東日本大震災6年、「知的障がい者の母親」から眺める風景
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第104回

3月 10日 2017年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

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コミュニケーション基礎研究会代表。就労移行支援事業所シャロームネットワーク統括。ケアメディア推進プロジェクト代表。毎日新聞記者、ドイツ留学後、共同通信社記者、外信部、ソウル特派員など。退社後、経営コンサルタント、外務省の公益法人理事兼事務局長など経て現職。東日本大震災直後から「小さな避難所と集落をまわるボランティア」を展開。

◆人生が変わって

3月11日の周辺が震災の季節、となって6年目を迎える。2011年3月11日に発生した東日本大震災で、多くの方々の人生は変わった。同時に私の人生も変わったと思う。あの日以来、今も震災で傷ついた何かを思い、良い方向に向かうためのできる何かを考えながら、事実としてできないことの多さに落ち込みつつ、今年も歳月を積み重ねる実感をかみしめている。

私の周囲では、ラジオ番組で震災に関する話を展開したり、震災の翌年に発表した風化を防止するための歌曲「気仙沼線」「サンマ漁」を通じての各種の啓蒙活動をしてみたり、この一環として鉄路として復旧することは絶望視されているJR気仙沼線の震災前の鉄道とその周辺の風景をおさめた写真の展示会「よみがえる気仙沼線WITHことば」も東京都内で開催している。

このような活動を支えているのは、やはり被災地の「生」の声だ。

◆母親たちの歳月

その声の主は、宮城県気仙沼市本吉町の知的障がい者の母親のコミュニティである「本吉絆つながりたい」のメンバーたちで、母親の5人から震災からこれまでの話を聴いた。そこで浮かび上がってきたのは、知的障がい者への支援が「復興」の名のもとで取り残されているという感覚だ。

母たちの「福祉はあとまわし」「ごめんなさいを言いながら生きてきた」という言葉が象徴するように、知的障がい者の当事者、障がい者家族の肩身は狭いことをメンバーたちは感じている。理念上は「肩身を狭くする必要はない」と誰もが言うだろう。しかし、現実として行政側は「措置」の感覚が抜けきらないらしい。以前、ここでも指摘したが、法律上、障害者特別支援法により「措置」は終了した。しかし「措置」の感覚はまだまだ地方には根強く残ったままのようである。

東日本大震災の教訓は各地でさまざまな形となって対策に盛り込まれてはいるものの、「災害弱者」対応の不備への指摘は障がい者目線からよく聞く。多くの人がひとつ屋根の下にいることに我慢ができないような避難所に入れない人、ハード面での「バリア」のより入退室が困難だったり、トイレの問題など発生してしまう身体的障がいのほか、そもそも環境の変化に適応できない障害者への対応は、個別に考えれば対策はあるのだが、個別対応までの想定をし、その上で仕組みを確立しているところまでは至っていない。

それは環境が問題なのだろうか。文化の問題なのだろうか。前述の母親のコメントを考えれば、私たちが作り上げてきた文化的な側面が大きいような気がしてならない。

◆グループホームを建てたい

さて6年である。この間に私たちは何を学び、考え、行動してきたのか、行動出来なかったのか。母親たちの声を聴いて、そして将来の「夢」を一緒に語りながら、この6年間を無駄にしないためには、「夢」ある未来に何かができるかを自覚する必要がある。

その夢とは、自分たちの老いとともに不安が募る子供の将来である。子供も年を取る、そして高齢者になっていく。その不安は、結局最後まで家族が「一緒にいたい」という言葉に集約される。子供と一緒にいられるグループホームができないのだろうか。それが夢、であり、その夢に向かって必要なのは、「やっぱり人」(林亮子会長)と言う。「人材がほしい。その次にお金、そして前に進める勇気かな」(同)と。

人、お金、勇気。漠然とした夢に終わらせることなく、自分たちが不足しているもの、それは自分たちに必要なものであり、現実的に求めていくものであると考えた時、夢は現実に近づく。母親の話を聴きながら、私もその夢の世界から現実への道筋を思い描くのである。まだ6年、である。

※『ジャーナリスティックなやさしい未来』関連記事は以下の通り
3月11日を語るメディアが当事者に近づくために(2016年3月11日)
http://www.newsyataimura.com/?p=5234

■精神科ポータルサイト「サイキュレ」コラム
http://psycure.jp/column/8/
■ケアメディア推進プロジェクト
http://www.caremedia.link
■引地達也のブログ
http://plaza.rakuten.co.jp/kesennumasen/

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