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炭素の恩恵
『教授Hの乾坤一冊』第5回

9月 13日 2013年 文化

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教授H

大学教授。専門は環境経済学および理論経済学。政府の審議会の委員なども務める。「知性は、セクシーだ」が口癖。趣味は鉄道(車両形式オタク)。

炭素と聞いて人は何を思い浮かべるだろうか。炭(すみ)、石炭、そしてダイヤモンド。最近では気候変動(地球温暖化)の原因である二酸化炭素がすぐに頭に浮かぶだろう。ダイヤモンドに縁の深い人はそう多くはないだろうけれど、炭や石炭そしてそれを燃やすことによって発生する二酸化炭素はほとんどの人々の生活に何らかのかかわりを持っている。ただし、それ以上思い浮かべようとしても、なかなか難しいのではないかと思う。

ところがよく考えてみると、炭素は人間と深いかかわりをもっていることがわかってくる。何せ私たちの身体を作っている有機物は、炭素と水素と酸素の結合したものだ。人間をはじめとする動物は、水と有機物を摂取することによってはじめて生きながらえることができる。
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食いものから恨みを買う時代
『読まずに死ねるかこの1冊』第4回

9月 13日 2013年 文化

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記者M

新聞社勤務。南米と東南アジアに駐在歴13年余。年間100冊を目標に「精選読書」を実行中。座右の銘は「壮志凌雲」。目下の趣味は食べ歩きウオーキング。

食べ物の話題となると、だれも話が止まらない。「食」に関しては古今東西、万巻の書がある。僕のような中年世代は、戦中あるいは戦後まもなく生まれた人に比べれば食料事情はずっと恵まれている。しかし、店もない、バスの便もない、電話もないといった、ないない尽くしの過疎の集落に生まれた者にとっては、「食」に対する飽くなき執念は年を取ってもいっこうに衰えないから、われながらさもしくもあり、哀しい。

この夏、年老いた母が住む瀬戸内海に近い兵庫県の最西端にある「超限界集落」に帰省した。途中、JR姫路駅で山陽本線に乗り換えたが、駅のホームにある「えきそば」に立ち寄るのが毎回の楽しみの一つである。
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シャンゼリゼ劇場100年
『タマリンのパリとはずがたり』第1回

9月 13日 2013年 文化

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玉木林太郎(たまき・りんたろう)

経済協力開発機構(OECD)事務次長。35年余りの公務員生活の後、3度目のパリ暮らしを楽しむ。一万数千枚のクラシックCDに囲まれ、毎夜安ワインを鑑賞するシニア・ワイン・アドバイザー。

今朝起きてみたらパリは秋になっていた。

ストラヴィンスキーは「ロシアの春は乱暴に、ある一時間で始まります。まるで大地が裂けて行くようです。少年時代、毎年最も素晴らしい出来事でした」と回想しているが、パリの春だって夏だってある日突然やって来て、ある日はっきりと次の季節にその座を譲る。
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経済とは何のためにあるのか
『教授Hの乾坤一冊』第4回

8月 30日 2013年 文化

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教授H

大学教授。専門は環境経済学および理論経済学。政府の審議会の委員なども務める。「知性は、セクシーだ」が口癖。趣味は鉄道(車両形式オタク)。

ご記憶の方も多いと思うが、昔「くたばれGNP」という言葉がはやった。大手新聞の連載記事のタイトルになり、人々の共感を大いに誘ったのだ。1970年のことである。当時日本経済は高度経済成長の末期にあたり、公害や働き過ぎ、所得格差などのさまざまな歪みがあらわになった時期であった。多くの人が、もうこれ以上経済成長を追い求めても幸せにはなれないのではないか、GNP(国民総生産)うんぬんで経済を語っても意味がないのではないか、と思い始めていたのだ。

あれから40年以上が経った。用語がGNPからGDP(国内総生産)に変わったものの、同じ問いは依然として生きている。GDPの成長を追い求めることによって人間は幸せになれるのだろうか。この問いにはっきり「ノー」と答えたのが、ジョン・デ・グラーフ/デイヴィッド・K・バトカーの『経済成長って、本当に必要なの?』(早川書房、2013年)である。
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だれも避けられぬ永訣の時
『読まずに死ねるかこの1冊』第3回

8月 23日 2013年 文化

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記者M

新聞社勤務。南米と東南アジアに駐在歴13年余。年間100冊を目標に「精選読書」を実行中。座右の銘は「壮志凌雲」。目下の趣味は食べ歩きウオーキング。

2年前の暮れ、大学時代の友人Aさんの「お別れ会」に出席した。

Aさんは同じクラスで、2人しかいなかった女子のうちの一人だった。いまなお携帯電話の電波が通じない不感地帯にある兵庫県の寒村で生まれ育った僕は入学当時、とにかく東京の生活に慣れるのが精いっぱいで、同じクラスの女子に声をかけるほどの気持ちの余裕はなかった。Aさんは遠い存在だった。ところが、偶然にもサークルも同じだったので教室の外で会ったり話したりする機会が増え、成績優秀だった彼女から試験前に出題されそうなところを教えてもらったり、ノートをコピーさせてもらったり、一方的に世話になった。
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なくならない経済的不平等
『教授Hの乾坤一冊』第3回

8月 15日 2013年 文化

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教授H

大学教授。専門は環境経済学および理論経済学。政府の審議会の委員なども務める。「知性は、セクシーだ」が口癖。趣味は鉄道(車両形式オタク)。

自由・平等・博愛はフランスの標語としてあまりにも有名である。もちろん、フランスでは自由・平等・博愛のどれも欠かせないという意味だろう。だが悩ましいことに、博愛は別として、自由と平等が手に手を取り合いながら仲良く歩んでいくかというとそうでもない。

たとえばアメリカは自由な国の象徴のようなものだが、必ずしも平等な社会とは言えない。確かに政治的には平等な社会かもしれないけれど、経済的には不平等が支配しているように思えるからだ。毎年10億円を超える給与をもらい退職時には100億円以上の退職金を手にする最高経営責任者(CEO)がいるかと思えば、教会の無料給食に列をなす人々も多数いる。プール付きの大邸宅に住む人がいるかと思うと、ホームレスとして街をさまよい歩く人もいる。そのギャップはどう見ても大きすぎる。
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日本を等身大に映し出す日系人の歴史
『読まずに死ねるかこの1冊』第2回

8月 08日 2013年 文化

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記者M

新聞社勤務。南米と東南アジアに駐在歴13年余。年間100冊を目標に「精選読書」を実行中。座右の銘は「壮志凌雲」。目下の趣味は食べ歩きウオーキング。

ふだん一般開放されている皇居東御苑には木々に覆われるように立つ平屋建ての休憩所が3カ所にあり、このうちの2カ所ではいつも天皇皇后両陛下の国内外の訪問の様子などを伝えるビデオが流されている。僕は休日、ウオーキングの途中に大手門に近い大手休憩所で休むことが多く、何種類かあるそのビデオはどれも繰り返し見ている。

見るたびにいつも目頭が熱くなるのが、いまの天皇陛下が皇太子時代の1978年、サンパウロ市内のパカエンブー競技場で行われた日本人移民70周年の記念式典にご夫妻で出席された時の日系人の熱烈な歓迎ぶりを伝えるビデオである。その数、実に8万人超。入植するためにブラジル各地に散った移民の家族らがスタンドで大歓声とともに日の丸の小旗を振って出迎えた。競技場全体が、歓喜で揺れ動いているように見える。
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思想は死んだのか
『教授Hの乾坤一冊』第2回

8月 02日 2013年 文化

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大学教授。専門は環境経済学および理論経済学。政府の審議会の委員なども務める。「知性は、セクシーだ」が口癖。趣味は鉄道(車両形式オタク)。

偉大な思想家がその後の信奉者たちによってどのように解釈され、継承されていったのか見るのは面白い。イエス・キリスト(仮に彼を思想家と呼ぶのが許されるのなら)は使徒たちに、そしてクリスチャンたちによって教祖化され、布教の対象となった。カール・マルクスはマルクス主義者たちによって学問化されると同時に政治思想化され、また闘争の武器となった。しかしもっと身近なところで考えると、吉本隆明が「吉本主義者」たちにどのように受け止められ、広められていったのかということの方がずっと面白いかもしれない。

幸か不幸か、私は「吉本教」の信者ではない。そういう人間から吉本教信者を見ると、興味深さとともにある種の違和感を覚える。クリスチャンがイエスをあがめるように、またマルキストたちがマルクスを崇拝するように、吉本教信者は吉本の一言一句を必死で読み取り、あがめるようにしてそれを人に伝えようとする。なぜなのか、これが不思議でならなかった。
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タックス・ヘイブンの悪魔
『教授Hの乾坤一冊』

7月 17日 2013年 文化

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教授H

大学教授。専門は環境経済学および理論経済学。政府の審議会の委員なども務める。「知性は、セクシーだ」が口癖。趣味は鉄道(車両形式オタク)。

最近、国税庁がケイマン諸島などのタックス・ヘイブン(租税回避地)に財産を持つ日本人のリストを大量に入手し、脱税などの事実がないか調査するというニュースがあった。いよいよ始まったかという思いがする。一部の富裕層や企業、スポーツ組織、そしてマフィア、テロリストまでもがタックス・ヘイブンを利用し、資金を運用している。今、日本でもようやく巨悪の実態が明らかにされようとしている。

タックス・ヘイブンの役割は、おもに2つある。第1の役割は、自分の国で運用すると課税されてしまう資金を、ケイマン諸島のような特定の地域で運用することによって非課税のままにしておくというものだ。これは節税目的なのだが、実は脱税と言ってもよい行為がほとんどなのだ。
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人は死ぬまでに何冊読めるか?
『読まずに死ねるかこの1冊』

7月 17日 2013年 文化

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記者M

新聞社勤務。南米と東南アジアに駐在歴13年余。年間100冊を目標に「精選読書」を実行中。座右の銘は「壮志凌雲」。目下の趣味は食べ歩きウオーキング。

人は死ぬまでに、いったい何冊の本を読めるだろうか。単純に計算してみよう。人生を100年とし、誕生から死没の瞬間まで識字年齢を無視して年間読書量を100冊と仮定すると、計1万冊になる。しかし、一生のうちに読める本は現実的には、せいぜい5000冊がいいとこだろう。

出版科学研究所のデータによると、2011年の新刊発行点数は7万5810点に上る。新刊発行点数は00年以降、7万台を維持しており当面、この数字に大きな変化はないとみられる。このデータで勘案すると、人が一生かかって読める本は、1年間の新刊発行点数の7%前後にしか満たないことになる。
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