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米国の信じられない銃器流通の現実
『時事英語―ご存知でしたか?世界ではこんなことが話題』第21回

6月 24日 2016年 文化

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SurroundedByDike(サラウンディッド・バイ・ダイク)

勤務、研修を含め米英滞在17年におよぶ帰国子女ならぬ帰国団塊ど真ん中。銀行定年退職後、外資系法務、広報を経て現在証券会社で英文広報、社員の英語研修を手伝う。休日はせめて足腰だけはと、ジム通いと丹沢、奥多摩の低山登山を心掛ける。

今回は、2016年6月14日付の米インターネット新聞ハフィントンポスト(米国版)の政治面の記事を紹介する。ウェブ上なので動画との組み合わせで読ませる内容で、見る側としてはテレビと新聞の両方を見る読む感覚である。

見出しは「オーランドで、わずか38分でAR-15を購入できた」。そして小見出しは「国家的規模の悲劇が起きたあとなのに殺人機械を買うことがあまりに簡単すぎる」である。まずは全訳を掲げる。

◆いつでもどこでも大量殺人の武器が買える

ORLANDO, Fla. ― It took us 38 minutes to walk out of a gun shop with a death machine.

【フロリダ州オーランド発】我々が死の凶器を手に入れて銃砲店を出るまでにかかったのは38分。

(容疑者の)オマル・マティーンがセミオートマチックライフルで49人もの無辜(むこ)の人々を殺し、何十人も傷つけたわずか2日後に我々はAR-15を買うことができた。AR-15とは、これまでアメリカで起きた他の何件かの大量殺人に使われ、そして今回マティーンが使用したものと類似のライフルである。実際に購入に要した時間は、スーパーで食料品を店のカート1杯分買うよりも短時間であった。

本来5分もあればことは済ませられたのであろうが、ガンショップ店員の話では銃撃事件のあと人々が争ってAR-15を買い求めたため、身元確認を受けるための行列が普段よりも長くなったのだ、という。これは怖いことであるが驚くにはあたらない。大量銃撃事件のあと銃砲の販売はしばしば急増することがある。

しかし、ベトナム戦争時代、軍関係者に完璧な殺人機械として称賛されたAR-15を我々が(取材目的で)入手できた容易さは異様としか言いようがない。これは、フロリダ州知事のリックスコット氏がオーランドをその領域に擁するオレンジ郡において緊急事態宣言を行っていたにもかかわらず(体験したことである)。

町が恐るべき悲劇のあとの困難に耐えている最中であろうがなかろうが、いつだってアメリカの大抵どこでも我々がしたように大量殺人のための武器を購入することが難しくない。フィラデルフィア・デイリーニュースのある記者は月曜日、ペンシルベニア州でわずか7分の間に銃を購入した。

あっという間に我々は手にしたのである。:そのライフルはせいぜい小ぶりのスイカほどの重さであるが、マティーンが使ったMCXシグサワーのように10秒内にいとも簡単に数十発の銃弾を発射できる。我々が購入したダイヤモンドバックDB15型モデルの殺傷能力は驚異的なものであり、644ドルの値段という比較的手軽に買える殺人兵器である。

ガンショップの店員は(銃の)致死能力について喜々として説明した。そして小さな22口径のハンドガンを購入しようとしていた他の客が「6フィート3インチ」(2メートル)の背で体重350ポンド(158キロ)の男に向き合うには物足りないな」と述べたのに対し、その店員はうなずいた。

「その22口径を使うならその大男の首か心臓を狙わねばならない」と、我々がこの記事では敢えて名前を伏せるその店員が述べた。店員はさらにその顧客に冗談っぽく、もっと大きなガンでなく22口径にこだわるのなら、「相手の腹に15発ほどぶち込むことになるだろうが、撃たれる本人はさぞかしうんざりすることだろう」と言った。

店員の後ろでは大音量にしたテレビでフォックスニュースが実際その近くにあるパルスナイトクラブで起きた殺りく事件を報じていた。店内の壁には額に入ったバラク・オバマ大統領の写真が「年間火器販売実績最優秀セールスマン」の見出し付きで飾られていた(おそらく大統領が外国への武器輸出は許容しながら銃規制を図っていることへの反対表明として)。そのすぐ傍らにはAR-15よりも大口径のもの、あるいはもっと廉価なものが入り混じった長尺な様々なライフルが掲げられていた。

AR-15のようなセミオートマチックライフルは、オーランド襲撃以前においても近年、米国のもっともひどい銃乱射事件のいくつかで使われてきた。カリフォルニア州サンバナディーノ、コネチカット州ニュートンの小学校、そしてコロラド州オーロラの映画館で起きた大量殺人の犯人たちはみなAR-15を使ったのである。

AR-15は最も安いライフルではなく――うちの店には、もう一つのより口径の大きなカービン銃がその半分の値札を付けて壁に掛けられている、と例の店員は説明する。しかし、全米ライフル協会によればAR-15は米国で最も人気のある武器という。協会はそのブログ上で「ユーザーの好みに合わせた設定、および改造が可能で、信頼でき、また正確だ」と述べている。

銃砲店員たちは小型の銃砲が欲しいなら待たねばならないと言う。フロリダ州で拳銃を買おうとすれば3日間の待機期間が求められるが、ライフルに対してはその規則の適用がない。

店員たちは気楽な話の中ですべての銃器は三つの分類のうちのいずれか一つに分けられると言う。すなわち、レジャー、護身および狩猟である。マティーンの銃器がそのうちのどれに該当するとして購入されたのかは分からない。

店員の分類定義のいずれにおいても10発以上の弾丸を素早い連続で放つべき理由は見いだせない。AR-15およびそれに準じたモデルはシカを撃つためには造られてはいない。人を殺すためである。

そのライフルを手に入れるために必要とされたのは運転免許証と(それも我々が使ったのは他州で発行されたもの)身元チェックのために数分待ったことだけであった。我々は自分たちに殺人、強盗などの重罪を犯した履歴があるか否か、麻薬常習者でないか、そして住所を尋ねる州発行の販売証明書に署名を行った。

強いて言えば身元チェックが行われる間待たされることが一番嫌なことであった。とはいっても、わずか数分の間無為に時間を過ごしただけのことだが。我々は州の警察本部に対し、我々が購入したのと同様なタイプの銃器購入に関連する身元チェック件数が現在どのくらいあるのか、データ開示を求めた。州本部スポークスマンは公的記録開示請求が事件以来、すさまじい件数で寄せられており閉口している、と述べた。

我々、あるいは店の店員たちが行った行為は何も違法ではない。オーランド地域では何軒かの銃砲店でセミオートマチックライフルを買うことができる。本記事を執筆の時点で、我々はマティーンがオーランドの最も著名なゲイバーの一軒で射撃を始めた際に用いたのと同じ火器能力を持っている。しかし、弾薬は保有していない。店は223口径の弾薬在庫を切らせてしまっているのだ。

我々は手に入れた銃器を返すつもりだ。いずれその銃器は無数のほかのライフルと合法的でとてつもないアメリカ銃器市場において合流することになる。

6月15日時点における最新情報:我々はAR-15を買った店に返却することを試みた。店側では返品受け付けルールを定めているのにもかかわらず拒んだ。そこで我々はオーランド警察に届けることとした。警察は破壊処分とすると述べた。(全訳終わり)

◆悪い連鎖の堂々巡り

米国の実に信じられない銃器流通の現状が見て取れる記事だと思い、ご紹介した。米国人の銃保有に関する考え方は日本人には実感として理解できない部分がある。そして今回また、おぞましい事件が起きた。自分および自分の家族の命は自分が守るべきと考え、この事件後多くの米国人が銃購入に向かっている。それが悪い連鎖の堂々巡りになっているようにも思える。

一方、我々ははるか昔の祖先以来、武器は国家に返上し、代わりに庇護(ひご)を求める仕組みに全く疑問を感じないできた。そして我が国は我々国民の生命の保護、すなわち安全保障をその米国に委ねている。そして米国は、そんな他国のために利他的にかかわることをもうやめにしたいとする本音を透けて見せるようになった。

※今回紹介した英文記事へのリンク
http://www.huffingtonpost.com/entry/ar-15-orlando_us_576059f3e4b0e4fe5143fd4d

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