間を入れる ③加工時間合計(サイクルタイム)を決める――という手順です。この標準ができ上がれば生産量に対して、加工必要時間や必要人員が明確になりますし、結果管理として可動率(べきどうりつ)の計算ができますので、課題も見えてきますから改善の手がかりになるのです。

この標準書を私は「作業手順書」と呼ぶことにしてます。この標準書には付帯する標準書がいくつか必要です。例えば①検査基準書②外観限度見本③ワンポイントQC④ワンポイントセフティーなどを兼備するとよいです。

そして最後に大事なことは、標準書の内容がオペレーターにしっかり教育訓練されることです。私は標準書の書式改定で、下部に誰がいつトレーニングしたか、トレーニングされたオペレーターは「理解できたので実行します」の誓約サインを自筆で入れる納得サイン欄を設けるようにしました。

標準書はそれまで、誰に指導教育したかを監督者本人が書いていました。ある品質問題が発生した職場の長が再発防止対策書に標準書の改定版を添付してきた際、オペレーターに本当に教育指導をしたのか現地・現物・現認の「3現主義」に基づいて確認したところ、作業内容と改定標準内容が違っていたことがわかりました。私はその場で作業を停止させ、オペレーターに改定標準書を見せて、「この内容と君のやってる方法が違っているが、改定標準について指導受けましたか」と尋ねたところ、「いやまだ知りません」との答えでした。

自分の席に戻って担当課長、係長、班長にその理由を問いただすと、「対策書提出を急いでいたのでうそを書きました」と弁明しました。そこで標準化委員会を通して、レッスン欄には今後、オペレーターの納得サインをもらうように改めたのです。この改訂はデミング賞の審査においても高い評価を受け、機会があれば他社の方々にも広く紹介しています。

これまでおよそ20社を見せていただきましたが、残念ながら9割がたの会社が、現場の第一線で働く従業員の加工標準化への取り組みに関する文書を作成していませんでした。標準化とは非常に広範囲でさまざまなものが規定されますが、ここでは作業手順書についての標準化とその遵守について説明させていただきました。参考になれば幸いです。

今回で私の「企業診断と評価」についての説明を終わりますが、私自身まだまだ知識も勉強も不足し、途上にあります。最後に、私の一連の見解が、独自に作成した「企業診断評価シート」の回答に基づいたものであることをお断りしておきます。

※『ものづくり一徹本舗』過去の関連記事は以下の通り
第26回 トップポリシーとマネジメントは明確に―迎流企業診断と評価(1)
http://www.newsyataimura.com/?p=7030#more-7030

第27回 4S管理は全社一丸で取り組む―迎流企業診断と評価(2)
http://www.newsyataimura.com/?p=7043#more-7043

第28回 「見える化職場」になっているか―迎流企業診断と評価(3)
http://www.newsyataimura.com/?p=7057#more-7057

第29回 物の流れは効率化されているか―迎流企業診断と評価(4)
http://www.newsyataimura.com/?p=7078#more-7078

※「ニュース屋台村」過去の関連記事は以下の通り
迎洋一郎さんによる工場診断サービス
『バンカーの目のつけどころ 気のつけどころ』第103回
http://www.newsyataimura.com/?p=6861#more-6861

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