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四国地方の観光プランを作ってみた!
『バンカーの目のつけどころ 気のつけどころ』第106回

11月 02日 2017年 経済

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小澤 仁(おざわ・ひとし)

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バンコック銀行執行副頭取。1977年東海銀行入行。2003年より現職。米国在住10年。バンコク在住19年。趣味:クラシック歌唱、サックス・フルート演奏。

バンコック銀行日系企業部は在タイ日系企業向けに「預金・貸出・決済・外国為替」などの金融商品を提供する部署である。しかし私たちはこれら銀行の本来業務だけではなく、タイにおける新たなビジネス創造を目指し「日タイ間貿易の振興」や「産学連携」のための研究会などを立ち上げている。このうちの一つに「観光部会」がある。日本の観光庁、旅行会社、食品商社、在タイ大使館、ジェトロにもご参加いただき「どのようにしたらさらに多くのタイ人観光客が日本に来てくれるのか?」などを議論している。そんな議論の中でもいつも蚊帳(かや)の外に置かれるのが「四国」である。「おいしい食べ物と大自然に恵まれた北海道」「JRによる鉄道の旅で盛り上がりを見せる九州」に比べると大きく出遅れた「四国」。かく言う私も四国のことはよくわからない。そんな私が独断と偏見で「タイ人向け四国観光プラン」を作ってみた。是非読者の方々のご意見をお伺いしたい。

1.訪日タイ人観光客の推移

図1:訪日外国人観光客数とタイ人観光客数

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出典:日本政府観光局(JNTO)

訪日タイ人観光客は2013(平成25)年から2016(平成28)年で約2倍に増加。上流層や富裕層だけでなく、中間所得層の旅行客が多く、また全体の約6割がリピーターであるということが大きな特徴である。上流層以上のリピーター訪日タイ人は日本の有名な観光地以外、すなわち地方に目を向けている。中間所得層においては訪日観光がステータスとなりつつあり、各層において今後も増加を見込める注目度の高い観光客である。

※2017(平成29)年6月末:タイ人観光客数53万900人(前年同月比+9.25%)

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出典:日本政府観光局(JNTO

国(地域)別の訪日客数では中国、韓国、台湾、香港、米国に次いで6番目に位置し、日本の観光産業において重要な顧客である。

それでは四国にはどのくらいの外人観光客が訪れているのであろうか?

図3:四国の外国人延べ宿泊数とタイ人延べ宿泊数

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出典:日本政府観光局(JNTO)

各県における宿泊状況は上記のとおりであり、外国人延べ宿泊者数およびタイ人延べ宿泊者数ともに低位で推移していることが分かる。特にタイ人延べ宿泊者数においては全国順位の下位を独占しており、近年増加基調にある、タイ人観光客を全くといっていいほど取り込むことができていない。外国人観光客の地方旅行への関心が高まりつつある今、観光客の取り込み、知名度の向上が急務である。

2.四国地方の観光プラン(私案)

タイ人観光客の囲い込みに重要なのは「観る(体験)」「食べる」「買う」の三つの要素である。また統計では4~6日の旅行日数が約半数を占め、できるだけ多くの観光地を訪問したいとある。このすべての要素を網羅するには四国だけでなく近隣地域との連携も不可欠であり、本章では、関西国際空港到着後のルートを大きく二つのプランに分けて私見を述べる。

(1)遍路・宿坊プラン(プラン1)

①特徴

四国の観光資源である四国八十八ケ所霊場の参拝を主とした個人向け旅行体験プラン。お遍路の装具、法具を身にまとい、宿坊での座禅、精進料理などが体験できる。また、老舗料亭での阿波踊り体験、うどん打ち体験、そして神戸の夜景、ショッピングも含む。タイ人が好む、「見る(体験)・食べる・買う」を網羅したプランであり、移動手段はレンタカーを利用する。2日目に徳島市内にてレンタカーを借り、4日目に高松市内で返却する。トヨタレンタリース、オリックスリースに問い合わせたところ、タイ人観光客の場合は、国際免許証・パスポート・クレジットカードを持参すれば契約できる。ワンウェイ(乗り捨て)の場合は別途料金が必要(※別紙①。

②スケジュール

<1日目>

タイ・スワンナプーム空港から大阪・関西国際空港に到着後、難波に移動。「かに道楽」(仮)で夕食。その後、大阪にて1泊。

<2日目>徳島県観光

大阪のホテルで朝食後、高速バスで徳島県へ移動(1日43便)。徳島市内でレンタカーを3日間契約(2日目~4日目)し、鳴門の渦潮、大塚美術館等、終日徳島県観光をする。その後、徳島市内の料亭「しまだ」(仮)で夕食及び阿波踊り体験をして徳島市内のホテルで宿泊。

(A)観る・体験~観光スポット~

・鳴門のうずしお(徳島県)…小型観潮船で世界最大級のうずしおを真上から観賞。うずしおの発生する時間帯は日毎に異なるため、事前に確認することがポイント(参考HP:鳴門市うずしお観光協会)

・大塚美術館(徳島県)…西洋名画を、オリジナルと同じ大きさに複製し展示する陶板名画美術館。館内での撮影や作品に触れることができる

・阿波踊り(料亭しまだ、または阿波踊り会館)…衣装に着替え、踊りに参加する

(B)食べる~ご当地グルメ~

・お刺身、すし……鳴門で養殖されているブリは、脂がのっているサーモンを好むタイ人に受け入れられやすいと考えられる

・地鶏「阿波尾鶏」……タイ人の嗜好(しこう)に合わせてご当地料理の開発が必要

・徳島ラーメン

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(C)買う~土産品~

・藍染……藍の染料で染めたハンカチやスカーフなど(写真1:上左、出典:徳島物産展協会)

・マンマローザ……徳島産の牛乳を使って作られたミルク餡がたっぷり詰まった乳菓。餡子が苦手なタイ人でも食べられる(写真2:上右、出典: 株式会社昌栄)

<3日目>四国八十八ケ所観光(一番札所から十番札所)

第一番札所「霊山寺」で参拝用品を購入後、レンタカーを利用し、お遍路を開始。第十番札所「切幡寺」まで参拝後、徳島県池田町の宿坊にて宿泊。座禅、瞑想、説法・法話などを体験。夕食は宿坊で精進料理を食べる。

<4日目>お遍路または香川県観光(八十四番札所から八十八番札所)

宿坊で朝のお勤めを終えた後、レンタカーで香川県へ移動。遍路を続ける場合は八十四番札所から八十八番札所を参拝。香川県観光の場合は高松市内へ移動する。夜は高松市の高級旅館にて宿泊。レンタカーを高松市で返却する。

(A)観る・体験~観光スポット~

・四国村…… 江戸時代から明治時代の四国地方を中心とする伝統的な古民家や歴史的建造物33棟を移築復原している野外博物館

・栗林公園……文化財庭園では国内最大の広さである。歩くと目の前の景色が次々と 移り変わる「一歩一景」が見どころ

(B)食べる~ご当地グルメ~

・さぬきうどん……濃い味を好むタイ人向けにアレンジが必要。香川本鷹(香川で栽 培されている唐辛子の品種)を使用した味付けを開発

(C)買う~土産品~

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・さぬきうどん

・揚げぴっぴ……さぬきうどんを揚げたスナック菓子。味は甘味、塩味、カレー味の3 種類あり、サクサクとした食感が特徴。 (写真3:右、出典:メリケンヤ)

<5日目><6日目>兵庫県観光

高松市内の旅館で朝食後、電車で兵庫県へ移動(高松駅から姫路駅まで移動時間1時間40分から2時間程度、30分ごとに1本程度)。電車では瀬戸大橋の眺望を楽しむことができる。姫路城を観光後、電車にて神戸市へ移動し、神戸市内のホテルで宿泊。夜は日本3大夜景の一つである摩耶山で夜景を楽しむ。6日目は終日ショッピング。

(A)観る・体験~観光スポット~

・姫路城……壮大で美しい外観は外国人観光客に人気

・夜景(兵庫県・摩耶山)…… 日本3大夜景

(B)食べる~ご当地グルメ~

・神戸牛……焼き肉、すきやき、しゃぶしゃぶ

(C)買う~土産品~

・ブランド品……タイ人観光客の観光ルートには欠かせない

・神戸のスイーツ

③ポイント

・団体旅行の場合は観光バスで移動。個人旅行の場合は高速バスで徳島に移動後レンタカーを使用する。香川県でレンタカーを返却し、以後は電車で移動する。

・首都圏に比べ交通量は少なく、高速道路もシンプルな構造。また、自由に行動できることが強みとなる。

・車両搭載ナビだけでなく、観光または遍路サポートアプリを導入し、主要な観光・飲食・ショッピングをスマートフォンで自ら検索できるようにする。同時にアプリ内でご当地レストランや土産物ショップのクーポンを掲示し、消費の向上と地域住民とのふれあいの場を増やし、リピーター率の向上を図る。

図:4お遍路マップと観光経路

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出典:四国八十八ヶ所霊場会 公式ホームページ

図5:お遍路用品と価格

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(2)四国せとうち海路プラン(プラン2)

①特徴

このプランの最大の特徴はクルーズ船観光であること。四国観光の問題点の一つである、交通手段を「海路」を利用することで緩和し、かつ、瀬戸内の島々、日の出(朝日)、日の入り(夕日)を海上から楽しむことができ旅行を優雅にアレンジすることができる。通常のクルーズ船観光は船内での食事が定番であるが、このプランは各寄港地でご当地料理を楽しむ。つまり、クルーズ船の役目は宿泊、朝食、移動に限定される。当プランはオプショナルツアーとし、観光地での移動は貸し切りバス移動とする。個別行動の場合はタクシーまたはレンタカーで移動(レンタカー行動の場合は、寄港地から最寄のレンタカー営業所までタクシーで移動する必要あり)。

②スケジュール

<1日目>

タイ・スワンナプーム空港から大阪・関西国際空港に到着後、難波に移動。「かに道楽」(仮)で夕食。その後、クルーズ船にて宿泊、移動。

<2日目>徳島県観光

早朝、甲板からの朝日を観賞し、徳島県の小松島港へ寄港。鳴門の渦潮、祖谷かずら橋等を観光後、料亭で食事と阿波踊り体験(又は貸切講演)をする。

(A)観る・体験~観光スポット~

・鳴門のうずしお(徳島県)……小型観潮船で世界最大級のうずしおを真上から観賞。うずしおの発生する時間帯は日毎に異なるため、事前に確認することがポイント(参考HP:鳴門市うずしお観光協会)

・大歩危、小歩危、かずら橋…… 平家一族の哀話を秘める、秘境“祖谷”にあるかず ら橋。橋を渡る最中に写真を撮る場合は、首掛けストラップを準備しておくことをお勧めする

・阿波踊り(料亭しまだ、または阿波踊り会館)…衣装に着替え、踊りに参加する

(B)食べる~ご当地グルメ~

・お刺身、すし……鳴門で養殖されているブリは、脂がのっているサーモンを好むタイ人に受け入れられやすいと考えられる

・地鶏「阿波尾鶏」……タイ人の嗜好(しこう)に合わせてご当地料理の開発が必要

・徳島ラーメン

(C)買う~土産品~

・藍染……藍の染料で染めたハンカチやスカーフなど

・マンマローザ……徳島県産の牛乳を使って作られたミルク餡がたっぷり詰まった乳 菓。餡子が苦手なタイ人でも食べられる

<3日目>香川県観光

深夜に徳島県から香川県へ移動し、香川県観光。夕刻前より愛媛県へ向け出航。せとうち、しまなみを夕日とともにクルーズ船観光(航路西向き)をする。 無数の島々が織りなす美しい景観は『東洋のエーゲ海』と呼ばれる。夕食は愛媛県にて特産品の鯛料理を堪能。

(A)観る・体験~観光スポット~

・四国村……江戸時代から明治時代の四国地方を中心とする伝統的な古民家や歴史的 建造物33棟を移築復原している野外博物館

(B)食べる~ご当地グルメ~

・さぬきうどん……濃い味を好むタイ人向けにアレンジが必要。香川本鷹(香川で栽 培されている唐辛子の品種)を使用した味付けを開発

(C)買う~土産品~

・さぬきうどん

・揚げぴっぴ……さぬきうどんを揚げたスナック菓子。味は甘味、塩味、カレー味の3 種類あり、サクサクとした食感が特徴。

<4日目>愛媛県観光

(A)観る・体験~観光スポット~

・道後温泉…… 「日本書記」にも登場するわが国最古といわれる温泉でにぎわいを見 せる。入浴後、和室でお茶とお団子を味わうこともできる

(B)食べる~ご当地グルメ~

・鯛料理……鯛めし、鯛そうめん、鯛しゃぶ、おすし、お刺身など

・みかん(伊予柑)…… 愛媛県産が8割以上を占める特産品

(C)買う~土産品~

・坊っちゃん団子……抹茶やこしあん、白あんの味がしっかりとして、三つの味をきち んと楽しめるお団子(写真4:右、出典: 一六本舗)

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<5日目>広島県観光

(A)観る・体験~観光スポット~

・原爆ドーム、平和記念館

・厳島神社……タイ人向け旅行紙には富士山に次いで2番目に多く掲載されている

(B)食べる~ご当地グルメ~

・カキ料理(季節限定)

・あなご料理

・お好み焼き(広島焼き)

(C)買う~土産品~

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・もみじ饅頭……100~200種類あるともいわれ、クリームやチーズ、チョコレートなど種類が豊富(写真5:右、出典:にしき堂)

<6日目>大阪にてシッピング

・ブランド品ショッピング……タイ人観光客の観光ルートには欠かせない

③問題点

・大型クルーズ船のため、航路の新設が必要。一番の問題は運営側が採算を確保できるか否か。

下記、現在就航しているクルーズ船観光の一部を抜粋。

図6:クルーズ船観光を抜粋

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出典:各社HPより

クルーズ船観光の専門業者に問い合わせたところ、価格については1人1泊あたり最低でも4万円程度必要。また、顧客の大半が日本人のシニア層でリピーター率が高いのが業界の特徴のようだ。リピーター顧客からの情報をもとに商品企画されることもあり、日本人富裕層向けにスローライフ(ゆったりと豪華に)の提供が主となっている。前述のとおりクルーズ船観光は豪華な食事、宿泊を提供するものであり、各観光地での観光時間は限定的である。

一方、本件提言プランは船内での豪華な食事を省き、出来る限り観光地での自由時間を捻出することに重点をおく。なぜならばコアな親日タイ人観光客にとっては、訪れたことのない地方、ふれたことのない伝統文化、地方ならではのご当地料理を体験することが重要であるからである。非日常的なクルーズ船観光とタイ人観光客のトレンドを融合すれば、価格面の問題も解消し、顧客マーケットの拡大を期待できるのではないだろうか。

今回は勝手に「タイ人向けの四国観光プラン」を作ってみた。私が知っている(行ったことがある)場所を中心に作成したためプランに偏りがあるとのご批判は甘受しなければならない。しかし観光を考える上で重要なことは「観る」「食べる」「買う」の3要素を準備することと、観光客をその地域に閉じ込めること(タイ人の場合5泊6日)である。そのためには地域全体で協力していくつものプランを作っていく努力が必要である。今回の独断と偏見に満ちた私の案も今後の観光振興のご参考にしていただければ幸いである。

別紙①

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※『バンカーの目のつけどころ 気のつけどころ』過去の関連記事は以下の通り

第105回 大都市・大阪の地方創生(2017年10月20日)
https://www.newsyataimura.com/?p=6910#more-6910

第100回 宮城県の地方創生と地域金融機関に期待されること(2017年8月10日)
https://www.newsyataimura.com/?p=6779#more-6779

第94回 抜本的な産業育成の必要性―埼玉県の地方創生(2017年5月19日)
https://www.newsyataimura.com/?p=6629#more-6629

第93回 北陸地方の観光振興策を考える(2017年5月2日)
https://www.newsyataimura.com/?p=6571#more-6571

第87回 奈良県の地方創生について―小澤塾塾生の提言(その6)(2017年2月10日)
https://www.newsyataimura.com/?p=6331#more-6331

第84回 「賢者」に学ぶ日本の観光(2016年12月16日)
https://www.newsyataimura.com/?p=6203#more-6203

第75回 産学連携による広島県の地方創生(2016年8月16日)
https://www.newsyataimura.com/?p=5758#more-5758

第69回 北海道の地方創生を考える
https://www.newsyataimura.com/?p=5492#more-5492

第67回 神奈川の産業集積と地方創生(2016年4月15日)
https://www.newsyataimura.com/?p=5364

第65回 大分県の地域再生―「小澤塾」塾生の提言(その3)(2016年3月18日)
https://www.newsyataimura.com/?p=5244

第61回 山形の地域創生―「小澤塾」塾生の提言(その2)〈2016年1月22日〉
https://www.newsyataimura.com/?p=5077

第58回 愛知県の産業構造と地方創生(2015年11月27日)
https://www.newsyataimura.com/?p=4921

第56回 成田国際空港の貨物空港化への提言(2015年10月30日)
https://www.newsyataimura.com/?p=4807

第54回 タイ人観光客を山梨県に誘致しよう―「小澤塾」塾生の提言(2015年9月11日)
https://www.newsyataimura.com/?p=4706

第47回 地方創生のキーパーソンは誰か?(2015年6月5日)
https://www.newsyataimura.com/?p=4457

第44回 おいしい日本食をタイ全土に広めたい(2015年4月24日)
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第28回 老人よ!大志をいだけ―地域再生への提言(その2)(2014年9月5日)
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