п»ї 安倍首相の「高転び」 長期政権で噴き出した腐臭 『山田厚史の地球は丸くない』第151回 | ニュース屋台村

安倍首相の「高転び」 長期政権で噴き出した腐臭
『山田厚史の地球は丸くない』第151回

11月 15日 2019年 経済

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山田厚史(やまだ・あつし)

ジャーナリスト。元朝日新聞編集委員。「ニュース屋台村」編集主幹。

内閣改造がケチのつき始めだった。憲政史上最長の内閣総理大臣となるのを目前に、内閣を一新したのが9月11日。台風15号が千葉県に甚大な被害をもたらしている時だった。安倍首相は自民党内を固めるため、入閣を待ち望む国会議員にポストを配分した。不満分子が生まれないよう目配りしたつもりが仇(あだ)となった。閣僚は世間の厳しい目にさらされる。任に耐えないお粗末な政治家が馬脚を現すのは時間の問題だった。

◆「桜を見る会」中止で透けて見えたもの

選挙区の不祥事が暴かれた2人の閣僚が辞任に追い込まれた。菅原一秀(すがわら・いっしゅう)経済産業大臣と河井克行法務大臣。「閣僚になってはいけない政治家が混じっている」と有権者が厳しい視線を注ぐ中、飛び出したのが萩生田光一(はぎうだ・こういち)文部科学大臣の「身の丈」発言だった。

萩生田氏は安倍側近としてのし上って来た政治家。官房副長官、幹事長代行など要職を務め、「安倍の本音」を代弁する政治家と注目されている。

大学入試改革で導入される民間試験には、現場から疑問の声が上がっていた。メディアや世間の関心は極めて薄かったが、萩生田発言が隠れていた問題をあぶり出した。

教育の機会均等を保障するのが文科相の役目である。こともあろうか、生まれながらの不平等を是認し、「与えられた環境で頑張れ」とばかり突き放した発言だった。

本人は釈明したものの、日頃の傲岸(ごうがん)な振る舞いや、本音丸出しの発言に、この内閣の正体が見えた、と感じた人は少なくなかった。

追い打ちをかけたのが、首相主催の「桜を見る会」だった。

共産党の機関紙が「安倍首相 後援会員ら数百人 税金でおもてなし」と報じたのが始まりだった。「桜の話を今頃しても」とタカをくくっていた首相周辺も、野党が束になって問題を追及し始めると、慌てた。「首相による権限の私物化」があまりにもわかりやすい。安倍後援会が地元有権者に配った「花見ツアー」の物証が次々と出てきた。官邸は追い込まれ、「来年の桜を見る会は中止」と表明した。

一連の騒動は、自民党の内部でも「長期政権のおごり」と指摘されている。

「桜を見る会」は首相主催ではあるが、政府の行事であり、内外の要人を招き、桜を愛でながら親睦を深める日本独特の催しである。政治家が縁ある人に声をかけることはあっても、例外的に目立たぬよう行うのが暗黙のルールだろう。その節度がわからない人が権力を持ってしまった。

首相は、広い新宿御苑(東京都新宿区)を駆け回り、ツアーに参加した数百人規模の後援会の人たちに笑顔を振りまき、記念撮影に収まった。

国会で答弁したように、「桜を見る会」への参加呼びかけや「観光ツアー」の手配など実務は事務所任せだろうが、「政府の行事」と「個人の選挙運動」の区別がつかない人物が首相となり、憲政史上例のない長期政権を築こうとしているのが今の日本だ。

◆王様のような権力を手に入れた「坊ちゃん」首相

権力を私物化していることにさえ、気がついていないのではないか。

祖父が首相を務めた政治家三代目。選挙区は山口県下関でも、生まれ育ったのは東京。家庭教師付きで大事に育てられ、形だけの留学をし、腰掛けで大企業に預けられ、外相・通産相だった父親の秘書をへて政界に出た。

世間を知らず、経験も足らないまま周囲に担がれて首相になった。森友学園、加計学園の疑惑でも、夫妻ともども公私の区別がつかない「坊ちゃん・嬢ちゃん」の振る舞いが目立った。

国会審議を見ていても、首相は都合の悪い質問にまともに答えず、閣僚席から品のないヤジを飛ばす。国会という「国権の最高機関」への敬意は感じられない。

党内に自分を脅かすライバルはいない。野党は恐れるに足らず。王様のような権力を手に入れた。お世話になった後援会の皆様をご招待するくらい、「主催者の役得」と思ったのかもしれない。

経済産業相だった菅原一秀氏は、秘書が香典を渡したことで辞任した。法相だった河井克行氏は、選挙カーのウグイス嬢に法定以上の謝礼を払ったことで辞めた。どちらも官邸の判断だった。

税金で後援会員を「供応」した首相は、開き直ることはできるのか。

たかが「桜を見る会」。予算5千万円ほどの「公私混同」だが、推して知るべし、である。

「社会的公正」の感覚が希薄な権力者のもとで、この国はどうなるのだろう。

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