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専攻科の思いや青年学級の伝統を受け継ぐために
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第154回

3月 01日 2019年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

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一般財団法人福祉教育支援協会専務理事・上席研究員(就労移行支援事業所シャロームネットワーク統括・ケアメディア推進プロジェクト代表)。コミュニケーション基礎研究会代表。精神科系ポータルサイト「サイキュレ」編集委員。一般社団法人日本不動産仲裁機構上席研究員、法定外見晴台学園大学客員教授。毎日新聞記者、ドイツ留学後、共同通信社記者、外信部、ソウル特派員など。退社後、経営コンサルタント、外務省の公益法人理事兼事務局長など経て現職。

◆かつてのコミュニティー

特別支援学校を卒業した方への学習の機会を切り開く活動をする中で、大先輩の教育者や福祉関係者から聞くお話は私自身の方向性を決める上で多くの示唆を含んでいる。その先人が歩んだ歴史を噛(か)みしめようとすると、その際に必ず出てくる言葉が「青年学級」である。

当事者の周辺か、長年福祉に携わった方でしか分からない、この言葉は私も福祉に携わる前には知らない言葉であった。青年学級の歴史を知った今、この歩みを再度検討しなければ今後の発展はない、とも考えている。

それは、かつて日本の7割以上の地方自治体にあった学習機会であり、学習が苦手な人、もしくは障がい者などで学習の機会がない人向けに機能していたコミュニティーであった。

◆全国1万以上の学級

青年学級は、1953年(昭和28年)に制定された青年振興法に基づいて各市町村が運営した勤労者や勤労しようとする人向けの学習機会であり、その内容は実生活に必要な知識や技能、一般教養であった。対象者は中学校を卒業し仕事に就いている若者や学習機会のない知的障がい者であり、昭和35年度の調査によれば、青年学級を開設している地方公共団体は2843か所あり、当時約3500近く(昭和36年度調査で3472)あった市町村のうち8割以上に存在していた。

青年学級数は1万1849学級あり、開設されたのは地域の公民館が4726、小学校が3994、中学校が2145で、公民館を拠点とした地域に根差した活動であった。しかし高校への進学率の高まりによって青年学級の参加者は減り、役割を終えたとして同法は1999年に廃止され、青年学級は基本的に消滅していった。

◆廃止で取り残された障がい者

ここで取り残されたのが、障がい者の学習機会である。

養護学校卒業後の障がい者が集い、仲間を形成する場所としても機能していたことから、長年続けてきた学習活動の存続に向けて地方自治体が独自で予算を計上し運営しているケースもある。

東京都では町田市の「町田市障がい者青年学級」、福生市の「青年学級にじのはらっぱ」、渋谷区の「えびす青年教室」、東村山市の「かめのこ学級」など、千葉県や埼玉県などにもあるが、地方には少ないのが実情である。

各自治体も多くの予算を計上してはいないものの、地方に存在しないのは予算化の難しさを反映しているからであろう。さらに青年学級の運営は有償ボランティアの存在が不可欠であるが、東京や名古屋など、携わっている幾人かの話によれば、「ボランティアの高齢化」「後継者不足」、つまり若者のボランティア参加が少ないことが課題として語られている。

◆地域に根差す、を考えて

私も法定外シャローム大学という形で「学習機会」の創生という意味では、同じ理念に立っていると思いながらも、それを現代に適合させつつ、体系立てて推進する方向を考え続けている。

地域に根差し、地域の人が若者からお年寄りまで幅広く交流できる学びの場である。さらに必要なのは、精神障がい者との交流である。青年学級が対象としたのは、知的障がい者がほとんどであっただろう。

当時、精神障がい者は日本の私宅監置法の伝統の中で、私宅から病院への「収容」され続け、欧州で主流となる地域移行を打ち出すのは、青年学級振興法の存在は必要なくなる時期である。精神障がい者が社会教育を受けられる素地がなかった歴史も振り返りながら、知的障がいや精神障がいを超えての学びのコミュニティーをどのように作っていくのか、青年学級と同様に地域に根差した活動になることを目標に考えていきたい。

 

■いよいよ始まる!2019年4月開学 法定外シャローム大学
http://www.shalom.wess.or.jp/

■精神科ポータルサイト「サイキュレ」コラム
http://psycure.jp/column/8/

■ケアメディア推進プロジェクト
http://www.caremedia.link

■引地達也のブログ
http://plaza.rakuten.co.jp/kesennumasen/

 

 

 

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