中国・潮州人のパイオニア精神
『国際派会計士の独り言』第19回

6月 22日 2017年 経済

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内村 治(うちむら・おさむ)

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オーストラリアおよび香港で中国ファームの経営執行役含め30年近く大手国際会計事務所のパートナーを務めた。現在はタイおよび中国の会計事務所の顧問などを務めている。オーストラリア勅許会計士。

◆長江実業グループの創業者

1940年代に華南から香港に移住してプラスチックの造花業を始め、ヨーロッパ市場へ販路を広げることで成長し、その後不動産開発事業などに進出して一代でアジア最大の資産家になった李嘉誠氏(英語名:Li Ka Shing)。この10年以上、その富はアジアでナンバーワンの座にあります。彼の率いる長江実業グループは、不動産事業や港湾を含む複合的事業などを擁し、総資産は3兆円超といわれています。

李氏は、皆が尻込みする投資でも抜群のビジネスセンスで成功を収めていくとの定評があり、「スーパーマン」の別名もあるくらいです。筆者は香港に10年以上住んでいましたが、ドラッグストアのワトソンズ(屈臣氏)、スーパーのパークンズ(百佳超市)などの流通、香港島の電力供給、ホテル、通信など日常生活の至る所に長江実業の事業がある感じがしました。李氏は中国本土で不動産事業を中心に様々な事業を行っていました。2013年ごろ、中国の事業を一部縮小したという報道もありましたが、いまだに中国での投資残高は多いようです。その李氏は、中国南部の広東省東部に位置する潮州にルーツがあります。

◆CPグループの総帥

アジアの他の地域に目を転じてみても、東南アジアに数千万人いるとされる中国系華人は地理的に近く、また海洋系ということもあってか、一般的に進取の気質をもつといわれる福建および広東両省の出身の方が多いようです。

特に、タイには歴史的な経緯もあって、潮州系華人が多いといわれています。例えば、タイ最大の財閥であり、伊藤忠との業務・資本提携でも有名なCP(チャロン・ポカパン)グループの総帥エクチョー・チャラワノン氏(中国名:謝易初)も潮州系だといわれています。

◆テンセントの創業者

中国本土では、家電流通最大の国美電器の創業者が潮州人として知られています。また潮州人としてさらにその名が知られているのは、中国国内で時価総額でアリババと1、2を争うインターネットビジネスの急成長企業、テンセント(中国名:騰訊控股)の創業者でCEO(最高経営責任者)の馬化騰氏です。

今年4月に、テンセントで活躍しているかつての同僚である中国人会計士に本社を見学させてもらいました。見学できたのは広報展示室と食堂だけでしたが、広報展示室では同社の主力製品の中国社会への驚異的な浸透ぶりをわかりやすく表示していたり、公安当局との連携による交通状況のデータを説明したりしていて、大変面白いものでした。また、社員食堂は若いスタッフであふれ返っていましたが、おいしい社食が驚くような安い値段で食べられるとのことでした。

テンセントは、日本のLINE(ライン)のようなメッセージアプリで10億人以上が登録するWeChat(微信)やゲームアプリなどで、市場で圧倒的な支持があるといわれていて、昨年、アジア最大の時価総額を保有すると評価されました。

創業者の馬氏は深圳の大学を卒業後、1998年に若くして起業し、今に至っているとのことで、中国の「成功ドリーム」を絵に描いたような人です。創業以来わずか20年で、華南から中国全土、そしてグローバルへと、ダイナミズムを感じさせられました。

◆華南のダイナミズム再評価を

本稿第9回「中国・深圳の今と将来―再訪して考えたこと」でも触れましたが、歴史的には中国国内だけでなく、アジアのさまざまなところで、華南にルーツを持つ人たちが進取の気質と絶え間ない努力で成功しています。最近は中国ビジネスについてどちらかと言えば消極的とされる日本企業ですが、華南のダイナミズムを再評価し、それぞれの明日につなげていただければ、と思います。

※『国際派会計士の独り言』過去の関連記事は以下の通り
第9回 中国・深圳の今と将来―再訪して考えたこと
http://www.newsyataimura.com/?p=6129#more-6129

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