試用期間」中の解雇の落とし穴
『実録!トラブルシューティング』第51回

1月 15日 2018年 経済

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東洋ビジネスサービス

1977年よりタイを拠点として、日本の政府機関の後方支援に携わる。現在は民間企業への支援も展開、日本とタイの懸け橋として両国の発展に貢献することを使命としている。

今回は、何かと混乱の元となる「試用期間」に関するトラブルについてご紹介します。タイでは労働者保護法で労働者の権利が厚く守られており、退職時には在籍日数に応じて以下のように解雇補償金の支払いが定められています。

勤務期間                                             手当金額(退職時の賃金に対して)

120日未満                                          解雇補償金必要なし

120日以上 1年未満                             30日分以上

1年以上3年未満                                  90日分以上

3年以上6年未満                                 180日分以上

6年以上10年未満                                240日分以上

10年以上                                             240日分以上

 
そこで各会社は解雇補償金が発生しない「試用期間」を定めることが多くなっています。この「試用期間」ですが、労働者保護法に明確に定められているというわけではなく、解雇補償金の支払い義務が発生する前の期間を便宜上「試用期間」と呼んでいるものです。

この試用期間をめぐるトラブルで多いものは、試用期間中に不当に解雇された、という訴えです。これは、119日以内に雇用終了の場合には、解雇補償金がないということから、一般的に試用期間が119日以内であれば自由に解雇できると誤解されていることが多いことに起因しているようです。たとえ試用期間中であっても、雇用契約を締結しているため、解雇する場合には、一給与期間前(30日ではなく給与期間)までの通知が必要となります。また、雇用開始後119日を超えている場合には、当然ながら解雇時に解雇補償金の支払い義務が発生します。

さらに試用期間中の解雇について、雇用開始から119日以内であればいつでも解雇できるというものではなく、 解雇するために正当な理由と通知が無ければ不当解雇となる可能性があります。また、雇用した従業員の能力が、会社の希望する水準に達していないという理由による解雇の場合、もしも当該従業員が労働裁判に訴えた際には、会社の求める基準に達しなかったという証明をする必要があります。このため、どの従業員に対しても使用する能力判定表や評価表のような客観的かつ明確な資料を作成・保管しておき、解雇時にも当該従業員にきちんと説明し、本人に納得させることが肝要です。

◆訴訟リスクに備えておく

訴訟を避けるには、まずは当該従業員に解雇理由を納得させ、解雇通知にもその旨を明記すること、その従業員の能力が会社の希望する水準に達していないと判断した客観的な証拠を残すこと、そして、解雇の予告期間を設ける代わりに支払う解雇予告金など法定通りの金額を支払うことをお勧めします。また、当該従業員からの受領書、訴訟権利放棄を明記した同意書を入手すると安心です。

賞与は、年末に支給する企業が多いことから、年始は人材の流動性が高まる時期です。改めて従業員の雇用および試用期間について、正しく理解しておくとともに、万が一の訴訟リスクに備えておくことが重要です。一般的に、採用面接で従業員の能力や資質をすべて把握するのは極めて困難であり、採用後に想定外の事案が発生するケースがほとんどでしょう。人事・労務問題に関するお悩みについては、いつでも東洋ビジネスサービスにご相談ください。

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