世界は「無関係」でできている
『WHAT^』第40回

12月 22日 2021年 社会

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山口行治(やまぐち・ゆきはる)

o 株式会社エルデータサイエンス代表取締役。中学時代から西洋哲学と現代美術にはまり、テニス部の活動を楽しんだ。冒険的なエッジを好むけれども、居心地の良いニッチの発見もそれなりに得意とする。趣味は農作業。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。

筆者撮影

『巨匠とマルガリータ』(ミハイル・ブルガーコフ、池澤夏樹=個人編集 世界文学全集I-5、河出書房新社、2008年)は面白くて読むのを止められないぐらい、危険な小説だ。ローリング・ストーンズの「悪魔を憐れむ歌」にインスピレーションを与えたという逸話があるらしい。しかし、ブルガーコフがこの長編小説の原稿を書いていた時には、出版される見込みは全くなかった。

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表現・確率・生命
『WHAT^』第39回

11月 04日 2021年 社会

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山口行治(やまぐち・ゆきはる)

o 株式会社エルデータサイエンス代表取締役。中学時代から西洋哲学と現代美術にはまり、テニス部の活動を楽しんだ。冒険的なエッジを好むけれども、居心地の良いニッチの発見もそれなりに得意とする。趣味は農作業。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。

ⓒ福田徹、一般社団法人二科会写真部、2021、第69回展二科会写真部作品集、p387

写真が記録ではなく表現となったのは、いつごろからだろうか。筆者は『見ることの神話』(中原佑介 著/粟津潔 デザイン、フィルムアート社、1972年)に決定的な影響を受けた。写真家はシャッターを押す前に、何かを見ている。写真家には見えていないものが、写真に偶然写ることもあるだろう。しかも、写真家は作品となる写真を見ている。写真機がデジタルになっても、写真家の網膜や頭脳は、アナログであり、デジタルでもある。網膜の視神経や、脳の神経細胞は、個数を数えうるという意味でデジタルだ。しかし、ひとつの神経細胞では「見る」という機能を実現できない。多くの神経細胞がネットワークでつながり、神経細胞以外の細胞たちと共に生きているという意味ではアナログだろう。『見ることの神話』ではさらに、ひとりで見ることはできない、少なくとも表現としての「見ること」は、社会や社会制度に大きく依存し、制約され、表現の「場」の問題でもあることを明らかにした。物理学における「場」は、波動とともにありアナログな世界だった。量子力学によって「場」も量子化され、粒子の生成と消失を表現する「場」のデジタルな性質も明らかになった。写真が表現となったのは、写真を撮るのではなく、写真を見ることが意識されたときからと、暫定的に答えておこう。

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絵本の世界
『WHAT^』第38回

8月 23日 2021年 文化

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山口行治(やまぐち・ゆきはる)

o 株式会社エルデータサイエンス代表取締役。中学時代から西洋哲学と現代美術にはまり、テニス部の活動を楽しんだ。冒険的なエッジを好むけれども、居心地の良いニッチの発見もそれなりに得意とする。趣味は農作業。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。

「ブラチスラバ世界絵本原画展」
うらわ美術館、2021年7月10日~8月29日

「ブラチスラバ世界絵本原画展」(略称BIB=Biennial of Illustrations Bratislava)は、世界最大規模の絵本原画コンクールだ。チェコ共和国の首都はプラハだけれども、スロバキア共和国の首都がブラチスラバであることを知っている人は少ないだろう。筆者の年代では、チェコスロバキアという国名が懐かしい。チェコ共和国大使館(東京都渋谷区)を通りがかり、スロバキアの美術展のポスターが目にとまった。スロバキア共和国大使館(東京都港区)は近くにあるけれども、ずっと小さくて美術展のポスターを掲示するような余裕はない。プラハは映画づくりで有名で、スロバキアが絵本というのは、何か共通する文化の底流があるのだろう。政治は別として、文化は人びとをつなぎ、未来をつくる。

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意識は切断する道具
『WHAT^』第37回

4月 28日 2021年 社会

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山口行治(やまぐち・ゆきはる)

o 株式会社エルデータサイエンス代表取締役。中学時代から西洋哲学と現代美術にはまり、テニス部の活動を楽しんだ。冒険的なエッジを好むけれども、居心地の良いニッチの発見もそれなりに得意とする。趣味は農作業。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。

「マーク・マンダース - マーク・マンダースの不在」
東京都現代美術館、2021年4月

東京都現代美術館は、2021年4月25日から東京都の緊急事態措置として休館となった。筆者がその前々日に入館した時、企画展のタイトルにふさわしく、閑散としていた。オランダ生まれ(1968年)、ベルギー在住のマーク・マンダースの作品にとって、鑑賞者の存在は不必要であっても、自分自身と鑑賞者の意識が無いと、作品として成立しないと思われる。マーク・マンダースの作品は、建築物や身体などの3次元的な存在を、意識で切断する。

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