п»ї 原価低減の取り組み(その1)工程の流れ化『ものづくり一徹本舗』第6回 | ニュース屋台村

原価低減の取り組み(その1)工程の流れ化
『ものづくり一徹本舗』第6回

11月 22日 2013年 経済

LINEで送る
Pocket

迎洋一郎(むかえ・よういちろう)

1941年生まれ、60年豊田合成入社。95年豊田合成タイランド社長。2000年一栄工業社長。現在中国、タイで工場コンサルタントを務める。自称「ものづくり研究家」。

トヨタ生産方式は「徹底的なムダ、ムリ、ムラの顕在化とその改善を行い、原価を下げること」。これを行ううえでの2本の柱は「ジャストインタイム」と「自働化」であると、故・大野耐一先生(トヨタ自動車元副社長)から教えられた。

自働化とは「ニンベンのついた自動化」などとも呼ばれ、作業者が行う標準作業を妨害しないように、作りすぎ・加工しすぎ・加工不良などの不都合を「自動的に食い止める」ためのシステムを備えるものを指す。ジャストインタイムとは、必要な物を必要な量だけ必要な時につくるということである。これを具現化するための基本原則として、次のような進め方を紹介したい。

◆加工工程は「水の流れるが如く」

改善を進めるにあたり、まずやるべきことは、淀(よど)み、屈曲、逆流、氾濫(はんらん)のない流れを作り出すことである。加工工程で言えば、淀みとは、停滞つまり、商品として完成していないもの(原材料)と製品の中間にある仕掛り在庫のことで、これをいかに少なくするかが重要である。

また、屈曲、逆流とは工程間が複雑に入り乱れて物が入るなどして運搬ロスを繰り返している状態を言い、氾濫とは、あちこちに仕掛り在庫が山積している状態を指す。

◆工程の具体的な改善例

次の図は、ある自動車部品製造工場のゴムホース加工最終工程である。この工場では、ゴムホースは原材料のゴムを練り合わせ、押し出し式の成形器でホースの形状を作った後、これを切断して作成する。

ここで述べる工程は、ホースを仮に切断した後の工程であり、最終的に出荷するまでの工程である。なお、ゴムホースの製造になじみのない方は、以下の用語説明を参照されたい。
※線引き=ゴムホースを正確な長さに計測し、その場所にチョークで線を引く
※裁断=このゴムホースを治具に収め、この治具ごと回転刃物を通すことにより無駄な部分を切断する
※マーク印字=一つの製品ごとに製造番号、年月日、会社名などを印字する
※組み付け=一部の製品についてはファスナーなどの金具の取り付けを行う
また、下にある「◎」「○」「△」などは異なった種類の中間仕掛り在庫を表す。
この工場では1日約9500本を2交代で、それぞれ11人の作業者を配置して加工している。

加工ラインは全長約25メートル、幅約5メートル。「裁断1」から幅7センチのコンベヤーも付いているが、停止状態で仕掛品を載せておく台にもなっている。

加工対象となる製品は毎日70~80点あるが、加工形態は3種類に分別される。加工ラインは最初1本であったが量が増えたため、隣に線引き、裁断、マーク印字機を増設している。

生産仕掛りは1日の予定表を線引き作業者に渡し、順番は指定していないので、線引き裁断スピードで加工し、後工程に押し込んでいる。その結果、後工程が追いつかず、中間仕掛りがあちこちに山積みとなってしまっている。

◆「工程の流れ化」ができていない工場の問題点

実際に現場ではどのような問題化が発生しているのであろうか? 以下はいくつかの実例である。
・何が何本どこに在庫されているのか調べないとわからないし、いつ完成するのかも判断つかず作業者まかせ
・製品の収納箱は専用化できず、近くにある箱を適当に使うため類似品の取り違えをやってしまう
・先入れ先出し管理が難しく、時々検査工程飛びをやり、品質問題を起こす
・緊急必需品探し、加工工程戻しの余分な仕事が増えている
・空箱がなくなると、線引き、裁断は作業を停止し、トイレ休憩などをする
・乱流なため、不定期に発生する非サイクリックな作業が多くなり標準化が出来ない。また、何人で何時間あれば予定が完了するのか計算できないため、多めに安全な人員配置をやってしまう

◆まずは加工種類別に分けてみよう

早速、工程の流れ化に着手してみよう。
(1)「工程の流れ化」を行うためには全製品を加工種類別別に分類し、対象となる製品の数量を算出する。
A 白線+裁断+検査+梱包=5035本
B 白線+裁断+検査+印字+梱包=4370本
C 白線+裁断+検査+印字+組み付け+梱包=95本
(2)加工工程を設計する。
・Aは加工が単純で、量も53%と半分を占めるので独立1ラインにする
・Bは印字が必要で、加工時間も長いため2台でR側(右側)L側(左側)印字に分けて流す
・Cは量が1%と少なく、しかも加工時間は前工程より数十倍と長いので、印字までをBのラインで流してサブラインで組み付け、梱包を行う
・工程間の距離は極力短くして、ローラーコロコン(ローラー式の手押しコンベヤー)で連結する。ローラーコロコンの長さは、製品2箱まで並ぶ距離とする

実際にこの例においては、中間在庫が著しく減少するとともに生産性は2倍になった。具体的には、11人の2交代制で行っていた作業が1シフトで完了するようになったのである。

次回は、加工工程をどのように設計するかを具体的に考えていきたい。

コメント

コメントを残す