引地達也(ひきち・たつや)
仙台市出身。毎日新聞記者、ドイツ留学後、共同通信社記者、外信部、ソウル特派員など。退社後、経営コンサルタント、外務省の公益法人理事兼事務局長などを経て、株式会社LVP(東京)、トリトングローブ株式会社(仙台)設立。東日本大震災直後から被災者と支援者を結ぶ活動「小さな避難所と集落をまわるボランティア」を展開。企業や人を活性化するプログラム「心技体アカデミー」主宰として、人や企業の生きがい、働きがいを提供している。
◆財務省抑える戦略
安倍晋三首相が18日、衆議院解散に踏み切った。メディアは「大義なき解散」と表現するが、私は、本稿23回で指摘した安倍首相の気質とその行動特性から考えて、あくなき強者への道を突き進もうとする欲求と、その底辺には「自分は弱者である」という強いコンプレックスによる意識的な決断であり、今回は「消費税増税先送り」に反発する財務官僚との戦いも見え隠れする。
前回の選挙で大勝し、国民を味方につけた安倍首相は、次は予算を牛耳る財務省との戦いを、「増税先送り」をイシューとして国民の声を得票という形で集め、財務省を抑える戦略である。自分が弱い存在、であることがわかっているからこそ、強気に出る勝負であるが、国民はわけのわからないまま「増税は困る」と賛成し、その結果、自民党が強靭(きょうじん)な力を持ち、その力は原発再稼働や沖縄基地問題など他の政策でも発揮されてしまうことになる。