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サムスンが自動車用リチウムイオン電池を生産―陜西省西安市
『中国のものづくり事情』第6回

4月 06日 2017年 経済

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Factory Network Asia Group

タイと中国を中心に日系・ローカル製造業向けのビジネスマッチングサービスを提供。タイと中国でものづくり商談会の開催や製造業向けフリーペーパー「FNAマガジン」を発行している。

2016年を振り返ってみると、東芝にはじまりタカタ、三菱自動車、スズキと、日本経済を支えてきた電機、自動車での不祥事が目立った1年だった。しかしそれは、日本企業だけではない。スマートフォン「Galaxy Note7」の発火や洗濯機の異常により、サムスン電子も世界を騒がせ、危機に陥っている。

販売中止にまで追い込まれたNote7 の発火の原因は、本稿執筆時点(16年11 月13 日)では明らかになっていないが、リチウムイオン電池に原因があるとの見方は強く、報道を受け、サプライヤーの1社であるサムスン電子傘下のサムスンSDI の株価が急落するなど、マーケットは敏感に反応している。

そのサムスンSDI は、陝西省西安市に生産拠点を構えている。西安市については、サムスン電子がNAND 型フラッシュメモリを生産していることは、本誌「FNAマガジンチャイナ」14年10 月号でお伝えしているが、サムスンSDI は15 年10 月、電気自動車(EV)用電池を生産する工場を同市高新産業開発区に完成させ、自動車用リチウムイオン電池の生産を開始した。「三星環新(西安)動力電池有限公司」の生産能力は、年間EV が約4万台分、プラグインハイブリッド車(PHEV)が15 万台分に達するという。

しかし、今回の発火問題が暗い影を落としている。スマホとEV では、大きさも構造も異なるが、EV用のバッテリーが発火しない理由はない。比亜迪(BYD)の乗用車は、これまでたびたび発火事故を起こしている。中国国内のため、それほど大騒ぎにはなっていないが、グローバルでシェアが高いサムスンは、そうもいかない。

三星環新(西安)の電池については、江淮汽車(安徽省安進市)がEV に採用していたが、すでに生産を停止している。国や地方政府からの補助金を受けられるリストに三星環新(西安)が入っていないからだ。今回の問題によって、そのリストに入ることはいっそう難しくなったろう。EV の生産はコストが高いため、補助金を受けられないということは、大きな後ろ盾を失うことになる。

三星環新(西安)はほかにも、上海汽車「栄威e950」や東風汽車の一部車種、BMW「i3」「i8」、フォルクスワーゲンやアウディなど多くの大手自動車メーカーに採用されているため、今後、その影響が広がる可能性もある。

サムスンの失速は、日系メーカーにとってはチャンスになるかもしれないが、これは対岸の火事ではない。今回の事件は、外資企業はひとつのエラーが命取りになりかねないことを改めて示している。

◆BYD にとって第2の創業の地

西安には、ブラザー工業や三菱電機、日立製作所、ダイキンなどが古くから拠点を構えているが、近年、日系企業の進出はあまり多くない。一方、韓国系は、サスムングループだけでなく投資意欲が旺盛だ。インドの自動車大手・マヒンドラ傘下の韓国・双竜(サンヨン)自動車は16年10 月11 日、陝西汽車グループと合弁会社を設立すると発表した。西安経済技術開発区にエンジン生産ラインを備えた完成車生産工場を建設し、スポーツ用多目的車(SUV)を生産する計画。サンヨン自動車にとって、初の海外拠点となる。

西安は電子や電機だけでなく、自動車産業も栄えている。もともとは電池メーカーだったBYD が自動車事業に参入したのは、西安を拠点とする秦川汽車を買収したことによる。同社にとって、第2の創業の地といっても過言ではないだろう。14 年には50 億元(約800 億円)を投じ、第2工場を建設。ロボットを多数取り入れた高度な自動化生産を実現している。同地ではEV やPHV などの新エネルギー車の生産に注力しており、16 年の生産量は10 万台に達する見込みだという。

中国政府の「一帯一路」戦略でも注目される西安。将来が有望な内陸都市のひとつである。

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参考資料
『東亜日報』『ハギョレ』『新能源汽車網』、各社ホームページなど

※本コラムは、Factory Network Asia Groupが発行するFNAマガジンチャイナ 2016年12月号より転載しています。
http://www.factorynetasia.com/magazines/

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