п»ї ゼロもしくは同時に答えろYesとNo!『WHAT^』第33回 | ニュース屋台村

ゼロもしくは同時に答えろYesとNo!
『WHAT^』第33回

4月 22日 2020年 文化

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山口行治(やまぐち・ゆきはる)

株式会社エルデータサイエンス代表取締役。中学時代から西洋哲学と現代美術にはまり、テニス部の活動を楽しんだ。冒険的なエッジを好むけれども、居心地の良いニッチの発見もそれなりに得意とする。趣味は農作業。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。

英国の作家であり論理学者でもあるルイス・キャロル(1832-1898)、英国の数学者でコンピュータ科学の創始者でもあるアラン・チューリング(1912-1954)、米国の作家であり『市民の反抗』(Civil Disobedience)で政治思想に多大な影響を与えたヘンリー・ディヴィッド・ソロー(1817-1862)、その共通点は「子供たち」との接点を大切にした生き方だと思う。純粋な考え方、性的な不適合、いろいろな側面があったとしても、不可能を可能にする際限のない可能性は子供たちのものだ。

小沢剛の『同時に答えろYesとNo!』(森美術館、東京、2004年)は2001年9月11日以降のアートで、「あいまいさ」を可能性の源泉としている。その後も、2008年9月15日のリーマン・ショックや2011年3月11日、今日のCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)など、YesかNoか、理性的な判断を超えた危機的な状況が続いている。子供たちにとって、「あいまいさ」は確信の裏側でもあって、論理的には説明できないけれども、可能性を確信しているのだ。COVID-19で強制的な移動禁止のYesかNo、無症状な人びとを対象とするPCR検査のYesかNo、専門家の議論は自己保身の議論でしかない。予測不能な状況では、YesとNoを同時に行う、ブレーキとアクセルを同時に操作する、論理を超えた創造的な解決が求められている。

ある論理的命題に対して、YesとNoがどちらも導出できるとすると、推論規則が矛盾を含んでいることになる。YesとNoがどちらも導出できないとすると、その推論規則は不完全といわれる。しかし、量子力学の世界では、因果推論が成立しないことは広く認められるようになった。世界は論理的にできているのではなく、ランダムにできていると理解するしかないだろう。コンピュータの世界では、YesとNoを1とゼロとコード化して、2進数演算を行っている。しかしゼロの威力は論理をはるかに超えるもので、一神教と多神教に対して、無神論とゼロ神論を想像してみよう。無神論はその両者にNoと答え、ゼロ神論は両者にYesと答えるだろう。無政府主義とゼロ政府主義を想像してみよう。無政府主義は中央集権的な政府にNoと答え、ゼロ政府主義はAI(人工知能)大統領を認めるかもしれない。予測困難な危機の時代には、「子供たち」との接点を大切にして、可能性の可能性を信じたい。

WHAT^(ホワット・ハットと読んでください)は、何か気になることを、気の向くままに、イメージと文章にしてみます。

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