п»ї 誤りを自己修正できない三菱銀行 延滞金利14%、変額保険で更に苦しめる 『山田厚史の地球は丸くない』第139回 | ニュース屋台村

誤りを自己修正できない三菱銀行
延滞金利14%、変額保険で更に苦しめる
『山田厚史の地球は丸くない』第139回

5月 17日 2019年 経済

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山田厚史(やまだ・あつし)

ジャーナリスト。元朝日新聞編集委員。「ニュース屋台村」編集主幹。

年利14%もの延滞利息を請求し、自宅・アパートを差し押さえた三菱UFJ銀行の取り立てを前回(第138回)で紹介した。

国会(5月9日の参議院法務委員会)でも取り上げられ、金融庁も重い腰を上げざるをえなくなった。

預金金利は限りなくゼロに近いというのに、市場レートとかけ離れた暴利を請求する銀行。「払えないなら」と生活の糧や住んでる家を奪うというのは、「病人の布団を剥(は)ぐ」とされる高利貸しさながらの所業である。

不利な情報は「個別案件」を理由に口を閉ざす

三菱UFJ銀行はどう考えているのか。取材で明らかになったのは、過ちを自己修正できない巨大銀行の寒々とした現実だ。

「個別案件についてお話しすることはできません」

取材を申し入れると三菱UFJ銀行の広報は、取り付く島もない対応だった。銀行とお客様の取引に絡むことは公表しないのが原則だという。

私は長く金融記者をしていたが、銀行は「個別案件」の情報を漏らしまくっていた。経営難に陥った企業の救済、回収困難の融資先への債権放棄、成長産業への応援……。全て「個別案件」だが、銀行は積極的に、時には渋々と公表して来た。産業や個人にカネを貸してお手伝いする、という銀行業務は、個別案件の塊である。

銀行に都合がいいことはどんどん提供するが、不利な情報は「個別案件」を理由に口を閉ざす。しかし、こんなことで争っても先に進まない。質問を変えた。

「個別の問題は脇に置きましょう。三菱銀行の業務方針についてうかがいたい。延滞金利を14%と定めている根拠は何でしょうか?」

千葉県柏市のAさんのご両親は、平成元年に相続税対策として変額保険を進められ、2億円の融資を三菱銀行から受けた。この時、契約書に「遅延損害金14%」という項目が盛り込まれていた。利息の支払いが遅れたら年14%の延滞金利を払う、という約束である。

Aさんのご両親は契約書にハンコを押した。14%を了解した、ということになるが、契約内容の細目の説明はなかった、という。契約書は双方が1通ずつ保管するのが通常の契約だが、Aさんの場合、融資を受ける側が銀行にハンコを押した書類を提出する「差し入れ方式」だった。

仮に、14%という延滞金利の説明があったとしても、「高過ぎる。もっと低く」と主張できただろうか。融資を受ける時に、延滞が起きることを前提に交渉することはまずない。

世間常識と乖離する銀行内の「筋論」

延滞金利は貸し手である銀行が一方的に決める。借り手は請求があって初めて「こんな高い金利があったのか!」と驚くことになる。

三菱UFJ銀行に「14%に定めた根拠を知りたい。担当部署から取材をしたい」と申し入れた。答えは「それは難しい」。

「取材拒否ということですか?」と尋ねると、「お答えを差し控えさして頂く、ということです」。

新聞社で記者をしていた時、銀行の業務で分からないことがあれば、広報に担当を紹介してもらい説明を聞くことがよくあった。銀行ビジネスは素人に分かりにくい。多くは専門家に聞くのが取材の常道である。

延滞金利は法務部の担当だ。しかし「法務の関係者は取材を受けない」という。

やむなく三菱UFJ銀行の内部関係者に探りを入れた。参議院の法務部会で仁比聡平(にひ・そうへい)議員(共産)が金融庁に指導を求めたことも知られており、この「ニュース屋台村」など私が書いた記事も読まれていた。

銀行内でも大方の受け止め方は「自宅やアパートまで差し押さえるのは顧客への対応として問題がある」「金利が14%というのは現実的とは思えない。ほんとに取り立てるのか」と極めて常識的なものだった。

変額保険は三菱銀行が積極的な営業をかけ、バブル崩壊で顧客に多大な損害を与え、銀行史に汚点として刻まれている。もう忘れたい事件なのに、荒っぽい回収で再び世間に注目されることはと得策ではないだろう。

債務者であるAさん一家は、両親の借金2億円を完済している。母親の借金1億円分の金利が2年足らず滞ったことを口実に2172万円を請求し、住む家まで取るとという。

「わずか2千万円の回収で三菱のイメージに傷をつける愚挙は避けたい」と考える行員は少なからずいるという。ところが、関係者はため息交じりにこう言う。

「銀行内部で議論すると、『契約書に従って回収するのがなぜいけない』『債権回収は徹底して行うべきだ』『ダイヤモンド信用保証に委ねている回収業務に銀行が口を出すのは筋が違う』などの強硬論が勢を増す」

歴史的低金利で、三菱に限らず銀行はどこも経営が窮屈になっている。現場は血眼になって収益のタネを探している。法律に沿って、問題のない回収業務をなぜ緩めなければならないのか。議論すればするほど銀行の内部で「筋論」が優勢になり、世間常識と乖離(かいり)していくというのである。

顧客の事情など眼中にない

借金の取り立ては強面の弁護士を雇い、実務を依頼している。債権者の事情などお構いなしに冷酷な取り立てをするケースが目立つ。銀行員はその陰に隠れ、汚れ仕事を荒っぽい弁護士に任せる。

金融庁も「民間企業である銀行の回収方針に口を出すことはできない」と建前論を繰り返す。そうは言っても、国会で金融庁の姿勢を問われている。Aさん一家が身ぐるみを剥がれる事態になれば、「ニュース屋台村」だけでなく大手メディアも注目するだろう。

金融庁は裏で、銀行の金融庁担当を呼んで「穏便な解決」を求めているはずだ。銀行側は「金融庁のご指導もあり」と競売を取り下げる可能性もある。

「欠陥商品」とされた変額保険で客を地獄の苦しみに叩き落し、死亡によって得た保険金でやっと借金が返せた。ホッとしたのもつかのま。「利息が遅れた」というだけで生活の糧を断つ。三菱銀行の眼中には顧客の事情など入っていないのか。

メディアで問題にされ、国会で追及を受け、当局が裏で示唆する「ご指導」が無ければ、改めることさえできない。こんな銀行に未来はあるのだろうか。

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