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野蛮な議題に常軌を逸したトランプ米大統領の飛躍
『時事英語―ご存知でしたか?世界ではこんなことが話題』第33回

4月 11日 2018年 文化

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SurroundedByDike(サラウンディッド・バイ・ダイク)

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勤務、研修を含め米英滞在17年におよぶ帰国子女ならぬ帰国団塊ど真ん中。銀行定年退職後、外資系法務、広報を経て現在証券会社で英文広報、社員の英語研修を手伝う。休日はせめて足腰だけはと、ジム通いと丹沢、奥多摩の低山登山を心掛ける。

今回は、米フロリダ州パークランドの高校で2月14日に起きた銃乱射事件に関する米誌ザ・ニューヨーカー(2月27日)のウェブサイト版記事を紹介したい。

多くのメディアがトランプ米大領に厳しい内容の論説を掲載し対立が鮮明になっている。これもその一つであるが、ホワイトハウスでの多くの州知事列席のもと行われたある会合で交わされた、学校での銃乱射事件をめぐるやりとりを題材にしている。トランプ氏はこれまでも数々の言動により世界を騒がせているが、学校を舞台にした銃撃事件に関連する発言がその異様さを際立させている。

同誌の記者も述べている通り、話の事柄としての深刻さに対し極めて似つかわしくないたとえ話を得々と述べるトランプ氏が、無理に調子を合わせたその場の共和党の知事たちと演じる小芝居によって、その他の列席した知事たちを無力感で苛(さいな)む、そんな雰囲気が感じられる。以下、全訳である。

◆教職員武装化のほうが安上がりで効果がある

「学校の先生たちを武装させるというトランプ氏のアイデアは狂ってはいるが明快ではある」(ジョン・カシディ).

先週の木曜日(米国時間2月21日。以下同様)、ドナルド・トランプ氏がパークランド大量殺戮(さつりく)事件(米フロリダ州)に関連し、今後の対策案として学校の先生たちを武装させることを提案した際には、国民の間に恐怖と同様に嘲笑も広がった。教師たちはその案にはまともに取り合ってはいない。そして評論家たちによれば、その考えはもともとNRA(全米ライフル協会)が2012年に起きたサンディーフック小学校(米コネティカット州)銃撃事件を受けて提起したものと指摘している。トランプ氏は非常に頑固である。月曜日(26日)に行われたホワイトハウスでの多数の州知事たちとのある会合の席上、彼が招いたゲストの一人であるワシントン州の民主党知事ジェイ・インスリー氏の強い反対意見表明があっても持論を擁護した。冒頭のメディア向け発表の場でのトランプ氏とインスリー氏以外の州知事の幾人かとの間のやり取りの内容は、トランプ氏が笑止先万に「自分がその場に居合わせたなら丸腰でも銃撃犯を組み伏せたことだろう」と述べたことですっかりどうでもよいものになってしまった。しかし、先生たちを武装させることの功罪をここで再度議論することの価値は十分ある。トランプ氏のように無節操な人物がホワイトハウスにいて、共和党が議会と州の多数勢力を手中に収めていて、そして実際上、ほとんどの文明国家ならすでに実行している銃の所有に対する何らかの有意義な規制を頑迷に拒絶していることが示す集団的狂気が我々を取り込もうとしているのを鮮明に物語っている。

インスリー氏は、トランプ氏が会の冒頭で何らかの行動が求められていることを強調する長いスピーチの後、彼の州において、精神障害とかうつ病を抱えた家庭の家族に銃を押収できる裁判所の命令を入手できるようにした取り組みを紹介した。この常識的な制度をトランプ氏に説明したのち、彼は大統領の教師武装の提案に対する論述に移ったが、トランプ氏はその時点でインスリー氏の発言を遮り、自分は何もすべての先生を武装させるのではなく「銃の扱いに非常にたけた少数の先生たちを対象にするのだ」と述べた。

2期目の任期にあり長期にわたって銃規制を唱えてきたインスリー知事は、このトランプ氏の限定適用の説明には納得しなかった。知事は「生物の先生たちにも聞いたが彼らはその武装にはまったくかかわりたくない」と述べ、さらに「1年生の担任の先生たちにも尋ねたが、『ピストルを携行する1年生の担任にはなりたくない』と言った。そして、警察官からは、やろうとすれば6カ月はかかる、先生たちを警官代行とする訓練はやりたくない、という意見も聞いた。現時点では教育者は教育者にとどまるべきで、小学1年生の教室に火器を携行する責任を先生たちに負わせるべきではないとする意見を注意深く聞くべき状況にある」と指摘した。知事はトランプ氏が腕組みをして無言でいる中、さらに続けた。「私は、我々がツイート(ツィッターによる発言)を今少し減らし、今少し人々の言うことに耳を傾ける必要があると思うのです。ですから机上からそれ(ツイート)をどけて前に進もうではないですか」と述べた。

大統領はインスリー氏の勧めを受け入れることはせず、テキサス州の共和党知事グレッグ・アボット氏に発言を求めた。アボット知事は彼の州では「スクールマーシャルプログラム(学校警備員制度)」を取り入れた経緯に触れ、その制度の下で先生と学校職員たちが武器を与えられ、実際に火器扱いの訓練を受けていることを説明した。アボット知事はさらに「そして、実のところ、いくつかの校区ではその試みを広げているところだ」と述べた。また「そのような学校では入り口に『注意されたし、校内には武装係官が待機している』旨の警告を表示している」と語った。

元連邦検事で現アーカンソー州知事のアサ・ハッチンソン氏はかっての検事在任時に、NRAのために学校安全制度をつくりあげた人物であるが、その彼がアボット知事の発言に続いた。彼は自分の治める州においても「特定の学校区を選定し、実際の銃撃犯の存在を想定した事態での対応訓練を希望する人たちに対する資格認定」を実行していることを述べた。

トランプ氏は一連の発言、そしてアボット知事の言葉をとても喜んでいるように見受けられた。トランプ氏は言う。「それは素晴らしい」「つまるところ、知事が意味するのはおかしな奴がそんな学校に入ってきたら、そんな奴にとって大変なことになるとわかる。そうだ、厄介なことだよね。弾は奴に向かって飛んでいく……どんなことになるのか分かるさ。そして誰も学校には入ろうとしないのさ(面白がっているさま)」

きれいごとですまない限界的状況とか、イエメンとかイラクのような破綻(はたん)した国家について議論をするとき、トランプ氏はうれしそうだ。また、学校襲撃犯の多くは自殺をして終わるのが事実であるため、そのような犯人たちにとって殺されるかもしれないと思わせて犯行を思いとどまらせる抑止の効果などありはしないことをわざと知らないふりをしているようにも見えた。サンディーフック小学校で26人を殺害したアダム・ランザは警官が犯行現場に到着する前に自分で頭部を撃って自殺した。同様にコロンバイン高校(コロラド州)銃乱射事件(1999年4月20日)の犯人であるエリック・ハリスとディラン・クレボルドの2人は彼らが殺戮を犯した後、逃げようとはせず警官到着後に自殺した。

トランプ氏はまた、ハンドガンを持った先生が(はるかに殺傷力の高い)AR15ライフル銃を抱える、精神を病んだ10代の少年をどうして遠ざけられると期待できるのか、また生徒たちは先生が銃を持つ光景にどのように反応するのかに関してわざわざ懇切に説明をしてくれることもなかった。彼はそうする代わりに、教職にある人たちを武装させる方が武装警備員を雇うとか、フロリダ州パークランドのマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校での乱射事件で犯人のニコラス・クルーズを止められなかった地元の警察などに頼るよりも、安上がりで効果的であると断じたのだ。トランプ氏は否定的に言う。「警備員とか警官たちは子供を愛することはできない。彼らは生徒たちを知らないのだ。先生たちこそが生徒を大事に思うのだ。先生たちこそ生徒を守りたいと思うのだ」

先生が生徒に対する愛情を示すために殺傷能力の高い武器を教室に持ち込む、という考えはグロテスクだ。大統領が椅子に座ってそのようなアイデアを承認することはほとんど想像可能な域を超えるものだ。しかし、この議論が描いているようにトランプ氏が彼の考えを単に概略を説明しているだけの状況ではない。この分野の事柄において、ほかの多くのことについてと同様、銃に寛容ないくつかの危険な州は歪曲(わいきょく)したNRAの論理をどんなにひいきめにみても、未熟なやり方ですでに取り入れているのだ。

トランプ氏がもたらしている最大の悪影響は、この野蛮な議題に常軌を逸した彼独自の飛躍を与えていることであろう。彼はすべての教師に銃を持たせるとは言っていない旨を再度主張しながら述べた。「例えれば、野球でうまく打つとか、ゴルフであれば球を飛ばしたり、あるいはパットをうまくできたりするような技量の高度に訓練された人が欲しいのだ」と。この話をする際に、彼はあたかもゴルフ場でパターを握るように両手を組み合わせ、右に左に揺らすのである。「どうして、ある人は4フィートの距離でもホールに入れることができるのに、別の人はプレッシャーでパターを後ろに引くことさえできなくなるのだろう」と自問し、「分かるだろう。クラブをテークバックすることもできない人がいるものなのだ。そしてそれがどうしてなのかわからないのだ」と続けた。

一瞬、彼は自分で何を言っているのか分からなくなっているように見えた。銃撃犯人のクルーズに対し自分なら立ち向かったであろうと見栄を切ったことを思い出していたのであろうか? 本当のことはわからない。そして彼は素早く元の話に戻ってこう述べた。「悪い奴には子供たちに手出しをすると大きな代償を払わねばならないことを思い知らないといけない。学校側が警戒すると言うだけではだめだ……悪い奴らに対し究極の対価を被ることになるのをわからせねばならない。そしていいですか。すでに言いましたよね。そうすれば事件は防げるのです。犯人たちはしょせん生まれつきの臆病者なので、対応さえすれば彼らはできないのです」。こう述べるトランプ氏はもちろん変わっている。しかし、こと銃に関しての彼の言動は彼特有のものとはほど遠い(ほかに同様の考えをする人がかなりいる)。(以上、全訳終わり)

※今回紹介した英文記事へのリンク
https://www.newyorker.com/news/our-columnists/trumps-idea-of-arming-teachers-is-crazy-but-clarifying

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