п»ї 他社との提携に積極的に動くシャオミ 『中国のものづくり事情』第19回 | ニュース屋台村

他社との提携に積極的に動くシャオミ
『中国のものづくり事情』第19回

1月 29日 2019年 経済

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Factory Network Asia Group

タイと中国を中心に日系・ローカル製造業向けのビジネスマッチングサービスを提供。タイと中国でものづくり商談会の開催や製造業向けフリーペーパー「FNAマガジン」を発行している。

家電大手TCL集団は1月7日、スマートフォン大手の小米(シャオミ)から出資を受けたと発表した。シャオミは、TCLの株式の0・48%を取得。当日の株価から計算すると、約1億7千万元(約 27 億2千万円)になるという。それに先立ち、2018年 12 月29 日、両社は戦略的提携協議に署名している。スマートデバイスなどの研究開発やサプライチェーンなどの面で協力していく計画だ。

シャオミは、テレビなどの家電事業も展開しているが、そもそもTCLがシャオミの 32 インチテレビをOEM生産している。TCLによると、同社傘下の華星光電が生産する 32 インチ液晶画面は、18 年第3四半期の世界シェアが2位だったという。それには当然、シャオミも貢献しており、両社はもともと蜜月関係だったのだ。

中国では、スマートテレビの競争が激化している。中商産業研究院によると、18 年第1四半期の国内シェアは、創維数碼(スカイワース・デジタル)が 13.7%の1位で、シャオミは 12.8%の2位。以下海信集団(ハイセンス)、TCLと続くが、上位4社を合計しても過半数に届かない団子状態だ。2位と4位が組むことで、実質1位に躍り出たことになる(注=本文中の図表は、その該当するところを一度クリックすると「image」画面が出ますので、さらにそれをもう一度クリックすると、大きく鮮明なものを見ることができます)。

シャオミは、根幹事業であるスマホにおいても、積極的に他社への投資に動いている。美顔アプリ「美図秀秀」や「美粧相機(MakeupPlus)など、自撮り用写真編集アプリを開発する美図(メイトゥ)は18年 11 月 19 日、シャオミとの戦略的パートナーシップ締結に合意したと発表した。同社のアプリは人工知能(AI)や拡張現実(AR)を駆使した正確な顔認証を強みとする。日本をはじめとする海外でも展開し、月間アクティブユーザーは全世界で約3億5千万人に上るという(18 年6月 30 日現在)。この事業は全売上高の7割を占めるほどの規模だが、今回の提携は、そのハードウェア事業に関するものだ。

しかし、この提携は対等なものではない。発表によると、同社はメイトゥスマホのブランド名、画像技術などを全世界で使用する権利をシャオミに供与する。研究開発から生産、販売、広告宣伝まですべてをシャオミが担い、メイトゥは画像処理や美顔アルゴリズムなどの技術面のみをサポートする。提携は2段階にわたって進められ、第1段階は5年間とし、メイトゥスマホの販売における粗利の 10 %をメイトゥが受け取る。約束した金額に到達したら、シャオミが提携を継続するか否かを決定する。要するに、これはメイトゥブランドのライセンシングであり、実態は事業譲渡に近い。

それには、メイトゥの苦しい台所事情がある。同社の 18年上期の売上高は前年同期比5.9%減の20 億5千万元(約330億円)で、純損益は1億2700万元の赤字だった。通年でも赤字の見通しで、6期連続の赤字となる見込みだ。その元凶が、スマホ事業というわけだ。

一方、シャオミにとっても提携は渡りに船だった。同社の足元の業績は好調だ。18 年第3四半期(7~9月)の売上高は前年同期比 49,1%増の508億元で、純利益は同 17.3%増の 29 億元だった。米調査会社IDCによると、同期の世界のスマホ出荷台数は前年同期比6%減の3億5520万台だったが、そんな逆境下でもシャオミの出荷台数は同21.2%増の3400万台に達し、4位だった。ところが、中国市場だけは別だった。香港地区の市場調査会社、カウンターポイントテクノロジー・マーケットリサーチによると、同期の中国販売台数は 15 %減の1310万台で5位だった。

その原因は、消費意欲の強い女性からの支持率の低さにある。中国の調査会社・極光が 18 年9月に中国の主要メーカー4社を対象にユーザー調査を実施したところ、女性ユーザーの割合が最も大きかったのはOPPO(オッポ)で 54.9%。以下vivo(ビーボ)の 50.9%、華為(ファーウェイ)の 34.2%と続き、シャオミは 27.5%に過ぎなかった。シャオミには、圧倒的に女性ユーザーの方が多いメイトゥブランドを手に入れることで、女性への訴求を強化する狙いがあるのだ。

ファーウェイの孟晩舟最高財務責任者(CFO)の逮捕を受け、中国の一部ではiPhone を嫌厭(けんえん)し、逆にファーウェイを応援する意図で同社の製品へと切り替える動きがある。こうした状況下で、シャオミは上位との差を縮めることができるのだろうか。果たしてメイトゥとの提携が吉と出るか凶と出るか。メイトゥスマホの新商品の発売が待たれる。

※本コラムは、Factory Network Asia Groupが発行するFNAマガジンチャイナ2019年2月号より転載しています。
http://www.factorynetasia.com/magazines/

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