求む、『パチモン』ハンター
『知的財産:この財産価値不明な代物』第8回

12月 05日 2016年 経済

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森下賢樹(もりした・さかき)

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プライムワークス国際特許事務所代表弁理士。パナソニック勤務の後、シンクタンクで情報科学の世界的な学者の発明を産業化。弁理士業の傍ら、100%植物由来の樹脂ベンチャー、ラストメッセージ配信のITベンチャーなどを並行して推進。「地球と人にやさしさを」が仕事のテーマ。

◆ポケモン

この夏は世界中でポケモンブームが起きました。私の特許事務所でも、レアもののモンスターが付近に現れると、なぜか小一時間姿を消す弁理士もいました。夜、街を自転車で走り回り、大好きな酒も忘れ、10キロ近いダイエットに成功した弁理士もいます。私の事務所は、真面目すぎる仕事の反動なのか、遊びの反動で仕事をしているのか、にわかに区別しがたい人材の宝庫です。

このゲームがこれだけ人を惹(ひ)きつけた理由はいろいろでしょう。ひとつ言えるのは、ゲームがゲームの世界だけに閉じず、現実世界にはみ出してきた、その設計の着眼が秀逸だったことです。

◆犯罪者との契約!?

話はいちど飛びます。またあとで戻ってきますよ。

特許庁はこの12月1日、平成28年度の「模倣品・海賊版撲滅キャンペーン」を開始しました。インターネットで買い物をする消費者を重点ターゲットとし、偽物の購入は、「買い物ではない。犯罪者との契約です。」をキャッチコピーとしています。
http://www.jpo.go.jp/mohouhin/28fy/campaign/

私は学生時代とサラリーマン時代、関西にいました。関西では、模倣品をパチモンとかバッタモンなどと言います。ニつの違いは微妙ですが、前者は偽物(本物ではない点に重点あり)、後者はとにかく安くしているもの(ほぼ偽物だが、その真偽より安くて粗悪な点に重点あり)というイメージです。ですので、関西風に言うと、特許庁のキャンペーンは、「パチモン追放運動」と言えるでしょう。

◆雨後の……

特許事務所のお客様は主に各企業の知財部です。世界的に有名な商品を扱う企業の場合、知財部のメンバーの多くが模倣品対策に明け暮れています。最近、あるお客様から、知財部員15名中、何と13名がそのための要員と伺いました。しかもそれらの人たちが、例えば中国の場合だと、現地の特許事務所や法律事務所に定期的なパトロールを依頼し、模倣品が見つかるたびにレポートを受け、どうすれば根絶できるか、相談をしています。その手間とコストたるや……。

しかも、ゴールのない、イタチごっこです。とても根絶なんてできません。雨後の竹の子どころか、晴れの日も雨の日も、毎日にょきにょき生えてきます。中国のある地方都市に行くと、現地の若者は模倣品の中で育ったため、たまたま正規品を目にしたとき、「偽物だ」と言って顔しかめたと言います。これもお客様から伺った実話です。

◆パチモンハンター

そこで私案です。ポケモンハンターならぬ、パチモンハンターを育ててはどうかと。日本全体で取り組むプロジェクトです。とはいえ、やることは簡単で、企業の垣根を取り払い、どの企業であれ、自社製品の模倣品が見つかったとき、正規品と模倣品をセットにしてどんどん掲載していく統一的なサイトを作ろう、というものです。発見場所も載せます。

この「ハンター」を一般の人にやってもらうのが鍵です。ゲームとしてポイントをあげます。よい発見には多くのポイントをあげ、たとえば、大がかりな模倣品工場を見つけた場合はとても大きなポイントをあげる。ポイントをためれば、パチモンハンターとして表彰され、または、ポイントを使って、このプロジェクトに協賛する企業の正規品をもらえる、というのはどうでしょうか。

この「ゲーム」のメリットは大中小あります。まず小さなところでは、世相を味方につけることができます。特許庁も上述のプロジェクトをしていますが、さて、一般の人たちの心にどれだけ届くでしょうか。ゲーム感覚で身近なものになれば、このプロジェクト自体を広く知らしめることができるかもしれません。

つぎに中ぐらいの効果として、各社知財部の負荷を下げることができそうです。いままでは自社のリソースとコストで摘発をしていたところ、一般の人が見張ってくれるのですから。中国の場合、日本人が摘発に行くより、同じ中国の民間人がハンティングするほうが、身内に見張られているというプレッシャーが強くてよいように思います(中国でこのサイトが見られるか、という問題はありますが……)。

そして一番大きな効果。模倣品は現在、何を言っても中国です。この国は、国際問題を「二国間問題」に落とし込み、あとは放置、という構図ではないでしょうか。模倣品対策は、二国間問題よりひどく、日本の個別企業対中国です。ですので、これを「多国間問題」へ昇華させ、中国政府が対応せざるを得ない状況を作るのが大事です。そして、このプロジェクトこそがそれなのです。

日本の企業がこぞってこのプロジェクトに参加し、このサイトをどんどん模倣品で埋めていく。欧米の企業も参加し、どんどんサイトが膨らんでいく。それを世界中が見ます。習政権もさすがに無視できなくなるのでは?

中国は国際的な風当たりが強くなると、見せしめとして模倣品市場を全撤去、壊滅させてみたりします。多国間問題として圧力をかけることが大切です。

まず、All Japan、そして All the World での取り組みにしていければ……。このアイデアを二、三のお客様に話したところ、「ぜひ、やりたい」という反応でした。とはいえ、私ひとりでどこまでできますか。どなたか、一緒にいかがですか。

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