大学の「特許収入」は考え方で増える!?
『知的財産:この財産価値不明な代物』第12回

1月 11日 2018年 経済

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森下賢樹(もりした・さかき)

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プライムワークス国際特許事務所代表弁理士。パナソニック勤務の後、シンクタンクで情報科学の世界的な学者の発明を産業化。弁理士業の傍ら、100%植物由来の樹脂ベンチャー、ラストメッセージ配信のITベンチャーなどを並行して推進。「地球と人にやさしさを」が仕事のテーマ。

◆知財が大幅黒字の山口大学

昨年12月23日のネット版日刊工業新聞の記事よると、山口大学の知的財産センターが同大の特許関連収支を分析したところ、2012〜16年度年間収入は平均約2億円で、支出の2.3倍になったそうです。大学でも企業でも、「知財(特許)はお金ばかり使う」と言われ、関係者は肩身の狭い思いをすることもしばしばです。そんな中で山口大学の分析は興味を引きます。

◆大学の特許収入の現状

山口大学の同時期の支出は平均約8500万円で、人件費と特許関連費用が半々といいます。一方、明らかな特許収入は、外国特許出願に対する科学技術振興機構(JST)の支援金と、特許実施料(ライセンス料)が約2千万円ずつです。ということは、特許収入の合計は4千万円ほどで、それだけだと、特許事業は赤字のままと言われかねません。この状況は多くの大学に当てはまります。

◆特許収入の新しい考え方

山口大学はこの状況を打破しました。といっても、ライセンス活動を活発化したとか、特許侵害訴訟で勝った、という動きではなく、
「特許があったからこそ、得られた収入」
を分析し、従来は特許収入にカウントされていなかった収入をうまく特許収入として計上した、という知恵の「勝利」です。
その戦略は、記事によると、今回「競争的資金の間接的経費」を特許収入に入れた、とあります。なんだか、わかりませんよね。内閣府のHPによると、「競争的資金」とは、

第3期科学技術基本計画において定義されているとおり「資源配分主体が広く研究開発課題等を募り、提案された課題の中から、専門家を含む複数の者による科学的・技術的な観点を中心とした評価に基づいて実施すべき課題を採択し、研究者等に配分する研究開発資金

とのことです。余計わからないですよね。要するに、省庁等が研究開発課題を募集し、ちゃんと審査して研究者へ与える研究開発資金、ということです。
次に、「間接的経費」ですが、これもちゃんと定義があり、文科省のHPによると、

研究実施に伴う研究機関の管理等に必要な経費として、研究に直接的に必要な経費(直接的経費)の一定比率で配分される経費

とあります。つまり、「研究に直接費用な経費(直接的経費)」の一定比率、ということです。たとえば、直接的経費が100万円、一定比率を30%とすれば、間接的経費は30万円ということです。間接的経費はそう計算しましょう、という取り決めです。
したがって「競争的資金の間接的経費を特許収入とする」とは、ざっくり言うと、

省庁等から得られた研究開発助成金の用途には直接的経費がある。それに一定比率を掛けて間接的費用を計算する。そして、その数字を特許収入に計上する

ということです。しかし、「間接的経費」は「経費」であって支出なので、なぜそれが特許収入なのか、混乱しますよね。「支出」「収入」というお金の「方向」ではなく、その「額」を計算に利用しましょう、ということです。特許があったからこそ助成金を得ることができた。なら、助成金の一部は特許収入であるべきだ。でも、それは簡単にいくらと決められない。そこで、間接的経費の額をもって、これを特許収入とみなそう、ということです。この計算方法により、特許収支はかなりの黒字になりました。

山口大学の佐田洋一郎知財センター長は「特許事業を長年続けている大学は同様ではないか」と言われ、同様の分析を他大学にも勧められています。

◆実践の場に

私の特許事務所は産学共同案件の代理からスタートしました。いまでも大学案件はそれなりの量があります。今回の算出手法を紹介していければと思います。

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