п»ї AI手工業 『みんなで機械学習』第7回 | ニュース屋台村

AI手工業
『みんなで機械学習』第7回

3月 31日 2021年 社会

LINEで送る
Pocket

山口行治(やまぐち・ゆきはる)

o株式会社Aデコード研究所設立準備中。元ファイザージャパン・臨床開発部門バイオメトリクス部長(臨床試験データベースシステム管理、データマネジメント、統計解析)。ダイセル化学工業株式会社、呉羽化学工業株式会社の研究開発部門で勤務。ロンドン大学St.George’s Hospital Medical SchoolでPh.D取得(薬理学)。東京大学教養学部基礎科学科卒業。中学時代から西洋哲学と現代美術にはまり、テニス部の活動を楽しんだ。冒険的なエッジを好むけれども、居心地の良いニッチの発見もそれなりに得意とする。趣味は農作業。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。

前稿では「機械学習を使ったビジネス関連特許」6042件のデータを、「小学生」程度に機械学習で分析(A)してみた。いよいよ2回転目のプラン(P)、ヒトの出番だ。6042件のデータをクラスター分析して、全体を俯瞰(ふかん)したとしても、中小企業経営者にとって重要なのはビジネスの目標となる一つの特許、もしくは先願のないビジネスアイデアだ。中小企業経営者は大学の研究者ではないし、役人や大企業のように優等生ではない。より具体的には、筆者自身のビジネスのことを考えている。人工知能(AI)技術が発展すれば、コツコツとプログラムを書いてデータ解析をする仕事は不必要になる。それはデータ解析のコストがゼロになり、プログラマーの労働から解放されるという意味では喜ばしいことだけれども、筆者のような職業は後継者がいなくなる。後継者がいなくても、「みんなで機械学習」して、アマチュアリーグを作ろうというわけだ。

米国と中国がAI技術の覇権競争をしているというのに、アマチュアリーグで遊んでいてもよいのだろうか。筆者の答えは、確信犯の「YES」だ。AI技術はコンピューターのものになり、コンピューターが絶対にできないこと、「遊ぶ」ことを人びとが行う、それこそAI時代のビジネスモデルと信じている。「遊ぶ」ことには大きな個体差がある。中小企業経営者は、生活の糧を稼いでいる稼業の近くで遊ぶことになる。家の中で遊ぶのではなく、友人が見つけやすい周辺で遊ぶことにしよう。子供たちにとって、学習は仕事のようなものだけれども、遊びの時間は学習の一部だった。大人になると、遊びの内容が変化して、生活の一部になった。そして、21世紀の子供と大人は「遊び」を失いかけている。大人の火遊びは適度に抑えて、AI技術で、遊びの時間を仕事の一部にしよう。

産業革命が始まったころ、家内制手工業から問屋制手工業へ、そして工場制手工業へと工芸品の製造技術が大きく変化していった。工場で使用され製造される機械や化学品は、農業など全ての産業分野を変革していった。AI技術が新しい産業革命をもたらすことは確実だとして、AI手工業について考えてみたい。「みんなで機械学習」する中小企業のAI手工業こそ、未来社会の在り方を根本的に変えてゆく。遊びにこだわったのには理由がある。工芸品の手工業は趣味性を失うと、武器の大量生産となる危険性がある。AI手工業が自爆テロも含めて、軍事技術とならないようにしたいからだ。AI手工業は工芸品の手工業ではない。技術的に解決が困難な社会的課題を、中小企業の手工業として、小さく解決しようとする試みだ。例えば、初等教育や介護のビジネスについて考えている。

AI手工業が技術的に解決が困難な社会的課題を解決する可能性があるという根拠は、AI技術で組み合わせ最適化の問題が、ある程度解けるという見通しにもとづいている。もし、パソコンレベルのAI技術である程度解けるのなら、組み合わせ最適化問題が得意な量子コンピューターで本格的に解決できるはずだ。稼業の周辺で、AI技術を応用しうるビジネス課題を三つ以上組み合わせて試行錯誤してみること、複数人のチーム作業において、その一部をAI化することがAI手工業だ。例えば、1人の教師が固定的な30人のクラスを担当するのではなく、10人の教師チームが、動的に再構成される300人の生徒を担当することを考えてみよう。10人の教師チームの半数をAIプログラムが担当し、教師チームには男女の老人ボランティアが含まれるかもしれない。子供たちの個性を発見することを最優先する、新しい初等教育の在り方が見えてこないだろうか。

まだ2回転目だというのに、あり得ないぐらい大きなプラン(P)を描いてみた。プランは大きくても、実行(Do)は小さくしよう。前稿ではjamoviの階層的クラスタリングで「機械学習を使ったビジネス関連特許」6042件のデータを小学生程度で25ピースにクラスター分類してみた。jamoviのお兄さんソフトであるjaspでは、機械学習のモジュールがある。階層的クラスタリングもその中に含まれるけれども、もう少し進歩したRandum Forestで再計算してみた。結果的に、25ピースぐらいが最適なクラスター数だった。小学生をあなどれない。モデルの適合度を評価する指標として、BIC(Bayesian Information Criterion)を用いている。階層的クラスタリングのBICは44298で、Randum ForestのBICは42352だった。BICとしては5%程度しか改善していない。この小さな差を生かしてビジネスモデルを構築するのは容易ではない。次稿のDoでは、私自身のビジネスにおいて、Robotic Process Automation(RPA)に機械学習を応用してみよう。

--------------------------------------

『みんなで機械学習』は中小企業のビジネスに役立つデータ解析を、オープンソースの無料ソフトjamoviでみんなと学習します。質問があっても、絶対にニュース屋台村にはコメントしないでください。株式会社Aデコード研究所(設立準備中)でjamoviと本稿の続き(4回転半の後)をサポートする予定です。

コメント

コメントを残す