п»ї 創業経営者の事業承継の難しさ『経営コンサルタントの視点』第15回 | ニュース屋台村

創業経営者の事業承継の難しさ
『経営コンサルタントの視点』第15回

2月 27日 2015年 経済

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中野靖識(なかの・やすし)

 株式会社船井総合研究所上席コンサルタント。メーカーから小売業まで幅広いコンサルティングフィールドを持つ。一般消費者向けの商材を扱う企業の現場レベルでの具体的な販売手法の提案を得意とする。

日本国内では、日経平均株価が2月19日午前10時3分に1万8322円50銭を付け、取引時間中としては2000年5月以来約14年9カ月ぶりの高値水準まで上昇しました。有効求人倍率も継続的な改善が進んでいる中、賃金の上昇に対する期待が高まり、これまでの「消費増税と物価上昇が先行したため景気回復感の実感が乏しい」状態から脱却できる可能性が出てきました。

また、相続税の基礎控除が3千万円、法定相続人1人あたり600万円と大幅に減額(以前は基礎控除5千万円、法定相続人1人あたり1千万円)になり、資産を持っている多くの人が相続対策に関心を持つようになりました。例えば、妻、子供2人が法定相続人で正味遺産額が8千万円の場合、これまでは無税でしたが平成27年以降は175万円の納税が必要になります。

今までは影響がないと考えていた方々も相続税に関心を示すようになったらくし、節税対策としての不動産活用の相談が増加傾向にあるそうです。

◆「老いては子に従え」るか

企業の相続の代表的なものに「経営者一族の事業承継」がありますが、創業経営者の根本的な思いは同じはずなのに、いざその場になると各社各様です。最近のニュースでは、ジャパネットホールディングスと大塚家具の2社が取り上げられています。

ジャパネットホールディングスはテレビ通販大手のジャパネットたかたを傘下に置き、名物社長の高田明氏(66)が自ら宣伝マンを行う形式で急成長した会社です。高田明氏は今年の創立記念日の1月16日に合わせて長男に社長の座を譲られました。彼は「25年12月期(25年1~12月)決算の経常利益で過去最高益を更新できなければ社長を辞める」と宣言し、その目標を実現した経営者でもありますが、潔い引退に感銘を受けた方も多いのではないでしょうか。

一方、家具販売業界大手の大塚家具は、創業経営者と後継者の意見の食い違いが大きな波紋となってメディアを騒がせています。大塚家具は、昨年7月に創業者の長女である大塚久美子氏(47)が社長職を解任されて取締役となり、創業者で父親の大塚勝久会長(71)が社長を兼務していました。

結果的にはそれでも業績が回復せず、1月28日、大塚勝久代表取締役会長兼社長は代表取締役会長、大塚久美子取締役が代表取締役社長に復帰しました。その後2月13日に経営体制一新を発表し、大塚勝久氏は取締役から除外されていましたが、それを不服として全く異なる「株主提案」を提示、さらに2月17日には、彼の「株主提案」を会社として反対することを取締役会で決議したとの発表があり、「親子げんかで経営が混乱している」と報道されています。

大塚勝久氏は、創業した家具販売店を会員制度などの手法を使ってジャスダック上場企業に育て上げた極めて優秀な経営者です。企業内の指揮者が2人いるようなスタイルになると混乱することは、ワンマン経営で企業を育て上げた方であれば当然理解しているはずです。それにもかかわらず業績不振に我慢ができない、自分の手で回復させたいという創業経営者の業(ごう)が前に出てしまうと、黙っていられないものなのでしょう。

ジャパネットホールディングスも、今後の状況によっては、創業経営者の業で、長男のやり方に我慢できなくなって現場復帰するという可能性は否めません。

「老いては子に従え」ということわざがありますが、創業経営者でこれを実践できる方は少ないのかも知れませんね。中小企業の事業承継が進まない原因も、このあたりにあるような気がします。

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