山本謙三(やまもと・けんぞう)
オフィス金融経済イニシアティブ代表。元NTTデータ経営研究所取締役会長、元日本銀行理事。日本銀行では、金融政策、金融市場などを担当したのち、2008年から4年間、金融システム、決済の担当理事として、リーマン・ショック、欧州債務危機、東日本大震災への対応に当たる。著書に『異次元緩和の罪と罰』(講談社現代新書2753、2024年9月)。
最近、日本銀行が主張する「基調的な物価上昇率」に対し、多くの疑問の声が聞かれるようになった。日銀は「『基調的な物価上昇率』がまだ物価目標に達していない」と主張するが、実際の消費者物価は3年以上にわたり2%を超える高騰が続いている。このため、「日銀には国民生活の実態が見えていないのではないか」との声である。
これまで日銀は、「基調的な物価上昇率」の定義を状況に応じて変えてきた。さらに、最近はその定義を必ずしも明確にしていない。
にもかかわらず、政策金利を低水準に据え置く最大の根拠を「基調的な物価上昇率」の動きとする。これでは、国民との対話は成り立たない。 記事全文>>