п»ї 対日投資を通じて親日市場を開拓『夜明け前のパキスタンから』第9回 | ニュース屋台村

対日投資を通じて親日市場を開拓
『夜明け前のパキスタンから』第9回

1月 08日 2016年 国際

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北見 創(きたみ・そう)

日本貿易振興機構(ジェトロ)カラチ事務所に勤務。ジェトロに入構後、海外調査部アジア大洋州課、大阪本部ビジネス情報サービス課を経て、2015年1月からパキスタン駐在。

神奈川県にあるイコタイル社は、ベルギーの屋根瓦メーカーの日本法人だ。同社はベルギーの工場で製造した屋根材を、東南アジア、南アジアでマーケティング、販売している。親日国の多い地域では、日本人が営業を担当した方が受けが良いからだ。そこに対日投資の新たな形が見える。

◆1人だけの日本人出展者

カラチ・エキスポ・センターで昨年12月15日から、住宅、建設の展示会「第11回ビルド・アジア」が3日間開催された。出展企業数は79社と中規模であった。国際見本市と銘打っているが、出展者のおよそ半分がパキスタン企業で、3割が中国企業といった印象であった。

そうした中、会場で1人だけ日本人の出展者がいた。株式会社イコタイル(神奈川県川崎市)の営業企画マネージャー、森竹祐嗣さんだ。洗練されたデザインの製品と、珍しい日本人の展示者を見て、多くのパキスタン人が足を止めた。

◆日本人が営業することの効果

森竹さんがパキスタン人に売り込む商材は住宅用屋根瓦だ。普通の金属瓦と異なり、亜鉛アルミ合金めっき鋼板に細かい石が塗布されたものだ。デザインが良い上、軽くて雨風に強く、耐久性にも優れる。100カ国以上で流通しており、中東、アフリカでも販売されている。日本では北海道など積雪地帯で特に人気がある。

世界中で販売されているこの製品は、全てベルギーの工場で生産されたものだ。イコタイルは、ベルギー企業メトロタイル・ヨーロッパが100%出資する日本法人なのだ。

「南アジアや東南アジアでは、日本人が営業した方がウケがいい」と森竹さんは言う。確かに、親日国であるパキスタンでは、日本人に対する好感度が高い。質の良い製品を扱っているという印象をもたれる。一方、欧米諸国に対しては反感を持つ人々も少なくない。攻撃のターゲットにもなりやすい。

メトロタイル・ヨーロッパは世界中に子会社やパートナーを持っているが、それぞれ分担して営業活動している。日本法人のイコタイル社は主に東南アジアなどを管轄。反日感情のある中国では欧州人の担当者が営業しているという。

◆日本の強みを生かす対日投資

昨今、日本の大きな命題として対日投資の拡大が挙げられている。外国企業が日本に拠点立地する理由の大半は、世界第3位の日本の内需にある。しかし、日本市場は新規参入の余地が乏しい上、人口は縮小していく見通しだ。

そうした中、イコタイル社の取り組みには希望の光が見える。日本人がアジア市場に対して持つ、マーケティング・営業上の優位性を生かした対日投資であるからだ。ものづくり大国として、売れていくのが日の丸ブランドでないのは忍びがたいかもしれない。しかし、アジア市場では、日本人のソフト面が活躍できる余地も大きい。

もちろん、ニュージーランド企業などで長く働いていた森竹さん個人の海外営業力が卓越しているだけ、というのは言うまでもない。ただ、イコタイル社の取り組みをみていると、新たな対日投資の形が期待されてやまないのである。

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