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アフリカについて考えてみる
日本人にとって遠い国々
『バンカーの目のつけどころ 気のつけどころ』第252回

10月 20日 2023年 経済

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小澤 仁(おざわ・ひとし)

oバンコック銀行執行副頭取。1977年東海銀行入行。2003年より現職。米国在住10年。バンコク在住25年。趣味:クラシック歌唱、サックス・フルート演奏。

アフリカは日本人にとって「最もなじみのない地域」である。かくいう私もアフリカには足を踏み入れたことはなく、国名を言われてもその国がどこに位置するかさえ知らない。一方、アフリカは「最後のフロンティア」と言われて久しい。現生人類であるホモサピエンス発祥の地で、我々にとって最も由緒ある地域であるアフリカ。今回はそんな遠くて近い国であるアフリカについて考えてみたい。なお、今回のレポートではヨーロッパ、中東経済圏に属し、経済水準が大きく異なる北アフリカ6か国(アルジェリア、エジプト、リビア、モロッコ、ジブチ、チュニジア)を除いたサブサハラアフリカ48か国の地域について考察する。

1.サブサハラアフリカとは

(1) 概況

➀人口は2000年時点で6.7億人、全世界の11%を占める。2021年までに約1.8倍に増加し、人口11.8億人、全世界の15%と東アジア、南アジアに次ぐ規模である。また面積は世界全体の18%の規模であり、ヨーロッパ、東アジアに次ぐ大きさを持つ地域である。

➁アフリカ48か国のGDP(国内総生産)は、2000年に4230億ドルと地域別で最も少ない。2021年は1兆9290億ドルであり、平均4%と地域別で上位の成長率。一方、最大の北アメリカとは13倍の差と、依然発展が遅れている。同様に1人当たりGDPは他地域と比べ発展が遅れており、2021年は北アメリカと42倍の差がある。また1日2.15ドル以下で暮らす絶対的貧困率が最も高い。経済成長に伴い2018年までに35.4%まで減少したが、他地域と比べ依然貧困率が高い状態が続く。

➂医療水準が他地域に比べ低いアフリカの平均寿命は2000年に50.5歳、2021年には62.0歳と他地域と比べ最も短い。

(2) アフリカの歴史

2 民族一覧

現生人類であるホモサピエンスは約30万年前にアフリカで誕生したといわれている。およそ5万年前からホモサピエンスはアフリカから移動を始める。アフリカの民族はその際に残った一つの人種と考えられているが、上記のように四つの民族(人種)に分類される。度重なる環境変化により民族の移動が繰り返された。民族の移動が収束すると各地域で社会階層、国家が形成された。

表3 アフリカ歴史年表

➀15世紀以降ポルトガルを筆頭に、17世紀からはイギリスを中心に、一方的な奴隷貿易が本格化した。背景としてヨーロッパでの産業化に伴い人的資源として奴隷を求めるようになった。

➁奴隷数は2000万人ほど、大多数が男性であったため、人的・経済的な損失となった。人種として劣等的という意識が広まり、列強国が植民地支配、白人優位政策を正当化する要因となった。

➂19世紀初頭に奴隷禁止令が出されるまで奴隷貿易は続けられた。

➃列強国間の争いにより、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ポルトガル、ベルギーの7か国により植民地としてアフリカが分割される。

➄イギリスはエジプトから南アフリカにかけて縦断的に、フランスは北、西アフリカから横断的に植民地を拡大し、航路、資源の確保を目指した。

➅比較的国力が劣る国はイギリス、フランスが支配していない地域の穴を埋める形で支配。

➆植民地で参政権は与えられておらず、ヨーロッパ列強国が原材料を輸入し、製品を売りつける市場として活用された。統治の際に一方的な国境設定や一部の民族を優遇した政策がとられた。植民地支配は現在の経済の基礎や緊張関係を作り上げるきっかけとなった。

(3) サブサハラアフリカの大国について
表4 アフリカ大国一覧

➀48か国、11.7億人の人口のうち、ナイジェリア、エチオピアは人口が1億人を超える規模を持つ。

➁ナイジェリア、南アフリカのGDPはそれぞれ全体の20%と、アフリカで特出した規模を持つ。

➂経済規模、人口が上位に位置し、民族起源、地域が異なるナイジェリア、南アフリカ、エチオピアはアフリカの現状の理解に役立つと考えるため、今回のレポートではこの3か国について考察する。

2.ナイジェリア

(1)概要

5 各国概要

➀ナイジェリアはGDP世界30位、人口は世界7位の規模を持つが、1人当たりGDPは世界137位とGDPに比べ差がある。

➁イギリスによる植民地支配を受ける。民族を考慮せず国境が引かれたため、北部ハウサ族、南西ヨルバ族、南東イボ族を中心に250以上の民族が混在。宗教は北部にイスラム教、南部にキリスト教と分かれ、北部ではテロ組織のボコハラムがキリスト教を標的として活動する。南西部ではオドゥーア人民会議がヨルバ族の民族自決を目的に活動しており、宗教、民族間の対立が起こる。

➂植民地時代に開発された原油は輸出産品として現在まで活用されている。石油産出地域の南部ではニジュールデルタ解放運動の残党組織が石油収入の公正な分配を求め、石油関連施設の攻撃、石油の盗難などを繰り返しおこない、経済対立が起こっている。

(2)GDPの生産・支出分析

表6 ナイジェリアのGDP生産、支出推移

➀GDPは2000年から2013年に年率45%と急拡大。一方、2021年までは原油価格の下落により年率-2%減少。

➁GDPに占める輸出額は2000年の36%から2010年に26%と減少。2021年には11%に減少し、GDP減少の主因となった。

➂生産面では全体の産業の内、石油が大半を占める鉱業割合が減少。情報、建設業の拡大は経済成長に貢献。輸入の急拡大に伴い一時製造業の割合が相対的に減少。

表 7 ナイジェリアの民間消費推移

➃支出面では、2000年で41%であった民間消費が、2021年は62%に拡大し経済成長に貢献。
2000年から2010年は1人当たり消費が年率52%で増加したことにより民間消費は拡大。ところが2010年から2021年は1人当たり消費は-2%減少したが、人口は年率3%増加したことに支えられ民間消費は横ばいとなった。

(3)貿易、対外債務推移

表 8  ナイジェリアの貿易収支、対外債務推移

➀輸出額は2000年から2010年までに4倍に拡大。2010年以降、輸出額は大幅に減少し、2021年は2010年に比べ6割の水準。

➁輸出品のうち、石油関連割合は2000年96%、2010年91%、2021年88%と高く原油価格の推移は輸出額に影響。原油価格は2000年から2010年に4倍に上昇。2010年から2021年は8割に下落。
表 9 ナイジェリアの石油精製施設稼働率推移

➂原油は石油収入の公正な配分を求めた石油施設の破壊活動により生産量が減少。

➃精製石油は製油所の整備不足により稼働率が低下し、生産量が減少。2021年は原油価格が上昇したものの、輸出額は横ばいで推移しており、精製石油生産量の減少は輸出量減少につながっていると考える。

➄輸出額の拡大とともに輸入額を拡大させてきたが、2010年以降石油価格の下落により輸出額が減少したことからも、輸入額を補えなくなり貿易赤字となる。

➅2000年から2010年は貿易収支が黒字のため対外債務残高は減少。2010年以降は貿易収支赤字となる。貿易黒字によって補われていたサービス収支の赤字が重なり対外債務残高は急速に悪化。

(4)他地域石油産油国比較
ナイジェリアは原油価格の推移により貿易収支が大きく影響を受けている。他地域の原油産出国と比較し貿易状況について確認する。

表 10 ナイジェリアと他地域産油国比較表

➀ナイジェリアのGDP成長率は2000年から2010年に年率39%と他国に比べ急成長を遂げた。一方、2010年から2021は年率2%でこの間、ナイジェリアの経済成長の減速が著しい。

➁輸出額では2000年から2010年は各国とも増加。2010年から2021年はナイジェリアのみ減少。

➂他国の精製石油生産割合が増加する中、ナイジェリアは精製設備の稼働率低下により減少。

➃石油関連輸出割合ではナイジェリアは他国に比べ高く、石油産業以外の産業が育っていない。また精製石油の生産が低迷していることからも石油価格の下落時に輸出額は大きく減少。

➄為替レートは、他国の通貨が横ばいで推移しているが、ナイジェリアは貿易収支の悪化により切り下げ。貿易収支の悪化継続によりドルペッグ制が維持できなくなり2017年変動為替相場へ移行。通貨下落は輸入に依存するナイジェリアにとって貿易収支の悪化につながっていると考える。

3.南アフリカ
(1)概要

表5 各国概要

➀アフリカ第二の経済大国。1人当たりGDPは上位中所得国の水準(世界銀行基準4096~1万2695ドル)であり、経済発展が進んでいる。アフリカでコンテナ取扱貨物量1位の港湾を持ち、外国人居住者割合は5.8%とナイジェリア0.7%、エチオピア1.1%に比べ多く、アフリカの進出、物流拠点の役割を担う。

➁植民地時代にイギリスの支配を受ける。生産量で世界1位のプラチナ、世界7位のダイヤモンド、世界10位の金と鉱物資源が豊富であることに加え大西洋・インド洋への航路確保の拠点として支配された。植民地時代からの白人優位の政策は現在に続く貧富の格差の要因となった。

➂主要産業は金融業、鉱業、製造業であり、サブサハラアフリカ唯一の自動車生産国である。

(2)GDPの生産・支出分析

表11 南アフリカのGDP生産、支出推移

➀ GDPは2000年から2010年は右肩上がりで増加。2010年から2021年では鉱業、金融業の低迷によりGDPは減少傾向で推移。2020年のコロナの際の金価格の急上昇はGDPの拡大に貢献。

表12 南アフリカの金融業、鉱業推移

➁鉱業生産額は主要鉱物である金、プラチナ価格の推移に影響を受ける。2000年から2010年は金、プラチナの価格上昇により成長。2010年以降プラチナ価格は下落傾向。プラチナは産業用、主にディーゼル自動車の排ガスの触媒として使用され、2010年以降、環境意識の高まりによるディーゼル車の販売低迷は、プラチナ価格に影響。一方、2020年のコロナ禍による景気悪化は金価格を上昇させ鉱業の成長に貢献。鉱業、金融業は相関して推移しており、GDPの推移に影響を与えている。

表13 南アフリカの民間消費推移要因

➂失業率は民間消費の推移に影響。2021年の統計では失業率は白人11%に対し、黒人38%。失業者の属性では若年層(15-24歳)の76%、高校未入学の50%が失業。景気悪化の際、教育、就労経験のない黒人層に失業をもたらしており、差別政策の影響が現在も続いていることが窺える。人口の80%を占める黒人の失業率の上昇は民間消費に影響を与えたと考える。高い失業率を背景に南アフリカのジニ係数は世界で最も高く、貧富の格差が著しい。

表14 南アフリカの金融機関時価総額、上場企業時価総額

➃南アフリカは経済規模の近い上記の国に比べ金融機関の時価総額が大きい。南アフリカの金融機関はリテール、ホールセールに加え、投資銀行業務を担い融資、株式と業務範囲が広い。

➄南アフリカは経済規模の近い上記2国と比べ上場企業時価総額が大きく株式取引が活発。

表15 2002年、2023年の南アフリカ時価総額上位企業

➅南アフリカの時価総額上位10社ではデータのある2002年には上位10社中5社が、2023年では3社が鉱業であり、鉱業は株式取引の活性化に貢献してきた。活発な株式取引に支えられ、金融業は鉱業と共に成長してきたと考える。

表16 南アフリカの主要鉱山企業及び出資企業

➆南アフリカの主要鉱山会社は植民地時代に首相であったセシルローズ氏が設立したゴールドフィールズや同じ時期にユダヤ系ドイツ人が設立したアングロアメリカンから分社化された鉱山会社が中心である。主要鉱山会社の株主には、南アフリカの国営運用会社であるPIC、南アフリカの資産家であるアラングレイ氏の資産運用会社などに加え、鉱物の資産価値上昇を期待したアメリカ、イギリスなど他国の資産運用会社が名を連ねている。
(3)対外債務推移
表17 南アフリカの財政収支及び支出一覧

➀鉱物輸出が中心の南アフリカでは鉱物価格の上昇により貿易収支は黒字で推移してきた。

➁一方、慢性的な財政赤字は、対外債務を増加させた。前述の通り南アフリカでは失業率が高く、ジニ係数は世界1位と貧富の格差が著しい。政府は人種による教育機会、住居環境の格差改善を目的とし財政支出を行ってきた。

③債務の増加は利息負担の増加につながり、財政悪化につながっている。

(4)金産出国比較
南アフリカでは貿易収支の黒字にもかかわらず、対外債務は増加傾向にある。他地域の資源国と比較し、対外債務の増加要因を確認する。

表18 南アフリカと他地域金産出国比較

 

➀南アフリカのGDP成長率は2000年から2010年は年率16%であり他金産出国と同様に成長。2010年から2021年のGDPは横ばいで推移。オーストラリア、ペルーでもGDPは成長したが成長率は各国とも大きく低下。

➁輸出額は各国とも右肩上がりで成長。2000年から2010年は金を含めた鉱物価格全体の上昇により南アフリカの輸出額は年率換算17%と他国同様に増加。2010年から2021年では金価格などの鉱物価格が一時下落したことで輸出額の成長率は南アフリカ3%と低下した。

➂各国とも鉱物輸出割合が常に50%を超えており、金を含む鉱物価格の推移は輸出額に影響。

➃各国とも貿易収支が黒字の際にも、経常収支の赤字がみられる。対外債務残高が増加しており、他国への利払い増加は第一次所得収支の赤字となり、経常収支の赤字につながっていると考える。

➄経常収支の赤字は他国への資本流出をもたらし、対外債務増加の要因になっていると考える。
4.エチオピア
(1)概要

表5 各国概要

 

➀植民地時代アフリカの中で独立を保った国の一つである。イタリアがエチオピアの植民地化を目指す中、フランスの軍事支援により侵略を防いだ。植民地時代に産業が開発されなかったため、農業を中心とした産業形態が現在まで続いた。

➁現在エチオピアの1人当たりGDPは944ドルと低所得国(世銀基準1085ドル以下)に分類。

➂内政では2000年ごろ、エリトリアと国境の見解の食い違いにより、紛争が発生。2018年オモロ人初のアビィ首相が就任。社会主義政権崩壊以降、政府要職はティグレ人が担ってきたが、アビィ首相がティグレ人を要職から解任した際にティグレ州で政府軍との衝突が発生。

(2)GDPの生産・支出分析

表19 エチオピアのGDPの生産・支出分析

 

➀2000年から2010年までは年率24%成長。2010年から2021年には年率23%と基本的には右肩上がりで成長。

➁主要産業である農業はGDPの4割を占めており、農業の推移はGDPに影響。2010年、2011年には東アフリカ地域で広範囲に発生した干ばつの影響により、2018年にはエチオピア北部のティグレでの民族紛争が発生し、農業の生産が停滞したことによりGDPが減少。

➂建設、小売、不動産などの成長により、主要産業である農業割合は相対的に減少。

表20 エチオピアの民間消費推移

➃支出面は常に7割程が民間消費であり、民間消費の推移は経済成長に大きく影響。1人当たり消費額の増加は民間消費の拡大に貢献。固定資本形成(投資)の拡大は民間消費とともに著しく成長しており、エチオピアへの投資は経済成長の一因となっている。

(3)貿易

表21 エチオピアの貿易品目

➀輸出額は2000年から2010年に2.7倍、2010年から2021年に2.7倍に増加。

表22 エチオピアの輸出額、コーヒー生産量推移

➁主要輸出産品はコーヒー豆、油種などの農産物が2000年67%、2010年63%、2021年59%と中心。コーヒー豆価格の上昇は輸出額の増加に貢献。2000年から2010年では生産国での消費量の増加も加わり、生産量を消費量が上回っていたことからも価格が上昇。2010年から2021年はコーヒー豆の生産量が消費量を上回り、コーヒー豆の価格は下落。

➂金は2021年時点で世界36番目の生産量であり、金を含む鉱物輸出が2000年の5%から2021年の20%と拡大し、輸出額の増加に貢献。

➃輸入額は2000年から2010年に4.4倍、2010年から2021年に1.5倍に成長。輸出よりも輸入拡大ペースが速く慢性的な貿易赤字である。主要輸入品目は自動車、ガスタービンなどの機械類、小麦、米などの食品に加え、医薬品などの消費財を中心に幅広い。自国の製造業が育っていないエチオピアでは輸入により自国消費を補っていると考える。

(4)対外債務推移
表23  エチオピアの対外債務推移表

 

➀輸入に依存した貿易構造は赤字の要因となり、対外債務は増加。

➁世銀基準で低所得国であることに加え、重債務貧困国(HIPCs)に位置づけられている。他国からの返済を伴わない無償援助である第二次所得収支に加え、HIPCイニシアティブによる2004年以降の債務免除や2021年のコロナの際の債務免除などが度々おこなわれている。他国の援助により経済を維持していると考える。

(5)他地域農業国比較
エチオピアでは製造業の発展が進んでおらず、対外債務増加の要因となっている。他地域の農業国であり、エチオピアと比べ製造業が発展している国と比較する。

表24  エチオピアと他地域農業国比較表

 

➀エチオピアのGDPは2000年から2010年は年率24%の成長。2010年から2021では年率23%と他国に比べ成長を遂げた。

➁輸出成長率は2010年から2021年では農業輸出割合の高いエチオピア、アルゼンチンで減速。一方、製造業が成長しているベトナムでは輸出成長率が継続して成長。

➂アルゼンチンは、輸出成長率は高くないが、輸入成長率が他国と比べ低い。製造業が上記3か国で比較的発展しており、輸入の増加が抑えられていると考える。

➃エチオピアの対外債務は2000年から2010年は債務免除により増加率は抑えられていたものの、2010年から2021年では製造業が進んでいる他国と比べ貿易赤字が継続したことからも、この間の対外債務の悪化が著しい。

5.まとめ
(1) アフリカでは人口が他地域に比べ著しく増加し、アジア地域に次ぐ人口規模。一方、経済は他地域に比べ発展が最も遅れ、貧困割合、平均寿命の改善も遅れている。
(2) 植民地ではヨーロッパ列強の原材料調達、製品販売の場として活用された。国境が恣意(しい)的に引かれたことは経済、民族の緊張関係が生まれるきっかけとなった。
(3) アフリカでGDP、人口規模が最大のナイジェリアについて

➀ナイジェリアは2000年から2013年までは石油価格の上昇に伴いGDPは年率45%と急拡大した。一方、2014年以降は原油価格の下落によりGDPは-2%と減少。GDPに占める輸出額割合は2000年に36%であったが、2021年には11%まで減少したことはGDP減少の主因となった。

➁石油輸出依存度が高く、石油の価格下落は輸出額に影響を与える。石油価格の下落に加え、製油所の整備不足による稼働率低下は精製石油生産量を減少させた。他産油国が精製石油生産量を増加させ、輸出額を維持した中、ナイジェリアは精製石油生産量が減少し、輸出額は減少した。

➂石油価格の下落は経済の悪化に大きく影響することからも、石油以外の輸出産業の育成に加え、製油所の整備を通した精製石油生産量の改善が必要であると考える。

(4) アフリカ第二の経済大国であり、1人当たりGDPの水準が高い南アフリカについて

➀南アフリカは鉱物資源が豊富であり、主要鉱物である金、プラチナ価格の上昇は鉱業の成長に貢献した。南アフリカの金融機関は投資銀行業務を含み、鉱業の活発的な株式取引に支えられ成長。鉱業、金融業の成長は南アフリカの経済成長に貢献してきた。

➁失業率の悪化は民間消費に影響を与えた。失業者は黒人・高校未入学・若年層に多く、教育、就労経験のない黒人の失業が中心と考える。人口の8割を占める黒人の失業率上昇は民間消費の悪化に影響。またジニ係数が世界最悪の水準である南アフリカは人種による教育機会、住居環境の改善を目的とした財政支出が行われており、政府債務、対外債務の増加要因にもなっている。

➂鉱業、金融業の成長により経済成長を遂げたが、国民へ公正な分配が行われていない。失業率、貧困率の上昇は経済、対外債務の悪化につながっており、改善が必要と考える。

(5) アフリカで3番目のGDP規模を誇る一方、低所得国であるエチオピアについて

➀エチオピアはGDPの40%程を占める農業が主要産業である。輸出品は常に60%程が農作物である。一方自国の製造業が発達しておらず、他国から消費財、生産財を幅広く輸入し自国の消費を補っている。輸入に依存した貿易構造のため貿易赤字となり、対外債務は年々増加している。

➁他国からの援助、債務免除により、貿易赤字に対し、対外債務の増加は抑えられてきた。

➂農業国でありエチオピアと比べ製造業が発達しているアルゼンチン、ベトナムとの比較では、ベトナムは輸出額増加、アルゼンチンは輸入額減少と、貿易収支はエチオピアと比べ改善してきており、貿易収支の改善のためにも製造業の育成が必要と考える。

(6) アフリカは経済発展が遅れた地域とひとくくりに考えられている。一方、経済が形成されてきた要因は上記でみたように各国で異なり、それぞれの国に合わせた対策が必要となる。

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