北見 創（きたみ・そう）
ジェトロ大阪本部に勤務。関西企業の海外進出をサポートしている。横浜生まれで、ヘンな関西弁を得意とする。『アジア主要国のビジネス環境比較』『アジア新興国のビジネス環境比較』（ともにジェトロ）などに執筆。
◆輸出ビジネスへの関心が高まる
ジェトロは国内43拠点・海外74拠点において、企業からの貿易や海外進出に関する相談を受けているが、2014年度上半期（2014年4～9月）の関西におけるジェトロ貿易投資相談の件数（注1）は3150件となった。相談件数は2013年度下半期（13年10月～14年3月）に比べて36.2％増加しており、この半年において、より多くの関西企業が海外ビジネスに関心を寄せていることを裏付ける結果となった。
表1．関西におけるジェトロ貿易投資相談の件数
地域別にみると、東南アジア地域に関する相談が前期比43.7％増と大幅増となった。また、北東アジアについての相談は2012年度下半期から停滞していたが、今期は前期比25.0％増加し、中国・韓国・台湾ビジネスへの関心度合いが回復してきていることがわかる。
国別では、中国（465件）、米国（226件）、ベトナム（215件）、インドネシア（205件）、タイ（188件）の5カ国についての問い合わせが多かった。13年度にジェトロが実施した「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」において、関西の中小企業が3ヵ年（2013年～2015年）で重視している国・地域の結果をみると、やはりこれら5ヵ国が上位を占めており、15年もこの傾向は変わらないとみられる。
相談内容の割合をみると、「日本からの輸出」に関する相談の割合が前期に比べて4.9ポイント増加し、52.8％を占めており、輸出ビジネスへの関心が高まっている。一方、「日本からの投資」は1.8ポイント減少して18.0％となった。業種別にみると、農林漁業・食料品、機械、化学、電気・電子機器、サービスといった順に相談が多い。
具体的にどのような案件が多いかといえば、特徴的な傾向として、中国・米国で初めて海外ビジネスに取り組もうとする企業が多くみられる。例えば、「中国に安心・安全の衛生用品や乳幼児製品を売りたい」という問い合わせが多いが、全く貿易経験がないまま、トラブルになるケース、詐欺に遭うケースが多発している。海外事業を未経験の中小企業が海外に目を向けるのは喜ばしいが、注意が必要であろう。
◆関西本社企業のアジア進出案件は減少
ジェトロ大阪本部が関西に本社を置いている関西企業のアジア進出を企業発表ベースでまとめたところ、14年度上半期の進出発表件数は38件と、前期に比べて約4割減となった。急激に進んだ円安も一因として挙げられるが、13年度に進出発表が多かったことから、企業の海外進出意欲に一服感がでたものと見られる。
国・地域別にみると、東南アジア諸国連合（ASEAN）の案件はタイ、インドネシア、ベトナムを中心に24件と多いが、中国は6件と前期に比べて半減した。
主な事例は表の通り。
表2. 関西企業のアジア進出案件の件数
表3．関西企業の主なアジア進出事例（2014年4～9月）
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化学 |
住友精化（大阪市）が韓国に樹脂製造設備を建設する（総投資100億円）。関西ペイント（大阪市）、日東電工（大阪市）は中国で追加投資を行う。 |
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金属 |
大阪製鐵（大阪市）がインドネシアで形鋼事業を発表した（総投資額200億円）。神戸製鋼（神戸市）は中国の特殊鋼線材工場を増強する。山陽特殊鋼（姫路市）はベアリング用リングの生産工場をタイに新設する。 |
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輸送機器 |
ダイハツ工業（池田市）がマレーシアで150億円のエンジン工場を設立する。極東開発工業（西宮市）はタイでバン/トラック製造工場を設立する。 |
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機械 |
FAなど産業機械分野で、タイ、インドでの事業拡大案件が多かった。農業機械では、ヤンマー（大阪市）がインドに合弁会社を設立するとの発表があった。 |
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電気機器 |
日本電産（京都市）がインドで小型モーター工場の設立を発表した（総投資100億円）。医療機器ではアークレイ（京都市）がフィリピンに販売会社を設立した。 |
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サービス |
エイチ･ツー･オー リテイリング（大阪市）が浙江省寧波市に合弁会社を設立した（資本金317億円）。クールジャパン機構も出資予定である。 |
（注1）ジェトロ大阪本部とジェトロ神戸貿易情報センターで受けた相談件数の合計。
（注2）海外進出とは、新規に営業拠点、生産拠点などを立ち上げること、または既存拠点の拡充のことを指す。
（注3） 現地法人、駐在員事務所、支店の設立のほか、M＆A、出資、増資、拡張投資、業務提携、店舗増、フランチャイズ契約などを含む。
【データ出所】
「関西企業の海外事業展開に関する傾向（2014年度上半期）」
http://www.jetro.go.jp/world/japan/reports/07001878
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