п»ї OZのAI 『WHAT^』第28回 | ニュース屋台村

OZのAI
『WHAT^』第28回

12月 25日 2019年 文化

LINEで送る
Pocket

山口行治(やまぐち・ゆきはる)

株式会社エルデータサイエンス代表取締役。中学時代から西洋哲学と現代美術にはまり、テニス部の活動を楽しんだ。冒険的なエッジを好むけれども、居心地の良いニッチの発見もそれなりに得意とする。趣味は農作業。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。

『オズの魔法使い』は1900年に出版されてから、世界中の多くの子供たちに読み続けられている。アメリカの世紀を先取りした文学だ。21世紀のオズの魔法使いは人工知能(AI)となっている。詐欺師であることを自覚しているオズの魔法使いは、脳みそのないワラのかかし、心のないブリキの木こり、勇気のないライオンを見事に覚醒させた。オズのAIと私たちの関係も、この物語のようであってほしい。

ヨーロッパの近代哲学は、ヒトを理性的な動物と考えた。理性的な動物がひきおこした、非理性的な歴史と環境破壊から方向転換するために、オズのAIは役立つのだろうか。魔女は大鍋で調理する。火を使って料理するのは魔女とヒトだけかもしれないけれども、微生物による発酵も料理と考えれば、ほとんどすべての動物が自分の腸の中で上手に料理していることになる。ヒトは動物や植物の仲間であって、自分たち以外の仲間を微生物によって調理して生きていることは、ほかの仲間と同じだ。

微生物とはいっても、ウイルスは調理しない。しかしウイルスは全ての生物種の多様性をコントロールしているという意味で、料理によって巡る生命の連鎖を運命づけている。近代哲学の時代には、ウイルスの存在は想像すらできなかったのだから、ウイルスも含めた新しい合理主義が可能かどうかを見極める必要がある。現在の環境破壊を止められなければ、太古の氷河から復活する膨大な数の新種ウイルス(少なくともヒトにとっては)によってヒトという種が絶滅する、絶滅しないまでも新種となって限りなくゼロから再出発することになりそうだ。そんなピンチに、オズのAIが良い魔女となって現れてほしいものだ。

オズのAIが良い魔女となる条件は簡単で、AIの作る料理がおいしければよい。全てのヒトにとっておいしい料理などありえないのだから、簡単そうで難しいのかもしれない。菜食主義になれば、肉食の過度な闘争心は和らぐだろう。AIがおいしい菜食を作るようになれば、AIはエメラルドの都に近づいている。

WHAT^(ホワット・ハットと読んでください)は、何か気になることを、気の向くままに、イメージと文章にしてみます。

コメント

コメントを残す