「草食系技術大国、日本」
『知的財産:この財産価値不明な代物』第6回

6月 03日 2016年 経済

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森下賢樹(もりした・さかき)

プライムワークス国際特許事務所代表弁理士。パナソニック勤務の後、シンクタンクで情報科学の世界的な学者の発明を産業化。弁理士業の傍ら、100%植物由来の樹脂ベンチャー、ラストメッセージ配信のITベンチャーなどを並行して推進。「地球と人にやさしさを」が仕事のテーマ。

初回の記事で、日本の特許は「本歌取り」文化だ、効果を生むための改変はわずかなほうが粋だ、という話をしました。その結果、日本は大量出願国になったと。ただ、特許は大量にもっているのに国際競争力は凋落(ちょうらく)しています。

今日は別の観点(またまた、なんちゃって文化論)から国力低下の遠因を探ります。

日本の大手電機メーカーは、米国においてさえ、インテルの数倍の特許を保有しています。インテルの利益率は、不調と言われるときでも20%超、一方、日本の大手電機メーカーはせいぜい3%で、巨額な赤字の年もあることは記憶に新しいところです。業態が違うので単純比較はできないものの、そんなことを言っておれないほどの差です。

◆国旗

フランスの国旗は「自由、平等、博愛」を表しています。中国は、大きな星が共産党、小さな四つの星が労働者などを表しています。各国の国旗を見ていくと、いずれも政治や国民の理念がテーマになっています。一方、日本の日の丸は……。

──太陽が昇るところ。

考え方が全く違います。ほかの国は理念がテーマなのに、日本は自然がテーマです。つまり、日本の国旗には「人」の要素がありません。こんな国旗は(少なくとも人口がそれなりにある国では)日本をおいてほかにないでしょう。(ちなみに、これは私の説ではなく、作家丸谷才一さんがエッセーで言われたことですが……。)

◆Made in Japan

「日の丸」と日本の技術開発には共通的があります(これは私の説)。つまり、「人間の要素」を「自然ないし事実」の中に消してしまう、ということです。日本の大手電機メーカーはもちろん、

Made in Japan

が自己の表明であり、その品質の高さを世界は、Japan Qualityと言ってくれます。もちろん、日本製品のレベルの高さは日本人の誇りです。しかし、Made in Japan は「事実」であっても、それ以上の主張を伴いません。

一方、インテルはどうでしょうか。ハウスマークである「Intel」以外に、

Intel Inside

です。これ、

「おれ様こそ、真ん中だ」

ですよね。それを自社ではなく、セットメーカー(インテルのCPUを搭載する製品のメーカー)に表示させるのです。胴元の宣言です。

◆草食系

自己を消した「Made in Japan」と、世界を席巻する気概満々の「Intel Inside」の違い。逆に言えば、「胴元になれる商売しかしない」という戦略を究極まで考え抜いた会社がインテルだったと思います。このスタンスの違いが利益率の違いになっている、というのは、抽象的、観念的に過ぎるでしょうか。

私は50代で、若い人を評して「草食系男子」などと揶揄(やゆ)する世代です。しかし、私の世代が社会の中心にいる時代に日本の国際競争力がズルズルと下がってしまいました。日本の技術開発全体が、実は「草食系男子」みたいなものなのです。そう言う意識で、もっとガッツリと稼ぐ大胆な「胴元的」戦略が必要です。いま、社会を動かしている人たちこそ、ぜひ、こういう意識をもって若い世代を指導していきたいものです。

なお、知財の世界でどうやればもっと胴元的な地位に上がっていけるのか、大事な問題です。それについては、別の機会にお話します。

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