記者M
新聞社勤務。南米と東南アジアに駐在歴13年余。年間100冊を目標に「精選読書」を実行中。座右の銘は「壮志凌雲」。目下の趣味は食べ歩きウオーキング。
タイの首都バンコクの混乱が止まらない。日本の新聞やテレビを見ていると、「常態化」「日常化」などという言葉が据わりのいい表現になってしまった。政治、経済、社会の領域にとどまらず、現地日本人社会にまで影響が及ぶ国際ニュースがしばらくなかった特派員たちには、まさに恵みともいえる。ただ、その報道ぶりを見ると、どれもほぼ同じ内容で深く掘り下げたものはなかなか見当たらない。「タコつぼの中にいると周りが見えなくなる」といわれるが、混乱のさなかにある現場にいると、一触即発の危機に神経過敏になるのか、いま起こっていることだけに目をとらわれがちで、揚げ句の果てには「たら」「れば」で危機感をさらにあおり、大局観が失われてしまうようだ。
かつて、同じような現場で同じような体験をした者として、「さもありなん」と思いつつも、いまの日本での報道ぶりを見ていて、タイに住んだことがある者ならおそらくはだれもが感じているだろう「物足りなさ」「食い足りなさ」、そして「違和感」を、自戒とともに感じている。同じ隊列の末端にいる者として「天に唾するもの」と言われかねないが、最近のバンコクの混乱に関する日本での報道ぶりについての違和感の正体を突き詰めてみたい。
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