第3次AIブームで加熱する米中の覇権争い
『中国のものづくり事情』第13回

2月 06日 2018年 経済

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Factory Network Asia Group

タイと中国を中心に日系・ローカル製造業向けのビジネスマッチングサービスを提供。タイと中国でものづくり商談会の開催や製造業向けフリーペーパー「FNAマガジン」を発行している。

将棋や囲碁でプロ棋士に勝利したかと思えば、作曲をしたり小説まで書いてしまう人工知能(AI)の話である。現在は1950~60年代、80年代に続く第3次AIブームといわれている。

開発で先行するのはアメリカだ。グーグルやアマゾン、アップルといったグローバル企業が注力し、AI関連企業の買収にも積極的に動いている。ベンチャー企業も次々に誕生している。

日本でもソフトバンクやドコモといった通信、ITからトヨタや日産といった自動車まで、大手企業を中心に各社が動きはじめているが、開発費ではアメリカに遠く及ばない。そのアメリカを猛烈な勢いで追いかけているのが中国だ。アメリカのようにベンチャー企業が次々に誕生し、百度、アリババ、テンセント(騰訊)といった3強もやはり買収や出資を強化している。

『投資界』(1月2日付)によると、2017年上半期の時点で中国にはAI関連企業が592社存在し、それは全世界の23%を占めるという。同年のAI分野におけるベンチャー融資の案件は150件にも及ぶ。

米調査会社「PitchBook」によると、世界のAI分野における融資額の高額ランキングの上位5社中、4社が中国系企業だった。中国はいま、政府の支援を後押しにAI分野への投資を加速させている。その技術は、昨今注目されている自動車の自動運転やIoT(モノのインターネット)にも活用されるなど、他の産業にも波及していくことになる。当然、製造業も例外ではない。

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◆世界のAI関連企業100社に中国企業8社が選定

その中国の過熱ぶりには、世界も注目している。米調査会社「CB Insights」は「AI 100 2018」を発表。世界中から将来有望なAI企業100社を選出した。その中で中国系の企業は8社が選ばれた。前年は4社だったので、倍増している。選ばれた8社は「今日頭条」「寒武紀」「商湯科技(Sense Time)」「優必選(UBTECH Robotics)」 「曠視科技」「出門問問(Mobvoi)」「英語流利説」「達闥科技」だ。

『中国新聞網』(17年12月15日付)によると、ニュースアグリゲーションアプリ「今日頭条」は、早くからAI技術を取り入れている。毎日100億ものニュース記事や動画の配信を、ユーザーにとって価値ある情報として届けることをAIが可能にしているのだ。

「寒武紀」は国産の次世代AIチップを開発している、今後の中国のAI産業にとってカギとなる企業である。

「曠視」は顔認証技術の開発を手がけ、最近、EMS(電子機器の受託製造サービス)世界最大手の鴻海精密工業から2000万米ドル(約22億2000万円)の出資を受けている。

「商湯科技」は画像認識を手がけているが、17年の動きは活発だった。アリババから15億元(約255億円)の出資を受けているほか、米クアルコムからも出資を受けている。また同年12月には、本田技研工業(ホンダ)の子会社・本田技術研究所と5年間の共同研究開発契約を締結した。AI技術を活用して自動運転技術を強化する狙いだという。

「優必選」は家庭用AIロボットを開発。テンセントが投資する融資ラウンドから資金を調達している。「出門問問」は言語識別の開発を手がけ、グーグルが出資しているという。

「英語流利説」は英語学習アプリを開発。「達闥科技」は、クラウドを活用したスマートディバイスなどを開発している。

こうして見てみると、8社のほとんどがすでに米中の大手企業から出資を受けていることがわかる。自社の事業やシステムに取り入れようと、将来性のあるベンチャー企業やスタートアップ企業を米中の大手企業が虎視眈眈と狙っているのだ。
AI分野における米中の覇権争いが、いままさに始まろうとしているのかもしれない。日本もこの2カ国に追随してほしいものである。

※本コラムは、Factory Network Asia Groupが発行するFNAマガジンチャイナ2018年2月号より転載しています。
http://www.factorynetasia.com/magazines/

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